片倉家住宅とは
片倉家住宅(かたくらけじゅうたく)は、長野県岡谷市川岸上にある片倉家の屋敷で、18世紀中頃に建った茅葺の主屋と、明治初期から昭和初期にかけて建てられた土蔵4棟の計5件が、平成11年(1999年)7月8日に登録有形文化財となった。所有者は片倉工業株式会社である。
屋敷があるのは、諏訪湖から流れ出た天竜川が岡谷の市街を抜けていく、その流れ出し口に近い川岸地区である。文化庁のデータベースは、片倉家住宅の主屋を、日本の機械製糸業界を率いた片倉兼太郎の住まいとしても知られる家と紹介している。
主屋は、建物の前半に土間と台所、背面側に居室を置く間取りを原型とする農家で、幕末と明治期に増改築を受けた。そのかたわらに、家財・器・味噌・米を分けて納めた土蔵が並ぶ。
座繰製糸から片倉組へ
片倉工業の沿革によると、明治6年(1873年)に片倉市助が諏訪郡川岸村(現在の岡谷市)で10人取の座繰製糸を始めた。同社はこの年を創業としている。岡谷市観光協会は、市助が自宅の前庭の小屋を使ってこの座繰を始めたと紹介している。
市助の長男である初代片倉兼太郎は、明治11年(1878年)に川岸村で洋式器械製糸の垣外(かいと)製糸場を開いた。明治28年(1895年)に片倉組が組織され、大正9年(1920年)には片倉組の事業を継いで片倉製糸紡績株式会社が設立される。昭和18年(1943年)に片倉工業株式会社と名を改めた同社が、いまも片倉家住宅を所有している。
長野県立歴史館の音声ガイドは、片倉組が大正期に県外や朝鮮にも工場を広げ、世界一の製糸会社になったと解説する。二代片倉兼太郎は「シルクエンペラー」と呼ばれた。片倉家住宅は、その出発点となった一族の家である。
5件の登録
片倉家住宅の5件は、平成11年(1999年)7月8日の第18回登録でそろって登録有形文化財となった。登録番号は20-0014から20-0018までの連番で、登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁のデータベースが示す年代と規模は次のとおり。
- 主屋:18世紀中頃、木造平屋建、茅葺、建築面積215平方メートル
- 西の蔵:明治初期、土蔵造2階建、金属板葺、建築面積25平方メートル
- 味噌蔵:明治初期、土蔵造2階建、金属板葺、建築面積19平方メートル
- 南の蔵:明治初期、土蔵造2階建、金属板葺、建築面積29平方メートル
- 文庫蔵:昭和初期、土蔵造3階建、鉄板葺、建築面積65平方メートル
明治初期の3棟の屋根については資料の記載がそろわない。データベースの構造欄は金属板葺とするが、同じデータベースの解説文と、岡谷市が平成21年(2009年)にまとめた文化財等一覧表は、鉄平石葺の置屋根と記している。
屋敷の配置
文化庁の解説から片倉家住宅の配置をたどると、敷地の中心に主屋があり、その西側に3棟の土蔵が北から西の蔵、味噌蔵、南の蔵の順に並ぶ。3棟は奥行きがどれも2間半で、間口だけが違う。味噌蔵は3棟のうち最後に建ったとみられ、屋根を西の蔵と一続きにしている。南の蔵は、曲がる道に沿うように向きをわずかに振って建つ。
文庫蔵だけは西の列から離れ、屋敷地の東南の道際に建つ。3階建てで、片倉家住宅の土蔵のなかでは最も大きい。
明治初期の3棟は、家財、生活の器、味噌と、納める物を分けていた。昭和初期の文庫蔵は米蔵などに使われた。蔵の数と使い分けに、農家として続いてきた片倉家の暮らしの規模が表れている。
片倉組の本部事務所だった旧片倉組事務所(中央印刷社屋、登録有形文化財)は、片倉家住宅から東へ約140メートルのところに建つ。明治43年(1910年)に、垣外製糸場の構内に建てられた事務所である。一族の家と会社の本拠が、歩いて数分の範囲に収まっていたことになる。
見学と行き方
片倉家住宅は片倉工業株式会社の所有で、一般公開はされていない。屋敷の敷地に入ることも、建物の内部を見ることもできない。所有者や岡谷市、岡谷市観光協会による公開の案内も、確認した範囲では見当たらなかった。
外から見られるのは、道路に面した建物である。屋敷地の東南の道際に建つ文庫蔵と、曲がる道に沿って建つ南の蔵は、公道から外観をうかがえる位置にある。写真は公道から撮るにとどめ、敷地には立ち入らないようにしたい。
鉄道の最寄りはJR中央本線の岡谷駅で、片倉家住宅までは道のりでおよそ1.5キロ、歩いて20分ほどかかる。駅から西南西へ進み、天竜川の流れ出し口に近い川岸上一丁目に入ったあたりが屋敷の位置である。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 片倉家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001188
- 国指定文化財等データベース 片倉家住宅西の蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001189
- 国指定文化財等データベース 片倉家住宅味噌蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001190
- 国指定文化財等データベース 片倉家住宅南の蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001191
- 国指定文化財等データベース 片倉家住宅文庫蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001192
- 文化財等一覧表(岡谷市、PDF)
- https://www.city.okaya.lg.jp/material/files/group/26/10297.pdf
- 沿革(片倉工業株式会社)
- https://www.katakura.co.jp/company/history/
- 片倉組事務所前 音声ガイダンス(長野県立歴史館)
- https://www.npmh.net/onsei/2020/03/post-1.php
- 旧片倉組事務所(信州岡谷観光サイト 旅たびおかや、岡谷市観光協会)
- https://www.kanko-okaya.jp/enjoy/heritage/%e6%97%a7%e7%89%87%e5%80%89%e7%b5%84%e6%9c%ac%e9%83%a8%e4%ba%8b%e5%8b%99%e6%89%80-2/
最終更新日: 2026.09.27
基本情報
| 名称 | 片倉家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県岡谷市川岸上1-21-6 |
| 所有者 | 片倉工業株式会社 |
| 指定 | 登録有形文化財 5件 |
| 座標 | 36.05293, 138.03298 |