玄関の上に花頭窓が載っている

青い理髪舘(旧小林理髪舘)は、長崎県島原市上の町888-2にある大正後期の木造2階建洋館で、平成15年(2003年)7月1日に国の登録有形文化財(建造物)となった。

入る前に、玄関の上を見上げたい。そこにはペディメント風の意匠が置かれ、中央にアーチとキーストーンが収まっている。ペディメントもキーストーンも西洋建築の語彙である。ところがアーチの輪郭は花頭窓を写している。禅宗とともに日本に入り、仏堂の窓として定着したあの曲線である。地方の大工が古典的な破風のなかに寺院の意匠を嵌め込み、要石で締めた。国指定文化財等データベースはこの処理を「特異」と評している。

外観の他の部分は素直で、しかし考えられている。間口は3間、およそ5.5メートル。寄棟造の屋根に桟瓦を葺き、壁は下見板張り。青く塗られたその色が、現在の呼び名の由来である。建築面積は60平方メートルしかない。

平面には、大正期の地方の建物が繰り返し用いた分割が見える。表は洋、奥は和。1階も2階も前面を洋風に構え、後方部は和風の造りに戻る。当時の島原にあって最先端の建物だったと地元では伝えられている。

何が登録され、何が評価されたのか

登録有形文化財は、平成8年に始まった日本の建造物保護のうち緩やかな側の制度である。国が選定して現状変更に許可を要する国宝・重要文化財の「指定」とは異なり、所有者の手元に建物を置いたまま、外観変更前の届出を求める。まさしくこうした建物、地域にとっては大切だが放っておけば消える商店建築のために設計された仕組みだと言える。

登録年月日は平成15年7月1日、登録告示は同月17日。登録番号42-0025の42は長崎県の県コードにあたる。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」で、三つある基準のうち、希少性や景観ではなく建物の形そのものに根拠を置くものである。

文化庁の記載が名指しするのは二点。ひとつは先の玄関上部の意匠。もうひとつは理髪室内部で、3連の造り付け鏡面台をはじめ保存状況が良いとされる。店舗が代替わりするとき真っ先に失われるのがこの種の造作である。それが残っていたことが登録を支えた。

建築年代については資料に幅がある。文化庁は時代を大正、年代を大正後期とし、西暦を1912年から1925年と示す。これに対し島原半島観光連盟は1923年(大正12年)と特定し、小林理髪館としての開業は1950年、閉業は1980年代と記す。一方で、大正期からこの建物で理髪店が営まれていたとする地元の説明もある。建物の建築年と、小林の名での営業の履歴は別の問題であり、後者については公表資料の記述が一致していない。

商店街が守り、いまはコーヒーを出す

閉業後、老朽化により取り壊しが予定されていた。これを覆したのが森岳商店街をはじめとする町の人々の支援で、建物は喫茶店「工房モモ」として再び開いた。1階は当時の理髪店の道具を残したまま飲食の場として使われ、2階はミニギャラリーとして運営されている。

建つ通りにも来歴がある。森岳は島原城の築城時に開かれた城下町の一区画で、島原街道が通り、長崎や江戸へと結ばれていた。旅籠、酒造場、木綿問屋が集まった一帯である。大正2年(1913年)に島原鉄道が開通すると、この界隈は島原の北の玄関口としてさらに人と物を集めた。全国的な洋館の流行が大正後期の島原にも及び、その波が残した一棟がこれにあたる。

実際的なことを書いておく。島原駅から徒歩5分、島原城もすぐ近くである。喫茶店であって博物館ではないため入場料の設定はなく、内部を見るには注文をすることになる。営業時間は11時から18時、定休日は木曜と金曜だが、変更されることがあると運営者自身が断っているので、訪問前に店の公式サイトを見ておきたい。駐車場は近隣にある。外観は路上から常時撮影できる。内部については他の客が席に着いていることが多いため、店の方に一言確認してからにしたい。

看板は寒ざらし。島原の湧水で冷やした白玉をシロップでいただく郷土の菓子で、器のどこかにハート形の白玉が潜んでいる。島原の町は雲仙山系の地下水で成り立っており、コーヒーもその水で淹れられている。

Q&A

Q青い理髪舘(旧小林理髪舘)は内部を見学できますか。入場料はかかりますか。
A見学できます。入場料の設定はありません。博物館ではなく喫茶店「工房モモ」として営業しているため、内部を見るには注文をすることになります。1階は理髪店当時の道具を残し、2階はミニギャラリーとして使われています。
Q青い理髪舘の営業時間と定休日を教えてください。
A営業時間は11時から18時、定休日は木曜と金曜です。ただし変更される場合があると運営者が案内しているため、訪問前に工房モモの公式サイトで確認してください。外観は路上から常時見ることができます。
Q青い理髪舘へのアクセスを教えてください。
A島原鉄道の島原駅から徒歩約5分、島原市上の町888-2の森岳商店街の一角にあります。島原城も近く、あわせて歩ける距離です。車の場合は近隣に駐車場があります。
Q青い理髪舘の建築で注目すべき点はどこですか。
A玄関上部のペディメント風意匠です。西洋の破風のなかに、禅宗様の花頭窓を写したアーチとキーストーンが組み合わされています。内部には理髪室の3連の造り付け鏡面台が残ります。外観は間口3間(約5.5メートル)、寄棟造・桟瓦葺の屋根に下見板張りの壁という構成です。
Q青い理髪舘はいつ建てられ、いつ文化財に登録されたのですか。
A文化庁は建築年代を大正後期(1912年〜1925年)とし、島原半島観光連盟は1923年(大正12年)と記しています。登録有形文化財への登録は平成15年(2003年)7月1日、登録告示は同月17日、登録番号は42-0025です。

基本情報

名称青い理髪舘(旧小林理髪舘)
所在地長崎県島原市上の町888-2
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 42-0025 登録基準「造形の規範となっているもの」
指定年登録年月日 平成15年(2003年)7月1日/登録告示 同年7月17日
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積60平方メートル。間口3間、寄棟造・桟瓦葺、下見板張
所有者個人所有(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況喫茶店「工房モモ」として営業。11時〜18時、木・金曜定休(変更の場合あり)。入場料なし

参考文献

国指定文化財等データベース — 文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003484
文化遺産オンライン — 青い理髪舘(旧小林理髪舘)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/116364
島原半島公式観光サイト — 青い理髪舘
https://www.shimakanren.com/spot/detail_10071.html
青い理髪舘 工房モモ — 公式サイト
https://www.rihatsukan-kobomomo.com/
島原市 — 青い理髪舘
https://www.city.shimabara.lg.jp/page2949.html

最終更新日: 2026.08.20