白山公園 ― 日本の都市公園が始まった場所
新潟市の中心部、市役所や古町の繁華街からほど近い一角に、白山公園がある。面積16,959平方メートルのこの緑地は、2018年(平成30年)10月15日に国の名勝に指定された。指定の決め手となったのは、その規模ではなく、来歴の古さと姿の連続性である。
明治6年(1873)1月、太政官布告第16号によって各地に公園の設置が奨励された。このとき全国で最初に開設された25か所の公園のひとつが白山公園であり、東京の上野や水戸の偕楽園と名を並べる。多くの公園が旧来の寺社境内地をそのまま転用したのに対し、白山公園は新たに造成・整備された点で性格が異なっていた。
神社の境内から公園へ
この土地は、もとは新潟総鎮守・白山神社の境内であった。江戸時代の白山神社は信濃川河口の中州にあったと伝わる。17世紀半ばに新潟町と中州のあいだに土砂が堆積して湊の機能が損なわれると、明暦元年(1655)に新潟町が移転し、境内地は信濃川に面する南端部分だけが残った。川沿いの土地は町人に貸し出され、回米を納める「島蔵」と呼ばれる蔵が建ち並んでいたという。
転機は明治初期に訪れる。明治5年(1872)、県令として着任した楠本正隆は、前年の上知で官有地となっていた白山神社の旧境内地に公園を造ることを決めた。この地は信濃川越しに弥彦山や角田山を望む景勝地で、白山祭などでにぎわう新潟町民の行楽の場でもあった。蔵や末社が撤去され、「白山遊歩場」の造成工事が始まる。
工事の監督には新潟の実業家・荒川太二があたり、三条町の庭師が携わったと伝わるが、その詳細は明らかでない。明治6年(1873)に公園入口に建てられた「新潟遊園碑」には、楠本がオランダの公園に倣ってこの地を造り、県民の心身を壮健にしようとしたことが刻まれている。開設当初は「新潟遊園」と呼ばれ、のちに「白山公園」の名が一般化した。大正5年(1916)の新潟市公園条例の制定をもって、正式な名称となっている。
当時の記録は、開設まもない園内のようすを具体的に伝える。亭が2つ、庭石は590個、石燈籠が24基、ランプが6基。植栽は古松85本に稚松1,050本余りという数が残る。明治11年(1878)に明治天皇の新潟巡幸が決まると、蓮池の東端に築山が設けられ、信濃川とその先の山々を望めるよう整えられた。この築山がのちに「美由岐賀岡」と名づけられる。
名勝に指定された理由
適用された指定基準は、公園・庭園の区分である。評価を支えたのは二つの点だ。ひとつは、日本が公園という制度を取り入れていく過程における位置づけである。寺社境内地を受け継いだ公園と違い、白山公園は新たに設計・造成された。明治6年の計画者が公園に何を求めたのか、その実像を伝える数少ない事例といえる。
もうひとつは保存状態である。東西に長く、両端に池を配し、あいだに築山を置くという地割は、約150年にわたって大きく変わっていない。後年に拡張された区域は「新公園」と呼んで旧来の区域と区別され、明治初期に造成された部分は大規模な改修を免れてきた。文化庁が学術上・観賞上の価値を高く評価し、国の名勝として保護するに至った所以である。
訪れて目を留めたいもの
歴史的な園地は東西に細長い。東端にあるのがくびれた形の「瓢箪池」、西端にあるのが「蓮池」、そのあいだに天皇の巡幸に合わせて築かれた小高い「美由岐賀岡」が立つ。園路は全体をめぐり、随所に置かれた景石や石燈籠、新潟の歴史を刻んだ石碑のあいだを縫っていく。
植栽はマツとウメを中心に、サクラ、ツツジ、フジが加わり、夏には蓮池をハスの花が埋める。四季の移ろいがはっきり読み取れる場所で、4月中旬には約200本の桜、5月にはボタン、8月中旬にはハス、秋には紅葉が続く。
足を止めたい建物がひとつある。「燕喜館」は、新潟三大財閥のひとつ齋藤家の明治期の邸宅の一部で、明治40年(1907)頃の建築と伝わる。齋藤家が平成6年(1994)に建物を新潟市へ寄贈し、白山公園内に移築されて平成9年(1997)から一般公開が始まった。平成12年(2000)には国の登録有形文化財となっている。入館は無料。別途料金で、水琴窟をしつらえた庭と蓮池を眺めながら抹茶を一服することもできる。
