一度の再興が生んだ4棟
養源院は、京都市東山区、三十三間堂の東に建つ寺院で、客殿・護摩堂・鐘楼堂・中門の4棟が平成28年(2016)2月9日に重要文化財に指定された。いずれも江戸時代前期の建築で、一連の再興によって成立している。
創建は文禄3年(1594)。豊臣秀吉の側室であった淀殿が、父浅井長政の二十一回忌にあたって建立した。開山は長政の従弟で比叡山の高僧であった成伯法印。寺号は長政の戒名をそのまま用いている。その後まもなく火災で焼失するが、元和7年(1621)に長政のもう一人の娘、二代将軍徳川秀忠正室のお江(崇源院)により境内が再興された。以来、徳川家の菩提所となり、歴代将軍の位牌をまつる。
群の中心は元和7年の客殿である。桁行22.8メートル、梁間18.9メートル、一重の入母屋造、本瓦葺。平面は方丈建築に標準的な六間取形式をとる。西面には入母屋造・軒唐破風付の奥玄関が突き出し、北面には奏者所が附属する。北東隅には内仏壇と廊下が付く。
ほかの3棟は小規模である。護摩堂は桁行三間、梁間三間、一重の入母屋造・本瓦葺。鐘楼堂は慶安3年(1650)頃の建立で、桁行一間、梁間一間、一重の切妻造・本瓦葺。中門は一間薬医門、切妻造・本瓦葺で、北方に潜戸と土塀、南方に袖塀と土塀を伴う。
平成28年指定の根拠
文化庁が挙げる指定基準は二つ、意匠的に優秀なものと、歴史的価値の高いものである。解説は客殿について、木柄が大きく豪壮な方丈建築であり、重厚な玄関と上段の間を構え、各室内を障壁画で飾るなど上質な接客空間を備えていると評価する。
評価を押し上げているのは建立年が判明している点だ。方丈建築の遺構は年代を絞りきれない例が多い。この客殿は建立年代が明らかで保存も良好であるため、江戸時代初期における方丈建築の展開を測る定点として使える。護摩堂・鐘楼堂・中門についても、いずれも質が高く、伽藍再興期の様相を良好に示すものとして重要と記されている。
附指定も確認しておきたい。客殿には鬼瓦1個と表門1棟、護摩堂には廊下1棟、中門には番所1棟と築地塀2棟が附く。
なお、元和7年の再建には伏見城の遺構が用いられたと寺は伝える。国指定文化財等データベースにこの記載はなく、寺伝として受け取るのが妥当である。
天井と、それに応えた絵
客殿の廊下天井は、多くの参拝者がここを訪れる理由になっている。使われているのは伏見城の床板である。慶長5年(1600)、関ヶ原の合戦の前哨戦となった伏見城の戦いで、鳥居元忠とその配下は城内の廊下で自刃した。血に染まった板を踏ませることなく供養するため、天井へ上げて残したものが血天井と呼ばれる。板一面に黒い染みが広がる。案内では頭の位置、腕の位置が指し示される。心地よいものではないし、そのように作られてもいない。
絵はこの天井に応えている。のちに風神雷神図屏風で知られる俵屋宗達は、廊下の東西両端の杉戸に白象、唐獅子、麒麟を描いた。御回向にちなむ霊獣を選び、自刃した者たちを慰めるためであったという。依頼が来た当時、宗達はほぼ無名だった。狩野派の制作が進まないことに業を煮やしたお江が、本阿弥光悦らに適任者を探させた結果と伝わる。徳川歴代将軍の位牌所である松の間には、宗達の襖絵「岩に老松図」がある。金箔地に躍動する老松と抽象的な岩を配した作で、寺は宗達に現存する唯一の襖絵と説明する。狩野山楽は牡丹の間の襖絵と松の間須弥壇の羽目板貼付絵を手がけており、こちらは京都市の指定文化財である。
廊下は総て鶯張りで、歩けば鳴る。
拝観には準備が要る。時間は10時から15時、最終受付は14時30分、拝観料は600円。拝観日は変則的で、寺はInstagramで告知し、来訪前の確認を求めている。電話は075-561-3887。堂内は撮影不可。護摩堂と中門は通常非公開のため、実際に見るのは客殿とその障壁画で、案内は担当者の説明と録音再生を組み合わせた形で行われる。団体は事前連絡が必要である。
市バスは「博物館三十三間堂前」「東山七条」下車、いずれも徒歩約3分。京阪電車「七条」駅からは徒歩約10分。三十三間堂と京都国立博物館がすぐ西にある。
Q&A
- 養源院の拝観時間と拝観料を教えてください。
- 10時から15時(最終受付14時30分)、拝観料は600円です。拝観日が変則的なため、寺はInstagramでの事前確認を求めています。電話は075-561-3887です。
- 養源院の血天井とは何ですか。
- 慶長5年(1600)の伏見城の戦いで鳥居元忠らが自刃した、伏見城の廊下の床板です。血に染まった板を踏ませずに供養するため、客殿の廊下天井に上げて残されています。
- 養源院で重要文化財に指定されている建物はどれですか。
- 客殿(元和7年)、護摩堂、鐘楼堂(慶安3年頃)、中門の4棟で、平成28年(2016)2月9日の指定です。このうち護摩堂と中門は通常非公開です。
- 養源院で俵屋宗達の絵を撮影できますか。
- 堂内は撮影不可です。受付で販売されている冊子には、公開されている作品と通常は見られない作品の写真が収められています。
- 養源院へのアクセスを教えてください。
- 市バス「博物館三十三間堂前」または「東山七条」下車、徒歩約3分です。京阪電車「七条」駅からは徒歩約10分。三十三間堂のすぐ東にあたります。
基本情報
| 名称 | 養源院 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市東山区大和大路通七条下る三十三間堂廻り六五六番地 |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 平成28年(2016)2月9日 |
| 員数 | 4棟(客殿、護摩堂、鐘楼堂、中門) |
| 寸法 | 客殿 桁行22.8メートル・梁間18.9メートル/護摩堂 桁行三間・梁間三間/鐘楼堂 桁行一間・梁間一間/中門 一間薬医門 |
| 所有者 | 宗教法人養源院 |
| 公開状況 | 客殿は10時〜15時(最終受付14時30分)、拝観料600円。拝観日は変則的で要確認。護摩堂・中門は通常非公開。堂内撮影不可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 養源院 客殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00004846
- 国指定文化財等データベース 養源院 護摩堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00004847
- 養源院 公式サイト
- https://yougenin.jp/index.html
- 京都府観光連盟 養源院
- https://www.kyoto-kankou.or.jp/info_search/136
最終更新日: 2026.08.07
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