国津神社十三重塔:三重の山里に佇む鎌倉時代の石造美術の傑作

三重県津市美杉町太郎生——深い山々と清らかな渓流に囲まれた静かな山里の中心に、國津神社は鎮座しています。その境内にそびえる十三重塔は、国指定重要文化財として700年以上の歳月を刻んできた鎌倉時代後期の石造美術の傑作です。小ぶりながらも整った姿と力強い軒反りを持つこの塔は、「石造美術の宝庫」と称される美杉地域においてもとりわけ優れた作品として高く評価されています。

歴史的背景

國津神社は元文元年(1736年)、出雲大社の分霊を勧請して創建されたと伝えられ、國津大明神あるいは三社宮と称えられてきました。しかし、境内に立つ十三重塔は神社の創建よりも数百年も古い鎌倉時代後期の作品です。

この塔はもともと、太郎生の日神不動前にあった山王権現社の境内に安置されていました。明治40年(1907年)、政府の神社合祀政策により山王社が國津神社に合祀された際に、現在地に移されました。移転を経てもなお、塔は鎌倉時代の原形をよく保っており、中世の仏教石造美術の貴重な遺産として今日に伝えられています。

太郎生は平成の大合併で津市の一部となりましたが、歴史的には奈良文化圏に属し、地理的にも木津川の支流である名張川の上流域に位置しています。津市の中心部よりも名張市の生活圏に近い山里であり、この地理的特性が美杉地域の豊かな石造美術の伝統を育んできました。

重要文化財指定の理由

国津神社十三重塔は大正15年(1926年)4月19日に国の重要文化財(建造物)に指定されました。その評価にはいくつかの重要な要素があります。

第一に、卓越した造形美です。総高約3.3メートルと十三重塔としては小型ながら、非常に整った均整のとれた姿を見せています。十三層の屋根は軒が厚く、力強い軒反りが鎌倉時代の石造建築の最も優れた特徴を示しています。

第二に、塔身四面に刻まれた仏像彫刻の質の高さです。各面にはそれぞれ顕教四仏——東面に薬師如来、西面に阿弥陀如来、北面に釈迦如来、南面に弥勒如来——が半肉彫りで表現されています。舟形を彫りくぼめた光背の中に端正な如来像が浮かび上がる姿は、優れた石工の技を伝えています。

第三に、この地方で広く使用されてきた地元産出の大洞石(おおぼらいし)と呼ばれる溶結凝灰岩で造られており、美杉地域の石造美術の伝統を代表する作品となっています。石造美術の宝庫と言われる美杉にあっても特に優れた作品として、その芸術的・歴史的価値が認められました。

建築・芸術的な見どころ

塔は日本の石造十三重塔の典型的な形式に従い、基礎石、仏像を刻んだ塔身、十三層の屋根(笠石)、そして頂部の相輪から構成されています。現在の相輪は後世の補作と見られますが、それ以外の部分は鎌倉時代の原形をよく留めています。

特に注目すべきは屋根の造形です。各層の軒は厚みがあり、軒裏には一段の垂木型が刻出されるという精緻な装飾が施されています。軒端の力強い反りは塔全体に堂々とした気品を与えており、小ぶりな塔身であることを忘れさせるほどの迫力があります。

正面とされる西面の阿弥陀如来は、上品下生の定印を結ぶ姿で表されています。この彫刻様式は太郎生地区の日神墓地にある阿弥陀如来像と非常によく似ており、同じ石工集団による作品であると考えられています。

塔の右隣には阿弥陀種子自然石塔婆が立っています。高さ約1.5メートルの大洞石に線刻で三角の台座、蓮華座、月輪を描き、その中に阿弥陀の種子「キリーク」を大きく薬研彫りしたもので、美杉地域独特の意匠を持つ興味深い石造物です。

拝観・アクセス情報

國津神社は太郎生集落の中心部に位置し、拝観料は不要で、いつでも自由に参拝・見学できます。境内はそれほど広くはありませんが、十三重塔と大ケヤキを中心に、静謐で趣のある空間が広がっています。

公共交通機関を利用する場合は、JR名松線伊勢奥津駅から名張行きの三重交通バスに乗り、約30分で瑞穂バス停に到着します。バス停からは徒歩すぐです。自動車の場合は、名張市街から国道368号を南へ約20キロメートル、約30分の距離です。

