三十三間堂の風神・雷神像

風神の手の指は四本、向かい合う雷神の指は三本。足の指はともに二本である。長大な本堂の南北両端に立つこの二体は、千一体の千手観音立像の列をはさんで対峙している。像高は風神が111.5センチ、雷神が100センチ。ヒノキの寄木造で、かつては全身に彩色が施されていたが、今はその名残がわずかに残るばかりになっている。

風神は大きな風袋を肩に担ぎ、右膝を突いて左膝を立てる。雷神は背に連鼓を負い、両手に桴(ばち)を握り、風神とは左右逆の姿勢をとる。逆立った髪が雷神の目印で、筋肉の張りは生身の身体をよく観察したうえの造形と考えられている。鎌倉時代の彫刻が向かった写実の方向を、この二体ははっきり示している。

国宝に指定された理由

蓮華王院本堂は建長元年(1249年)の火災で大半の仏像を失った。その後の復興のなかで現在の本堂が文永3年(1266年)に完成し、堂内の諸像もこの時期に造立された。中央の千手観音坐像は、運慶の子で慶派を代表する仏師・湛慶の作とされる。風神・雷神像もこの造像事業のなかで、湛慶の工房あるいはその周辺の慶派仏師の手になると考えられている。ただし作者を記す銘はなく、研究者の見解は一様ではない。

風神・雷神の彫像としては、日本に現存する最古の作例である。

風神・雷神の図像は中国を経て日本に入った。インドの古い神々が仏教に取り込まれ、千手観音を護る役目を担うようになったものである。明治41年(1908年)に重要文化財、昭和30年(1955年)に国宝へと指定された。後世への影響も大きく、俵屋宗達の風神雷神図屏風はこの二体に着想を得たものとも考えられている。これは古くからの説であって、史料に裏づけられた事実ではない。

見どころ

まず目に注目したい。両像とも、彫り出した眼窩の内側から水晶を当てる玉眼の技法が用いられ、うす暗い堂内で瞳が濡れたように光る。立つ位置を変えると、視線が動いて見える。

二体の体つきの違いも見比べてほしい。風神の唇は鴨のくちばしに例えられる形をし、雷神は顔全体をしかめる。膝を突く向きが左右で対をなすため、中央に並ぶ観音像の列は二つの対角線にはさまれる構図になる。雲形の台座が両像を見上げる高さに据え、下から仰ぐ角度そのものが造形に組み込まれている。気象が肉体をまとった姿を、仰ぎ見るように設計されている。

平成30年(2018年)には、堂内前列の三十体、すなわち風神・雷神と二十八部衆の配置が、古い版画や寺の記録の研究にもとづいて鎌倉時代当初に近い形へ戻された。現在は拝観者から見て、南端に雷神、北端に風神が安置されている。

拝観と周辺

三十三間堂は京都国立博物館の真向かいに位置し、あわせて半日の散策に組みやすい。入口で靴を脱ぎ、約120メートルの長い床を歩きながら観音像の列を見ていくのが拝観の中心になる。堂内は撮影禁止のため、二体の姿は写真ではなく記憶に刻むことになる。

本堂の東側には2021年に整えられた池泉回遊式の庭があり、初夏のツツジのころが見頃となる。京阪七条駅から徒歩約5分、市バスの「博物館・三十三間堂前」からもすぐの距離にある。堂は天台宗妙法院の境外仏堂で、像の所有も妙法院による。予約は不要で、年間を通して拝観できる。

Q&A

Q風神と雷神はどう見分けますか。
A風神は肩に風袋を担ぎ、手の指は四本です。雷神は背に連鼓を負って両手に桴を持ち、手の指は三本で、髪が逆立っています。
Q誰が造ったのですか。
A作者を記す銘はありません。本堂が再建された13世紀半ばに、湛慶の工房あるいは周辺の慶派仏師が手がけたとされますが、確定はしていません。
Q宗達の風神雷神図のもとになった像ですか。
A俵屋宗達の風神雷神図屏風はこの二体に着想を得たと古くから考えられていますが、史料で裏づけられた事実ではありません。
Q写真撮影はできますか。
A堂内は撮影禁止です。本堂の外観や庭園は撮影できます。
Q拝観時間と料金を教えてください。
Aおおむね春から11月中旬が8時30分から17時、11月中旬から3月が9時から16時で、受付は閉門の30分前までです。一般の拝観料は600円です。最新の情報は事前にご確認ください。

基本データ

名称木造〈風神/雷神〉像(所在蓮華王院本堂)
ふりがなもくぞうふうじんらいじんぞう
所在地三十三間堂(蓮華王院本堂)/京都市東山区
指定区分国宝(彫刻)
指定年重要文化財 明治41年(1908年)/国宝 昭和30年(1955年)
員数2躯
時代鎌倉時代
品質・構造ヒノキ・寄木造・彩色・玉眼
像高風神 111.5センチ/雷神 100.0センチ
所有者妙法院
アクセス京都国立博物館の向かい/京阪七条駅から徒歩約5分
拝観料一般600円(堂内は撮影禁止)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/253
三十三間堂[蓮華王院]|そうだ 京都、行こう。
https://souda-kyoto.jp/guide/spot/sanjusangendo.html
WANDER 国宝|風神雷神像[三十三間堂/京都]
https://wanderkokuho.com/201-00253/
三十三間堂|Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/三十三間堂

最終更新日: 2026.06.06