髙橋あめや主屋:北国街道に佇む日本最古の飴屋の町家建築

新潟県上越市の城下町・高田の北国街道沿いに佇む髙橋あめや主屋は、寛永元年(1624年)創業の日本最古の飴屋「髙橋孫左衛門商店」の店舗兼住居です。明治8年(1875年)に建てられたこの建物は、雪国の商家の伝統的な表構えを今に残す貴重な町家建築として、平成16年(2004年)に国の登録有形文化財に登録されました。正面に設けられた雁木、2階の格子窓、土間床のミセなど、豪雪地帯ならではの建築的工夫と商家としての風格が見事に調和しています。

400年にわたる飴一筋の歴史

髙橋あめやの歴史は、寛永元年(1624年)に始まります。初代・六左衛門は、越前藩主・松平忠直の家臣でしたが、国替えに際して高田藩の横春日町へ移り住み、北国街道沿いの現在地で飴の製造・販売を始めました。以来約400年にわたり、飴一筋で商いを続けてきた日本でも類例のない老舗です。

看板商品である「粟飴(あわあめ)」は、創業当初は雑穀の粟を原料として作られていました。寛政2年(1790年)、4代目孫左衛門が原料をもち米に替え、日本で初めて淡黄色透明の水飴の製造に成功しました。この美しい黄金色の飴は「飴色」という日本語の語源になったとも伝えられています。現在は新潟県産のもち米と国産麦芽のみを使用し、伝統の製法を守り続けています。

粟飴は宮内庁御用達の品としても知られています。明治天皇が北陸巡幸の際に粟飴をお気に召され、自ら土産として皇后・皇太后に贈られたことが契機となり、皇室への献上品となりました。また、江戸時代の人気作家・十返舎一九の紀行文『金の草鞋』にもこの飴屋の繁盛ぶりが記されており、往時の名声がうかがえます。

文化財としての価値と登録理由

髙橋あめや主屋は、明治8年(1875年)に建てられた木造2階建ての町家建築です。屋根は鉄板葺の切妻造で、建築面積は約109平方メートル。平成16年(2004年)11月8日に国の登録有形文化財(建造物)として登録されました。

登録の理由として、「北国街道に面する切妻造、平入の町家で、正面に雁木を設け、その上方に2階の格子窓を見せる。1階内部は土間床のミセを正面に構え、奥に事務室が続き、2階は通りに面して座敷2室を並べる。雪国における商家の表構えをよく残す町家建築として貴重である」と評価されています。

この建物は、豪雪地帯の上越で培われた生活の知恵と商家としての機能性を見事に融合させた建築の好例です。1階正面のミセ(店舗空間)は土間床となっており、お客様が雁木を通ってそのまま店内に入りやすい構造になっています。2階の座敷は通りに面して配置され、商家の主人が街道の様子を見渡せる実用的な間取りとなっています。

雁木:雪国の建築的知恵

髙橋あめや主屋の正面に設けられた雁木は、上越市高田地区を象徴する建築的特徴のひとつです。雁木とは、家屋の庇を道路側に長く張り出して通路を確保する構造のことで、世界有数の豪雪地帯である高田の人々が冬の生活を支えるために生み出した知恵です。

高田地区に現存する雁木の総延長は約16キロメートルに及び、日本一の長さを誇ります。各家の所有者がそれぞれの区間を維持管理することで、連続した屋根付き通路が形成される共助のシステムは、建物単体ではなくシステムそのものが文化遺産といえます。雁木は歴史的な遺構としてだけでなく、現在も住民の日常生活に欠かせない生きたインフラとして機能しています。

見どころと魅力

髙橋あめや主屋を訪れると、歴史的建築と現役の老舗菓子店という二つの魅力を同時に楽しむことができます。店内では、創業以来の看板商品である粟飴をはじめ、水飴と寒天で作る独特の食感が特徴の翁飴(おきなあめ)、竹の皮に包まれた笹飴など、伝統の飴菓子を購入できます。

