清廣館本館:新潟最古の出湯温泉に佇む、開業300余年の国登録有形文化財の宿

新潟県阿賀野市、五頭山の麓に広がる出湯温泉。その静かな温泉街の中に、300年以上にわたり旅人を迎え続けてきた老舗旅館「清廣館(せいこうかん)」があります。木造三階建ての本館は、2015年(平成27年)に国の登録有形文化財に登録され、阿賀野市で第一号の指定となりました。宮大工の匠の技が随所に光るこの建物は、昭和初期の日本建築の粋を今に伝える貴重な存在です。

出湯温泉は、弘法大師空海が錫杖で地面を突いて湧出させたという伝説が残る、開湯1,200年を誇る新潟県最古の温泉地です。その由緒ある湯の里で、清廣館は少なくとも宝永4年(1707年)には宿屋として営業していた記録が残っており、江戸時代から続く歴史を持っています。

なぜ国登録有形文化財に登録されたのか

清廣館本館が国の登録有形文化財として認められた理由は、国土の歴史的景観に寄与する建造物としての価値が高く評価されたためです。その特徴は多岐にわたります。

現在の建物は昭和3年(1928年)頃に竣工しました。当時の館主が宮大工の棟梁とともに各地を巡り、良質な木材を厳選して建てたものです。木造三階建て、入母屋造、瓦葺で、建築面積は約257平方メートル。L字形の平面を持つ大規模な建物です。

最大の特徴は、客室ごとに異なる銘木を用いた数寄屋風の意匠にあります。床柱にはツツジ、ビワ、モミジなど、部屋ごとに異なる樹種が使い分けられ、それぞれの空間に個性と風格を与えています。上階は軒を出桁造とし、ガラス窓を並べて手摺を設けた外観が、湯治宿としての風情ある佇まいを生み出しています。

見どころと魅力

宮大工の技が競演する客室

清廣館には2階と3階に合計11室の客室があり、それぞれが宮大工たちの腕の見せ所となっています。厚手のケヤキ一枚板の床の間、凝ったデザインの書院、クサマキの雨戸、五葉松の手摺、細やかな柾目の長押など、随所に匠の技が光ります。高い天井を見上げながら畳に腰を下ろし、お茶を味わうひとときは、日本建築の美しさを五感で感じられる贅沢な時間です。

源泉100%かけ流しの天然ラジウム温泉

清廣館の温泉は、自家源泉「洞春の湯」から湧き出す単純弱放射能泉(ラジウム泉)です。源泉温度は約30.6℃で、適温に加温して提供されています。循環装置や塩素消毒は一切使用せず、湯船の底から自然に湧き上がる生まれたての純粋な温泉を堪能できます。

清廣館は「日本秘湯を守る会」の会員宿でもあり、温泉の品質と自然環境の保全に強い信念を持っています。過度な汲み上げをせず、100年後、200年後も変わらずこの温泉を楽しめるよう、持続可能な温泉運営を実践しています。

山の恵みを活かした料理

女将を中心とした調理チームが腕をふるう料理は、「素なるお料理」をテーマに、越後の大地で育まれた良質な食材を丁寧に調理したものです。裏手に迫る五頭山は山菜の宝庫で、春にはタケノコ・ワラビ・ゼンマイ・フキノトウ・葉山わさびなど、秋にはキノコ類が食膳を彩ります。新潟が誇るコシヒカリのご飯とともに、山里の滋味深い味わいをお楽しみいただけます。

出湯温泉と清廣館の歴史

出湯温泉の歴史は、縄文時代の土器が発掘されていることから、有史以前にまで遡る可能性があります。正式な開湯は大同4年(809年)とされ、弘法大師空海の開湯伝説が伝わっています。鎌倉時代には幕府に温泉税を納め、江戸時代の温泉番付「諸国温泉功能鑑」にも「越後出湯の泉」として記されるなど、古くからその効能が認められてきました。

清廣館は宝永4年(1707年)にはすでに営業しており、「清廣館」→「兼清(かねせい)」→「清廣館」と宿名を変えながら、300年以上にわたって旅人をもてなし続けてきました。明治・大正期には新潟市周辺の役人や大地主が保養に訪れ、「大日本帝国陸軍病院」にも指定されて、傷ついた兵士の療養にも用いられた歴史を持ちます。