北西の園地の近くには、忠犬タマ公の銅像が立つ。昭和9年と昭和11年の二度にわたって飼い主を雪崩から救った犬で、戦時中に撤去されたのち昭和34年に再建された。子ども連れにも親しまれる、静かな目印である。
行き方と訪れる時季
白山公園は市街地の中心にあり、訪れやすい。JR新潟駅からは、萬代橋ラインのバスで「市役所前」まで約16分、そこから徒歩数分。観光循環バスなら「白山公園前」で園のすぐ前に着く。JR越後線の白山駅も徒歩圏内にある。車の場合は園内に複数の駐車場があり、合わせて数百台分が用意されている。
園は終日開放され、入園は無料。新潟の旅程のどこにでも組み込みやすい立ち寄り先である。最も混み合うのは4月中旬から5月上旬の桜の時季で、公園とつながる空中庭園が夜間にライトアップされ、静かな水面に花影が映る。
公園のまわり
公園のすぐ隣には白山神社が鎮座する。縁結びの御利益で知られ、良縁を願う参拝者が絶えない。現在の社殿は、その姿を江戸時代初期の正保元年(1644)にさかのぼる。
南側では、新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」を取り巻くように6つの空中庭園と空中回廊が設けられ、信濃川の方へと続いている。たどっていくと、川沿いの遊歩道「やすらぎ堤」に出る。かつて白山公園が信濃川と結ばれていた景観を、いまにつなぐ道筋といえる。古町の店や食事処も歩いて行ける範囲にあり、訪問の前後の食事に便利だ。
Q&A
- 入園料はかかりますか。
- かかりません。公園は終日開放され、入園は無料です。園内の歴史的建造物「燕喜館」も入館は無料ですが、抹茶を一服する場合は別途料金が必要です。
- いつ訪れるのがよいですか。
- 季節ごとに見どころがあります。4月中旬から5月上旬の桜、5月のボタン、8月中旬のハス、11月の紅葉です。桜の時季が最も人気で、隣接する空中庭園の夜間ライトアップも楽しめます。
- 新潟駅からの行き方を教えてください。
- 萬代橋ラインのバスで「市役所前」まで約16分、そこから徒歩数分です。観光循環バスは「白山公園前」で園のすぐ前に着きます。JR越後線の白山駅も徒歩圏内です。
- 「名勝」とは何ですか。
- 庭園や景観のうち、観賞上・学術上の価値が高いものに与えられる国の指定区分です。白山公園は、日本の都市公園の草創期における役割と、開設当初の地割がよく残っていることが評価され、2018年に指定されました。
- 明治時代の姿が今も残っているのですか。
- 中心となる園地については、大部分が残っています。二つの池と美由岐賀岡を東西に配した構成は、明治初期からほとんど変わっていません。後年の拡張部分はありますが、「新公園」として区別されています。
基本情報
| 名称 | 白山公園(はくさんこうえん) |
|---|---|
| 所在地 | 新潟県新潟市中央区一番堀通町 |
| 指定区分 | 国指定名勝(平成30年10月15日指定) |
| 指定基準 | 一.公園、庭園 |
| 指定面積 | 16,959.0平方メートル |
| 由来 | 明治6年(1873)、日本で最初に開設された25か所の都市公園のひとつ |
| アクセス | JR新潟駅からバスで「市役所前」まで約16分、徒歩数分。JR越後線・白山駅から徒歩圏内 |
| 公開状況 | 入園無料・終日開放 |
References
- 文化庁 国指定文化財等データベース ― 白山公園
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/00004047
- 新潟観光コンベンション協会 ― 白山公園
- https://www.nvcb.or.jp/spot/detail_1108.html
- にいがた観光ナビ ― 白山公園
- https://niigata-kankou.or.jp/spot/16002
最終更新日: 2026.05.26