鞍埼灯台:離島に佇む日本最古のコンクリート造灯台

宮崎県日南市南郷町の沖合に浮かぶ大島の南端、日向灘を望む断崖の上に鞍埼灯台は建っています。明治17年(1884年)に完成した日本最古の無筋コンクリート造灯台であり、日本人技術者が主導して設計・建設した最初期の灯台のひとつです。令和6年(2024年)に国の重要文化財に指定され、140年以上にわたり航行する船舶の安全を守り続けています。

歴史的背景

鞍埼灯台は、日本に建設された49番目の洋式灯台として、明治17年(1884年)8月15日に初点灯しました。設計者は藤倉見達(ふじくら けんたつ、1851〜1934年)で、「日本の灯台の父」と呼ばれるスコットランド人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの通訳を務めた後、イギリスのエディンバラ大学に留学して建築学を学び、帰国後に日本の灯台建設を牽引した人物です。

石造やレンガ造が主流だった当時、藤倉は無筋コンクリートという先進的な素材を選択しました。建設資材は島の港から灯台のある高台まで人力で運搬されたと伝えられており、当時の技術者や作業員たちの並々ならぬ努力がうかがえます。

太平洋戦争末期の昭和20年(1945年)3月から7月にかけて、延べ6回の空襲を受けて大きな被害を受けましたが、昭和26年(1951年)に戦災復旧、平成12年(2000年)には構造補強が実施され、明治期の建築様式を今日に伝えています。

重要文化財に指定された理由

令和6年(2024年)10月、国の文化審議会は鞍埼灯台を重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申しました。平成31年(2019年)3月に登録有形文化財として登録されていましたが、さらに高い評価を受けての指定です。

指定の理由として、第一に日本最古の無筋コンクリート造灯台として日本の建設技術史上きわめて重要であること、第二に切妻造の附属舎中央から十二角形の灯塔を立ち上げる配置が明治期灯台の特徴を良く示していること、第三に外国人技師に代わって日本人技術者が主導した最初期の灯台建設として近代化の歩みを物語ること、などが挙げられています。

建築的な見どころ

灯塔の高さは約14メートルですが、海抜約84メートルの断崖上に建っているため、灯火の高さは海面から約93メートルに達します。光は約24.5海里(約45キロメートル)先まで届く設計です。

灯塔部は十二角形という珍しい平面形状を持ち、頂部には金属製のドーム屋根を持つ円形の灯室が載っています。出入口や窓の周囲には石材が配され、コンクリートの壁面に対して構造的な補強と美的なアクセントを与えています。灯塔は切妻造の平屋の附属舎の正面中央から立ち上がっており、明治期灯台に特有の建築様式を今に伝えています。

灯台の隣には鞍埼水島照射灯が設置されており、沖合約1,680メートルにある岩礁「水島」を照らして航行する船舶に危険を知らせています。

訪問ガイド

鞍埼灯台は、日南市南郷町の目井津港から沖合約3キロメートルに位置する大島(無人島)の南端にあります。大島へは目井津港から市営旅客船「あけぼの3」で渡ります。1日4便運航しており、所要時間は約13〜15分です。

灯台に近い竹之尻港で下船し、そこから亜熱帯植物が生い茂る遊歩道を徒歩約1時間(約2.6キロメートル)歩くと灯台に到着します。道中では亜熱帯の自然と海の景色を楽しめます。

大島は無人島のため、売店や自動販売機はありません。飲料水や食料は必ず持参してください。また、帰りの船便に間に合うよう計画を立てることが重要です。火曜日および年末年始(12月29日〜1月3日)は運休です。お問い合わせは南郷町地域振興センター(電話:0987-64-1114)まで。

周辺の見どころ

乗船場となる目井津港では、漁協が運営する「港の駅めいつ」で新鮮なカツオの刺身やにぎり鮨、漁師料理の「かつおめし」を味わうことができます。日南市南郷町はカツオ一本釣り漁で知られる町であり、水揚げされたばかりの魚介を手頃な価格で楽しめます。

日南海岸エリアには、海食洞の中に社殿がある鵜戸神宮、イースター島のモアイ像のレプリカがあるサンメッセ日南、野生馬「御崎馬」が生息する都井岬など、多彩な観光スポットがあります。また「九州の小京都」と称される飫肥(おび)の城下町では、武家屋敷の街並みや飫肥城跡を散策できます。

Q&A

Q鞍埼灯台の歴史的な重要性は何ですか?
A明治17年(1884年)に完成した日本最古の無筋コンクリート造灯台であり、日本最初期のコンクリート構造物のひとつです。また、日本人技術者・藤倉見達が設計した最初期の灯台として、近代化の歴史を伝える貴重な建造物です。
Q灯台へのアクセス方法を教えてください。
A日南市南郷町の目井津港から市営旅客船「あけぼの3」で大島へ渡ります(所要約13〜15分、1日4便)。竹之尻港で下船後、徒歩約1時間で灯台に到着します。
Q灯台の内部を見学できますか?
A灯塔内部の一般公開は行われていません。ただし、外観の見学は自由で、周囲の断崖からは素晴らしい太平洋の眺望を楽しむことができます。
Q大島に宿泊施設はありますか?
A旧大島小学校を改装した市営の「大島アドベンチャーキャビン&コテージ」があります。事前予約が必要で、南郷町地域振興センター(0987-64-1114)にお問い合わせください。
Q灯台は現在も使われていますか?
Aはい、鞍埼灯台は現役の航路標識として稼働しています。昭和40年(1965年)に無人化されましたが、現在も大型クルーズ船を含む多くの船舶がこの灯台の光を頼りに航行しています。

基本情報

名称 鞍埼灯台(くらさきとうだい)
文化財指定 国指定重要文化財(令和6年指定)、登録有形文化財(平成31年登録)、保存灯台Aランク、近代化産業遺産
所在地 宮崎県日南市大字中村字鞍崎7105(大島南端)
設計者 藤倉見達(ふじくら けんたつ)
竣工 明治17年(1884年)8月15日初点灯
構造 無筋コンクリート造、灯塔部十二角形、高さ約14m、建築面積108㎡
灯火標高 海面上約93m
光達距離 24.5海里(約45km)
所有者 国(海上保安庁)
アクセス 目井津港から市営旅客船「あけぼの3」で約13分、竹之尻港下船後徒歩約60分

参考文献

鞍埼灯台 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/379847
鞍埼灯台 | 宮崎県公式観光サイト「みやざき観光ナビ」
https://www.kanko-miyazaki.jp/spot/2123
鞍埼灯台 - 近代の文化遺産の保存と活用(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/064/index.html
鞍埼灯台 - 第十管区海上保安本部
https://www.kaiho.mlit.go.jp/10kanku/toudai/maijitoudai/kurasaki.htm
市営旅客船あけぼの3 - 日南市
https://www.city.nichinan.lg.jp/soshikikarasagasu/nangochochiikishinkocenter/2/1312.html
建築史の世界 第12回(コア東京)
http://coretokyoweb.jp/?page=article&id=981

最終更新日: 2026.04.06