本館は1965年頃、1975年、2008年に改修が行われていますが、昭和初期の建築としての基本的な構造と意匠は大切に守り続けられています。

周辺情報

華報寺と共同浴場

清廣館のすぐ近くに位置する華報寺(けほうじ)は、出湯温泉の精神的な中心として中世から続く古刹です。境内には「漲泉窟(ちょうせんくつ)」と呼ばれる歴史ある共同浴場があり、寺湯の伝統を今に伝えています。また、出湯共同浴場や無料の足湯「弘法の足湯」も温泉街に点在しています。

五頭山

清廣館の裏手にそびえる五頭山(標高912m)は、日本森林浴100選にも選ばれた豊かな自然が広がる山です。登山やトレッキングを楽しめるほか、山菜採りや森林浴など、四季折々の自然を満喫できます。

瓢湖(ラムサール条約登録湿地)

阿賀野市内にある瓢湖は、ラムサール条約に登録された湿地で、毎年10月から翌年3月にかけて数千羽のシベリアからの白鳥が飛来することで知られています。早朝、一斉に飛び立つ白鳥の姿は圧巻です。

五頭温泉郷の湯めぐり

五頭温泉郷は出湯温泉のほか、今板温泉、村杉温泉の3つの温泉地で構成されています。それぞれ個性の異なる天然ラジウム温泉を楽しめ、公共の露天風呂や共同浴場を含む湯めぐりが人気です。

Q&A

Q海外からの宿泊客でも利用できますか?
Aはい、海外からのお客様も歓迎されています。館内ではWi-Fiが利用可能です。予約は公式サイトまたは英語対応の予約サービスを通じて行うことをおすすめします。言葉の壁を越えて、国登録有形文化財の宿ならではの特別な体験をお楽しみいただけます。
Qおすすめの訪問時期はいつですか?
A四季それぞれに魅力があります。春は山菜料理と新緑、夏は五頭山のハイキングと涼やかな山の空気、秋は紅葉と豊富なキノコ料理、冬は雪景色の中の温泉と瓢湖の白鳥観察が楽しめます。特に秋冬の温泉は格別です。
Q日帰り入浴はできますか?
A近年は宿泊のお客様を中心にご案内しており、日帰り入浴は行っていない場合があります。ただし、近隣の華報寺共同浴場や出湯共同浴場は日帰りで利用できます。最新の状況は直接お問い合わせください。
Q館内のバリアフリー対応はどうなっていますか?
A歴史的な木造建築のため、エレベーターはございません。客室は2階・3階、お食事処・お風呂は1階にあり、階段でのご移動となります。全館禁煙で、喫煙は玄関脇の灰皿をご利用ください。
Qアクセス方法を教えてください。
A東京方面からは、上越新幹線で新潟駅まで約2時間、JR羽越本線に乗り換えて水原駅まで約25分です。水原駅からは阿賀野市営バス「村杉温泉行き」で約20分(出湯温泉下車)、またはタクシーで約15分です。お車の場合は、磐越自動車道・安田ICから約15分です。

基本情報

名称 清廣館本館(せいこうかんほんかん)
文化財区分 国登録有形文化財(建造物)/2015年(平成27年)3月26日登録
竣工 昭和3年(1928年)頃/1965年頃・1975年・2008年改修
構造 木造3階建、瓦葺、建築面積約257㎡
建築様式 入母屋造、数寄屋風意匠、上階は出桁造
客室数 11室
温泉 単純弱放射能泉(ラジウム泉)/源泉温度約30.6℃/源泉100%かけ流し(加温あり、循環・塩素消毒なし)
所有者 株式会社清廣館
所在地 〒959-1926 新潟県阿賀野市出湯802番地
電話番号 0250-62-3833
チェックイン/チェックアウト チェックイン 15:00/チェックアウト 10:00
アクセス JR羽越本線 水原駅より市営バス約20分またはタクシー約15分/磐越自動車道 安田ICより車で約15分
公式サイト https://seikokan.jp/

参考文献

清廣館本館 — 文化遺産オンライン(文化庁)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/289399
清廣館 公式サイト
https://seikokan.jp/
国登録有形文化財 清廣館 — 五頭温泉郷旅館協同組合
https://gozu.jp/introduce/inn02/
出湯温泉 清廣館 — 日本秘湯を守る会
https://www.hitou.or.jp/provider/detail?providerId=702
出湯温泉(五頭温泉郷)— にいがた観光ナビ
https://niigata-kankou.or.jp/spot/11589
清廣館 — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E5%BB%A3%E9%A4%A8
出湯温泉 — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E6%B9%AF%E6%B8%A9%E6%B3%89

最終更新日: 2026.03.02