旧山田本店(ヤマカノ醸造)の成り立ち

旧山田本店(ヤマカノ醸造)は、宮城県登米市登米町の寺池九日町にある商家の屋敷構えで、明治前期に建った南蔵から昭和前期の商蔵・表門までの5件が、令和3年(2021年)2月4日に国の登録有形文化財に登録された。

「山田本店」は、江戸時代から昭和の中ごろまでこの地方有数の豪商に数えられた山田家の本家の屋号である。分家の土蔵を受け継いだ寝具店・角田屋の記録によると、本店は明治期に製糸業の近代化を図り、小作人の救済を目的とした開墾や、北上川に架かる来神橋の架設にも私財を出したと言われる。

いまこの敷地には、味噌と醤油をつくるヤマカノ醸造株式会社が本社と工場を置いている。同社は明治42年(1909年)ごろを創業とする。沿革によれば、医薬品の卸売を営んでいた鈴彦商店が昭和30年(1955年)と昭和34年(1959年)に工場を買い取り、同年9月に醸造部門を切り分けてヤマカノ醸造を設立した。鈴彦商店は現在の株式会社バイタルネットで、文化庁のデータベースは登録5件の所有者をこの会社としている。

敷地の配置と見て回る順序

旧山田本店(ヤマカノ醸造)の建物は、敷地の東側を通る商店街の通りを表として配されている。文化庁の解説を重ねると、並びは次のようになる。

  • 通り沿い:東を向いて建つ寄棟造の商蔵、その南に接する総欅の棟門である表門、商蔵と外観のよく似た小ぶりの文庫蔵
  • 通りから奥:明治後期の北蔵と、敷地内でもっとも古い明治前期の南蔵。どちらも東西に棟を通した切妻造の土蔵
  • 敷地北西の最奥:大正後期の旧仕込み蔵。所在地の地番と所有者が異なり、別に登録されている

通りを歩くと、まず商蔵の店構えが目に入り、続いて彫刻の多い表門と、銅板の庇を付けた文庫蔵が並ぶ。奥の北蔵と南蔵は通りから引っ込んだ位置にあり、表の3件とは役割が違う。南蔵の明治前期から表門・商蔵の昭和前期まで、少なくとも半世紀にわたって建て継がれた敷地である。

5件の登録と、同じ日に登録された山田家ゆかりの蔵

旧山田本店(ヤマカノ醸造)の5件は、いずれも令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。登録基準は5件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 商蔵:昭和前期、土蔵造2階建、建築面積76㎡
  • 表門:昭和前期、木造、間口2.3m
  • 文庫蔵:昭和前期、土蔵造2階建、建築面積20㎡
  • 北蔵:明治後期、土蔵造2階建、建築面積48㎡
  • 南蔵:明治前期、土蔵造2階建、建築面積25㎡

同じ日には、敷地北西奥の旧山田本店(ヤマカノ醸造)旧仕込み蔵と、三日町にある旧山田本店(角田屋)座敷蔵も登録された。座敷蔵は分家の山軍が昭和5年(1930年)に建てた蔵で、昭和41年(1966年)に角田屋へ譲られ、いまは同店の敷地の奥に建つ。

登米(とよま)の町と旧山田本店(ヤマカノ醸造)

市の名は「とめ」、町の名は「とよま」と読む。同じ「登米」でも読みが分かれるのは、明治初めに県庁が置かれ、他国から来た役人が「とめ」と読んだことに由来するとされる。

登米町は伊達家一門の登米伊達家が13代、およそ300年にわたって治めた2万1千石の城下町で、明治以降は北上川の舟運による米の集散地として栄えた。米と大豆に恵まれた土地柄から味噌・醤油の醸造元も多かったが、登米市のPRサイトによると、いま町に残るのは天保4年(1833年)創業の海老喜とヤマカノ醸造の2軒である。旧山田本店(ヤマカノ醸造)は、その一方が現役で使う敷地にあたる。

旧山田本店(ヤマカノ醸造)への行き方と見学の条件

公共交通なら、仙台市の「県庁市役所前」か「仙台駅(旧さくら野前32番)」から東日本急行の高速バス「仙台・とよま線」に乗り、「とよま明治村」で降りる。県庁市役所前を午前10時に出る便は、とよま明治村に午前11時35分に着く。下りは1日3便、運賃は現金払いのみで予約は要らない(2026年9月確認)。同じ会社の「登米市役所前」行きは迫町へ向かう別の路線なので乗り違えに気をつけたい。

車の場合は三陸自動車道の登米ICが最寄りになる。ヤマカノ醸造の案内では、駐車場へは県道38号線の側から入る。

旧山田本店(ヤマカノ醸造)の敷地は、いまも操業している本社と工場である。5件とも内部公開の案内は見当たらず、通り沿いの商蔵・表門・文庫蔵は公道から外観を眺める形になる。奥の北蔵・南蔵を含め、それ以上の見学を望む場合は事前にヤマカノ醸造(電話0220-52-2511)へ問い合わせたい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)商蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013480
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)表門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013485
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013481
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)北蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013482
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)南蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013483
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(ヤマカノ醸造)旧仕込み蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013484
文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田本店(角田屋)座敷蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013486
ヤマカノ醸造株式会社 ヤマカノについて(会社概要・沿革)
https://www.yamakano.co.jp/about.html
ヤマカノ醸造株式会社 公式サイト(アクセス)
https://www.yamakano.co.jp/
株式会社角田屋 蔵について
https://kakutaya.jp/warehouse/
登米市シティプロモーションサイト トメのコメジルシ「歴史ある味噌蔵『ヤマカノ醸造』の秘密」
https://tome-pr.jp/2020/02/21/midokoro-yamakano/
とよま振興公社 みやぎの明治村「登米町(とよままち)」とは
https://toyoma.co.jp/about/
東日本急行株式会社 仙台・とよま線
https://higashinippon.co.jp/toyoma/
登米市観光物産協会 登米市へのアクセス
https://www.tome-city.com/pages/342/

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称旧山田本店(ヤマカノ醸造)
所在地宮城県登米市登米町登米字寺池九日町1
所有者株式会社バイタルネット
指定登録有形文化財 5件
座標38.65306, 141.28244