上今井の氏神、續麻・今井(兼平)神社
續麻・今井(兼平)神社は、長野県松本市今井の上今井地区にある神社で、安永9年(1780年)から安政6年(1859年)にかけて建てられた社殿4棟が、令和4年(2022年)10月31日に国の登録有形文化財に登録された。
読みは「つうそ・いまい(かねひら)じんじゃ」。「續」は「続」の旧字体である。社名が長いのは、二つの神社が一つになった経緯をそのまま名に残しているからで、續麻神社と今井(兼平)神社が昭和22年(1947年)に合祀された。松本市の解説は、境内の二つの本殿を「續麻神社」「兼平神社」とも呼んでいる。
松本市によれば、續麻・今井(兼平)神社は今井地区のうち上今井の6集落(上新田・堂村・中村・中沢・下新田・境新田)の氏神で、明治5年(1872年)に村社に列した。境内は集落の中央近くにあり、まわりを社叢が囲む。
今井四郎兼平の館跡と伝わる社地
今井という地名は、木曽義仲の乳母子で最期まで義仲に従った今井四郎兼平に由来し、續麻・今井(兼平)神社の境内には兼平の館があったと伝わる。大津市歴史博物館の解説によれば、兼平は治承4年(1180年)の義仲の挙兵から各地を転戦し、寿永3年(1184年)の粟津の合戦で義仲が討たれると、すぐにその後を追って自刃した。墓は滋賀県大津市、JR石山駅の北側に残る。
境内で兼平をまつるのは兼平社で、元文5年(1740年)には誉田別命も合わせてまつられた。續麻社の祭神は栲幡千々姫命である。文化庁の答申資料は、この神社を、今井兼平をまつる社に續麻社を合祀したものと説明している。
合祀と移築でそろった4棟
昭和22年(1947年)の合祀より前、いまの境内は今井(兼平)神社の社地だった。續麻神社は別の場所にあり、合祀にともなって本殿の續麻社が旧境内から移された。松本市は、神楽殿もこのとき續麻神社の旧境内から移築されたと伝えている。
神明社はさらに一度多く動いた。もとの社地から大正4年(1915年)に續麻神社へ合祀されて續麻神社の旧境内に移り、昭和22年(1947年)に現在地へ移された。祭神はいまは兼平社に合わせてまつられ、神明社は空殿になっている。
4棟は第103回登録で、登録番号は續麻社が20-0608、兼平社が20-0609、神明社が20-0610、神楽殿が20-0611と続く。登録基準は、彫刻で飾った本殿2棟が「再現することが容易でないもの」、神明社と神楽殿が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録に先立つ令和4年(2022年)7月22日の文化審議会の答申では、續麻社と兼平社が「特異で洗練された松本平の彫刻付社殿」の例として紹介された。
續麻・今井(兼平)神社の境内の配置
松本市の解説に沿って歩くと、鳥居をくぐった先に神楽殿が建ち、その脇に宝蔵と社務所がある。奥に拝殿を構え、さらにその背後に結界を設けて本殿を安置する。結界の正面に向かって左が兼平社、右が續麻社で、神明社は結界の左手に建つ。文化庁の解説は續麻社を兼平社の北、神明社を兼平社の南と書いているので、本殿の正面は東を向いていることになる。
規模の差は大きい。文化庁のデータベースによる建築面積は、神楽殿の53平方メートルに対し、兼平社が4.4平方メートル、續麻社が4.1平方メートル、神明社が1.5平方メートルである。拝殿は登録の対象に入っていない。各棟の見え方はそれぞれのページで紹介している。
續麻・今井(兼平)神社の参拝と行き方
續麻・今井(兼平)神社は集落の氏神の社で、拝観の時間や料金を定めた案内は松本市の資料にも見当たらない。本殿は拝殿の奥の結界の内にあり、外から拝する形になる。内部公開の案内もない。松本市は、秋祭りに五つ灯篭をあげる祭礼が盛大に行われると紹介している。
鉄道駅から歩いて来られる距離ではない。最寄りのJR篠ノ井線広丘駅から直線でおよそ4キロメートル、松本駅からはおよそ11キロメートル離れ、信州まつもと空港からは直線で約3キロメートルの位置にある。路線バスは、松本バスターミナル発の空港今井線のうち下今井行きが平日に1日6便あり、土休日は今井方面へ入らない(2026年3月14日改正の時刻表による)。下今井の停留所から神社までの道のりは公式の案内で確かめられなかったため、車かタクシーが現実的である。参拝者用の駐車場の案内も見当たらない。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):續麻・今井(兼平)神社續麻社
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014363
- 国指定文化財等データベース(文化庁):續麻・今井(兼平)神社兼平社
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014364
- 国指定文化財等データベース(文化庁):續麻・今井(兼平)神社神明社
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014365
- 国指定文化財等データベース(文化庁):續麻・今井(兼平)神社神楽殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014366
- 文化遺産オンライン:續麻・今井(兼平)神社兼平社
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/590273
- 文化庁:文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和4年7月22日(PDF)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/93747501_01.pdf
- 松本市:續麻・今井(兼平)神社〔4棟〕
- https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/134/95090.html
- 松本市:松本市内バス路線図・時刻表・位置情報
- https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/222/3237.html
- 松本市:空港今井線・大久保工場団地・神林線 時刻表(2026年3月14日~、PDF)
- https://www.city.matsumoto.nagano.jp/uploaded/attachment/123466.pdf
- 大津市歴史博物館 大津の歴史事典:今井兼平
- https://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/db/jiten/data/219.html
最終更新日: 2026.10.04
基本情報
| 名称 | 續麻・今井(兼平)神社 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県松本市大字今井1077 |
| 所有者 | 宗教法人續麻神社兼平神社 |
| 指定 | 登録有形文化財 4件 |
| 座標 | 36.14149, 137.90200 |