信州大学繊維学部とは

信州大学繊維学部は、長野県上田市常田にある信州大学の学部で、明治43年(1910年)に設立された上田蚕糸専門学校を前身とし、その上田キャンパスに残る講堂・資料館・守衛所の3棟が登録有形文化財に登録されている。

大学は繊維学部を「繊維」の名を冠した国内唯一の学部と紹介している。前身校の時代から100年以上、キャンパスの場所は上田市常田から動いていない。登録された3棟は、いずれも上田蚕糸専門学校の時代に建てられた学校建築で、蚕糸教育の場としての成り立ちを建物の用途と意匠に残している。

常田の読みは「ときだ」。所在地の表記は、講堂が常田3-15-1、資料館と守衛所が常田3-480ほかとなっているが、いずれも同じキャンパスの中にある。

上田蚕糸専門学校の成り立ち

信州大学の資料によれば、蚕糸専門学校の設立は長野県が国に要請したことから始まり、蚕糸業の重要性が認められて設立が決まった。県内の各地域が誘致を競い、上田の地が選ばれている。明治43年(1910年)3月26日に上田蚕糸専門学校が設立され、繊維学部はこれを蚕糸に関する最初の高等教育機関であり、長野県で最初の官立学校であったと位置づけている。

初代校長の針塚長太郎は明治41年(1908年)に創立委員長に任じられ、1910年から昭和13年(1938年)までの28年間、校長を務めた。創立委員の一人で同校の教授も務めた三吉米熊が、留学先のフランスから持ち帰ったと伝わるしだれ桑が、いまもキャンパスに残る。

学校は昭和19年(1944年)に上田繊維専門学校と改称され、昭和24年(1949年)の学制改革で信州大学繊維学部となった。開校の翌年、明治44年(1911年)に開墾された附属農場では実習用の桑が育てられ、かつてはキャンパスの半分が桑畑だったという。大学の資料では、この農場で約480種の桑が栽培されている。

登録された3棟

3棟の登録は二度に分かれる。講堂が平成10年(1998年)9月2日に先に登録され、資料館と守衛所は平成25年(2013年)6月21日に同時に登録された。

  • 講堂(旧上田蚕糸専門学校講堂):昭和4年(1929年)、木造2階建、鉄板葺、建築面積357平方メートル。登録基準は「造形の規範となっているもの」
  • 資料館(旧上田蚕糸専門学校貯繭庫):明治時代末期、煉瓦造2階建、瓦葺、建築面積67平方メートル。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
  • 守衛所(旧上田蚕糸専門学校門衛詰所):大正元年(1912年)、木造平屋建、鉄板葺、建築面積24平方メートル。登録基準は資料館と同じ

建てられた順では資料館が最も古い。もとは繭を貯える貯繭庫で、大学はキャンパスで最古の建造物としている。その年代は、文化庁のデータベースが明治43年(1910年)、大学の資料が明治44年(1911年)竣工と記しており、1年の差がある。守衛所は大学がキャンパスで2番目に古いと紹介する建物で、講堂はそれから17年後の完成になる。

キャンパスでの位置

3棟はひとつのキャンパスの中に散らばっている。文化庁の解説によれば、守衛所は大学の正門の北脇、資料館は構内の中央北寄りに建つ。キャンパスに入るとき最初に目にするのが守衛所で、構内を奥へ進むと講堂と資料館に行き当たる。

大学の構内配置図では、講堂と資料館はいずれも国の登録有形文化財として示され、守衛所は現在の呼び名である「警務員室」として載っている。構内には、上田蚕糸専門学校の創立25周年を記念して昭和10年(1935年)に同窓会館として建てられた旧千曲会館(上田市指定有形文化財)も残る。

繊維学部の受験生向けの見学コースは、講堂と学部資料館を順に回るように組まれている。3棟を一度に見るなら、正門の守衛所から講堂、資料館へと歩く順がわかりやすい。

見学とアクセス

信州大学繊維学部の上田キャンパスは大学の教育・研究の場で、3棟の内部を一般に定期公開する案内は、2026年10月時点で大学の公開情報に見当たらない。講堂は現在も卒業式や学会の会場に使われ、資料館は上田蚕糸専門学校以来の資料を展示する施設として、オープンキャンパスの見学先に組み込まれている。訪れる場合は、授業や行事の妨げにならないよう、外観を中心に見ることになる。

最寄り駅は北陸新幹線・しなの鉄道・上田電鉄の上田駅で、東京駅からは北陸新幹線でおよそ1時間半かかる。大学が推奨するのは徒歩で、上田駅お城口から約20分、距離は約1.4キロである。バスなら上田駅お城口の1番のりばから千曲バスの丸子・鹿教湯方面行に乗り、約3分の「イオン上田前」で降りて、「信大繊維学部入口」交差点を左に入り約200メートル、徒歩3分ほどでキャンパスに着く。タクシーは上田駅お城口から約5分。

車の場合、上信越自動車道の上田菅平インターチェンジから約4キロ。大学は県道79号線の「上常田」交差点を曲がって約100メートルで正門前に出る経路を案内している。見学者向けの駐車場の案内は見当たらない。

名称について

3棟は文化庁のデータベースで、現在の名称に前身校時代の名称を括弧で添えた形で登録されている。講堂は「旧上田蚕糸専門学校講堂」、資料館は「旧上田蚕糸専門学校貯繭庫」、守衛所は「旧上田蚕糸専門学校門衛詰所」である。読みは上田蚕糸専門学校が「うえださんしせんもんがっこう」、貯繭庫が「ちょけんこ」。

守衛所は大学の構内配置図では「警務員室」と表記される。信州大学のほかのキャンパスにも登録有形文化財があり、長野(教育)キャンパスには旧長野県庁書籍庫が、松本キャンパスには旧松本歩兵第五十連隊糧秣庫が残るが、いずれも上田キャンパスとは別の場所にある。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「信州大学繊維学部講堂(旧上田蚕糸専門学校講堂)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000763
文化庁 国指定文化財等データベース「信州大学繊維学部資料館(旧上田蚕糸専門学校貯繭庫)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009596
文化庁 国指定文化財等データベース「信州大学繊維学部守衛所(旧上田蚕糸専門学校門衛詰所)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009597
文化遺産オンライン「信州大学繊維学部講堂(旧上田蚕糸専門学校講堂)」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/180673
信州大学繊維学部「沿革」
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/guidance/history.html
信州大学繊維学部「アクセス」
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/guidance/map.html
信州大学大学史資料センター「信州大学歴史探訪」
https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/library/archives/news/upload/s_historicalwalk_200303_s.pdf
信州大学「統合報告書2022」人と地域の資産
https://www.shinshu-u.ac.jp/guidance/publication/summary/2022/integrated_report2022/pdf/47.pdf
信州大学繊維学部 受験生向けスペシャルサイト「学部見学コース」
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/guidance/special/step5.html

最終更新日: 2026.10.08

基本情報

名称信州大学繊維学部
所在地長野県上田市常田3-15-1
所有者国立大学法人信州大学
指定登録有形文化財 3件
座標36.39263, 138.26148