山間部に位置するため、春の新緑・桜の季節や秋の紅葉の時期が特におすすめです。公共交通機関の便は限られていますので、バスの時刻を事前に確認されることをお勧めします。

周辺の見どころ

美杉地域には国津神社と合わせて訪れたい魅力的な観光スポットが数多くあります。

まず、神社境内にそびえる國津神社のケヤキは三重県指定天然記念物です。樹齢800年以上と伝えられ、地表に現れた根回り19.6メートル、樹高30メートル、胸高周囲約7メートルの堂々たる大木で、昭和55年の全国植樹祭ではお手蒔き用の種子が献上されたという由緒も持っています。

約10キロメートル東にある三多気の桜は、国の名勝に指定され「さくら名所百選」にも選ばれた全国的な桜の名所です。国道368号から真福院の山門に至る約1.5キロメートルの参道に約500本のヤマザクラが並び、例年4月中旬から下旬にかけて見事な花を咲かせます。

北畠神社は戦国時代の伊勢国司・北畠氏を祀る神社で、境内には国の名勝史跡に指定された室町時代の武家庭園が残ります。野性的で豪壮な石組みが特徴的な庭園は、中世武家文化を今に伝える貴重な遺構です。津市美杉ふるさと資料館では、北畠氏の歴史や伊勢本街道の宿場文化について学ぶことができます。

自然愛好家には、大洞山中腹の森林セラピーコース、3月に黄金色に咲き誇るミツマタ群生地、スカイランドおおぼらキャンプ場での天体観測なども人気です。道の駅美杉では美杉材の工芸品やアマゴ料理など地域の特産品を楽しむことができます。

Q&A

Q国津神社十三重塔とはどのような文化財ですか?
A三重県津市美杉町太郎生の國津神社境内に立つ、鎌倉時代後期に造られた石造の十三重塔です。総高約3.3メートル、地元産の大洞石(溶結凝灰岩)で造られ、塔身四面に顕教四仏が半肉彫りされています。大正15年(1926年)に国の重要文化財に指定されました。
Q塔身に刻まれた四仏はどの仏様ですか?
A東面に薬師如来、西面(正面)に阿弥陀如来、北面に釈迦如来、南面に弥勒如来が配されています。いずれも舟形の光背を彫りくぼめた中に半肉彫りで表現されており、鎌倉時代の優れた石工技術を示しています。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR名松線伊勢奥津駅から名張行きの三重交通バスに乗車し、約30分で瑞穂バス停下車すぐです。自動車の場合は名張市街から国道368号を南下し約20キロメートル(約30分)です。
Q大洞石(おおぼらいし)とはどんな石ですか?
A大洞石は美杉地域で産出される溶結凝灰岩の一種です。この地方の石造美術品に広く使用されてきた特徴的な石材で、加工しやすく耐久性もあることから、中世以来多くの石塔や石仏の素材として用いられてきました。
Q拝観料はかかりますか?見学可能な時間は?
A拝観料は無料で、境内は常時開放されており、いつでも自由に見学できます。春の桜の季節や秋の紅葉の時期が特におすすめです。

基本情報

名称 国津神社十三重塔(くにつじんじゃじゅうさんじゅうのとう)
指定区分 国指定重要文化財(建造物)
指定年月日 大正15年(1926年)4月19日
時代 鎌倉時代後期
構造形式 石造十三重塔
総高 約3.3メートル
石材 大洞石(溶結凝灰岩)
所有者 国津神社
所在地 〒515-3536 三重県津市美杉町太郎生1929
電話番号 059-273-0083(国津神社)
交通アクセス JR名松線伊勢奥津駅から名張行き三重交通バス約30分「瑞穂」下車すぐ
拝観料 無料

参考文献

国津神社|観光スポット|観光三重
https://www.kankomie.or.jp/spot/2930
国津神社十三重塔 - 国指定文化財等データベース(Weblio)
https://www.weblio.jp/content/国津神社十三重塔
国津神社(くにつじんじゃ)十三重石塔
https://kawai24.sakura.ne.jp/mie-kunitujinjya.htm
津市美杉町の神社仏閣めぐり – 神宮巡々2
https://www2.jingu125.info/2015/05/21/20150519_13484028162/
観光案内 | 美杉いなかツーリズム
https://www.inaka-tourism.com/kanko.html
国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/828

最終更新日: 2026.04.13