焼け跡に建った商家

越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋は、新潟県長岡市柳原町3-3にある昭和22年頃建築の木造二階建商家で、平成30年(2018年)3月27日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

建築年が昭和22年頃という点に注目したい。昭和20年(1945年)8月1日の長岡空襲により、市街地の大半は焼失している。柳原町のこの建物が建ったのは、その約2年後、まだ町が瓦礫の片付けを続けていた時期にあたる。

復興期の建築であれば、手早く簡素に済ませる選択肢もあったはずである。実際に選ばれたのは、越後の商家が代々用いてきた切妻造妻入の形式であり、正面には雁木が付された。

間取りも旧来の型を踏襲している。一階は前面を土間とし、通り土間に沿ってミセ、ブツマ、居室が並ぶ。二階には二室。建築面積は81平方メートルで、安永7年(1778年)創業の老舗の本店としては小ぶりな部類に入る。

大和屋は長岡藩の御用菓子を務めた家である。銘菓「越乃雪」は日本三大銘菓のひとつに数えられる。建物はその後、昭和20年代後半と昭和40年頃に増築が行われ、昭和56年(1981年)に改修されている。

「登録」と「指定」―制度上の位置づけ

文化財保護法による建造物の保護には、指定と登録という二つの仕組みがある。重要文化財は国が「指定」するもので、現状変更に許可を要するなど規制が強い。これに対し登録有形文化財は、平成8年(1996年)に導入された緩やかな制度で、外観を大きく変える際に届出を求める程度にとどまる。

営業中の菓子店がこの資格を保持できるのは、制度がそもそも使い続けられる建物を想定して設計されているためである。全国の登録件数はすでに1万件を超えた。

登録基準は三種あり、本件は第一の「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当する。登録番号は15-0473、第89回登録にあたる。

この基準を柳原町の街路に置き直すと、意味がはっきりする。雁木は一軒だけでは機能しない。隣家へ、そのまた隣へと連続して初めて、雪の日の通路として成立する。長岡は一夜で旧来の商業地の大半を失った土地であり、それでも同じ形式を選び直した戦後の建築は、空襲を受けなかった町の同種の建物とは異なる重みを持つ。

見どころ

ミセに入ったら、床の間を見てほしい。店の間に床の間を設けること自体が珍しいが、ここでは床柱などに竹と磨き丸太が使われている。数寄屋風の意匠である。

茶室建築の語彙が、菓子を売る空間に持ち込まれている。藩の御用を務め、茶席の客を想定してきた店の性格が、この一角に表れていると読める。

外観では入口の位置に注意したい。棟が奥行方向に走るため、入口は妻側に開く。妻入である。町家には平入とするものも多く、間口が狭く奥行の深い敷地では妻入が合理的な解となる。黒く光る瓦の下、正面が縦に伸びた比例を見せるのはこのためである。

店舗の営業時間は9時から17時30分。近年の改装で喫茶スペースが設けられ、上生菓子などをその場で味わえるようになった。改装にあたっては登録対象である前面の外観が保存されている。定休日については資料により記載が分かれるため、訪問前に公式サイトか電話での確認をすすめる。

外観の撮影は路上から自由に行える。内部は営業中の店舗であり住居でもあるので、店内を撮る場合は店頭で一声かけたい。

長岡駅大手口からは徒歩13分から15分程度。途中に河井継之助記念館と山本五十六記念館があり、幕末から近代までの長岡を歩いて辿る半日の行程が組める。

Q&A

Q越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋の内部は見学できますか。営業時間は。
A一階は営業中の本店で、9時から17時30分まで客として入店できます。近年の改装で喫茶スペースも設けられました。二階と住居部分は非公開です。定休日は資料により記載が異なるため、公式サイトまたは電話でご確認ください。
Q越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋は重要文化財ですか。
A重要文化財ではなく、登録有形文化財(建造物)です。平成30年(2018年)3月27日登録、登録番号15-0473。指定制度より規制の緩やかな仕組みで、使い続けられる建物を保護対象としています。
Q越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋へは長岡駅からどう行きますか。
A上越新幹線が停車する長岡駅の大手口から徒歩13分から15分ほどです。自動車の場合は店舗周辺に来客用の駐車スペースがあります。
Q越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋はいつ建てられたのですか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは建築年を昭和22年(1947年)頃としています。昭和20年8月の長岡空襲から約2年後の建築で、その後昭和20年代後半と昭和40年頃に増築、昭和56年に改修が加えられました。
Q越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋で写真を撮ってもよいですか。
A雁木を含む外観は路上から自由に撮影できます。店内は営業中の店舗かつ住居のため、撮影の際は店頭でお声がけください。

基本情報

名称越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋(こしのゆきほんぽやまとやてんぽけんしゅおく)
所在地新潟県長岡市柳原町3-3
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号15-0473
指定年平成30年(2018年)3月27日登録(第89回)
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積81平方メートル
所有者株式会社越乃雪本舗大和屋
公開状況一階店舗は営業時間内に入店可(9時〜17時30分)。二階および住居部分は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「越乃雪本舗大和屋店舗兼主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012138
越乃雪本舗大和屋 公式サイト
https://www.koshinoyuki-yamatoya.co.jp/
長岡観光ナビ「(株)越乃雪本舗大和屋」
https://nagaoka-navi.or.jp/spot/42234

最終更新日: 2026.08.13