間口一間の門 ― 中森家住宅門及び土塀

中森家住宅門及び土塀は、三重県伊賀市上野玄蕃町にある江戸末期の工作物で、平成26年(2014年)12月19日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

門は敷地東面、前蔵の北側に構える。二本の柱から突き出した腕木で桁を受ける一間腕木門で、板扉を吊り、切妻造桟瓦葺とする。間口は一・八メートル。門と前蔵の間には潜戸が開く。門から北へは土塀が同じ屋根を載せて続き、壁面は土壁仕上げである。

構成はそれだけである。柱二本、屋根、板扉、そして塀。武家住宅の語彙のなかでは、ほぼ下限にあたる。

門が示す格

藤堂藩においても、江戸期の他の藩と同様、武士の門の形式は禄高に応じて定められていた。玄関先に何を構えるかは趣味の問題ではない。通りがかりの誰にでも読める身分の表示であり、規定は、訪ねる者が問わずとも家格を判じられる程度には具体的であった。

上位にあるのが長屋門である。通路の両脇に部屋を取り込んだ長屋状の門で、三重県内に現存するものは、ここから数町北の入交家住宅の一棟のみとされる。入交勘平が寛政年間(1789〜1800年頃)に拝領した屋敷で、入交家は藩に直属する中級藩士であった。

中森家は違う。藩士ではなく、藤堂新七郎家に仕える陪臣であった。門はその差をそのまま形にしている。一間、腕木、板扉。部屋はなく、装飾もない。二つの門を見比べる作業は、城下町の身分構造についての解説一頁分より多くを教える。

文化庁は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準で登録番号24-0187として登録し、前蔵と共に武家屋敷の表構えに風格を添える、と評価している。ここで一点、記載の齟齬を挙げておきたい。構造欄は土塀の延長を9.9メートルとする一方、同じ記録の解説文は「延長一〇メートル」と記す。矛盾というより端数処理の差であり、およそ十メートルと読むのが妥当である。

唯一、見られるように造られた部分

中森家住宅は、その大部分が訪問者に見えない。個人の住まいであり、公開はなく、現に人が暮らしている。主屋も離れも蔵も井戸屋形も板塀も、通りからは届かない。門と土塀だけが例外にあたる。そして、もともと見られるために造られている。

門は公共に向いた構築物である。定義からして外を向いており、視線を受けることを前提に建てられた。公道から眺めることに、何ら遠慮はいらない。向かいに立って、時間をかけてよい。

見るべき箇所を挙げる。桁を受ける腕木。これがこの門の構造そのものである。框も鏡板も持たない板扉。南側、前蔵との隙間に収まる潜戸。そして土塀の瓦が、門の軒線を切れ目なく北へ引き継いでいく処理。土壁は風雨で傷み、補修が重ねられるため、壁面の表情は延長方向で一様ではない。

交通は容易である。伊賀鉄道広小路駅から徒歩3分ほど、上野市駅からは十分程度。この「下屋敷の道」を北へ進むと、非公開のさまざま園を経て上野公園に至り、木造再建の天守、芭蕉翁記念館、俳聖殿が徒歩圏に収まる。撮影は公道からであれば自由である。ただし門を開けてはならない。

Q&A

Q中森家住宅門及び土塀は見学できますか。
A公道から外観を見ることができます。敷地東面の表構えを構成しており、立ち入らずとも全体を確認できます。ただし門の内側は個人の住宅で非公開ですので、道路上からの見学にとどめてください。
Q中森家住宅の門はどのような形式ですか。
A一間腕木門です。二本の柱から出した腕木で桁を受ける形式で、板扉を吊り、切妻造桟瓦葺とします。間口は一・八メートル、前蔵との間に潜戸が開きます。
Q中森家住宅の土塀の延長はどのくらいですか。
Aおよそ十メートルです。文化庁データベースの構造欄は9.9メートル、同じ記録の解説文は「延長一〇メートル」と記しており、端数処理の差と考えられます。門から北へ延び、切妻造桟瓦葺、壁面は土壁仕上げです。
Q中森家住宅の門から家格は読み取れますか。
A江戸期には門の形式が禄高に応じて定められていました。一間の腕木門という簡素な構えは、中森家が藩士ではなく藤堂新七郎家の陪臣であったという位置づけと整合します。上位の家格が構えた長屋門は、県内では近隣の入交家住宅に一棟が残るのみとされます。
Q中森家住宅門及び土塀はいつ登録されましたか。
A平成26年(2014年)12月19日、第79回登録、登録番号24-0187です。門と土塀は一件として登録されており、同日に登録された中森家住宅の六件のうち最後の番号にあたります。

基本情報

名称中森家住宅門及び土塀(なかもりけじゅうたくもんおよびどべい)
所在地三重県伊賀市上野玄蕃町195
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号24-0187
指定年平成26年(2014年)12月19日登録(第79回)
員数1棟
寸法門:木造、瓦葺、間口1.8メートル、潜戸付/土塀:瓦葺、延長9.9メートル
所有者個人
公開状況非公開(門・土塀の外観は公道から視認可)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「中森家住宅門及び土塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010314
文化遺産オンライン「中森家住宅門及び土塀」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/211177
伊賀市「伊賀市歴史的風致維持向上計画」第2章
https://www.city.iga.lg.jp/cmsfiles/contents/0000013/13871/071017_3-2.pdf
伊賀上野観光協会「下屋敷の道」
https://www.igaueno.net/?p=1604

最終更新日: 2026.08.04