建物の外観は、雁木の下から見上げる2階の格子窓、重厚な木造の構えなど、江戸時代から続く北国街道の商家の風情を色濃く伝えています。店内には、明治天皇の銀婚式や大正天皇のご成婚の際に粟飴と翁飴を献上した返礼状など、貴重な歴史資料も保管されています。

現在は14代目が店を守り、「孫左衛門」の名を襲名しています。東京製菓学校で学び、都内の和菓子店で修業を積んだ14代目は、伝統の技を守りながら、翁飴を桜や干支の形にアレンジした季節限定商品なども手がけ、老舗の新たな魅力を発信しています。

周辺情報

髙橋あめや主屋は、上越市高田地区の歴史的な街並みの中に位置しており、周辺には魅力的な観光スポットが点在しています。雁木通りを歩きながら、城下町高田の歴史と文化を巡ることができます。

  • 高田城址公園:徳川家康の六男・松平忠輝が慶長19年(1614年)に築城した高田城の跡に整備された公園。約4,000本の桜が咲き誇る「日本三大夜桜」のひとつとして名高く、夏には東洋一と称される蓮の花が外堀を埋め尽くします。
  • 高田世界館:明治44年(1911年)に建てられた擬洋風建築の映画館で、現存する日本最古級の映画館として今も映画を上映しています。国の登録有形文化財。
  • 町家交流館高田小町:明治時代に建てられた町家「旧小妻屋」を再生・活用した文化交流施設。高田の町家の特徴である吹抜けや土蔵を無料で見学できます。
  • 旧今井染物屋:江戸時代末期に建てられた市内最古・最大級の町家。保存状態が良く、高田を代表する歴史的建造物として公開されています。
  • 料亭宇喜世:江戸時代末期に遡る創業約140年の老舗料亭。国登録有形文化財の建物で、伝統ある料亭の味を堪能できます。

Q&A

Q髙橋あめやでは飴を購入できますか?
Aはい、現在も営業中の飴屋として、粟飴・翁飴・笹飴などの伝統的な飴菓子をお買い求めいただけます。営業時間は8:30~19:00で、毎週水曜日が定休日です(8月は無休)。店舗見学や体験プログラムなども企画されることがあります。
Q最寄り駅からのアクセスは?
Aえちごトキめき鉄道・妙高はねうまラインの南高田駅から徒歩約10分です。北陸新幹線をご利用の場合は、上越妙高駅で妙高はねうまラインに乗り換えてください。バスの場合は、頸城バス「南新町入口」停留所から徒歩約4分です。
Q雁木とは何ですか?
A雁木とは、豪雪地帯で冬季の歩行者通路を確保するために、建物の庇を道路側に張り出して屋根付きの通路を形成した建築様式です。高田地区の雁木は総延長約16キロメートルと日本一の長さを誇り、各家の所有者が自分の区間を維持管理する共助のシステムとして現在も機能しています。
Q粟飴はどのような飴ですか?
A粟飴は、もち米と麦芽から作られる伝統的な水飴です。もともとは粟(あわ)を原料としていましたが、寛政2年(1790年)に4代目が日本で初めてもち米を使った透明な水飴の製造に成功しました。淡い黄金色の美しい色合いが特徴で、「飴色」という言葉の語源になったともいわれています。現在は新潟県産のもち米と国産麦芽のみで作られています。
Q高田地区の観光におすすめの季節は?
A四季それぞれに魅力があります。3月下旬~4月上旬は高田城址公園の「日本三大夜桜」が見頃を迎えます。夏(7月~8月)は東洋一と称される蓮の花が堀を埋め尽くします。冬は雁木が本来の機能を発揮する季節で、雪に覆われた城下町の風情は格別です。秋は公園や周辺の美しい紅葉をお楽しみいただけます。

基本情報

名称 髙橋あめや主屋(たかはしあめやしゅおく)
店舗名 髙橋孫左衛門商店(たかはしまございもんしょうてん)
文化財区分 国登録有形文化財(建造物) 登録日:平成16年(2004年)11月8日
建築年 明治8年(1875年)
創業 寛永元年(1624年)
構造 木造2階建、鉄板葺、建築面積約109㎡
所在地 〒943-0841 新潟県上越市南本町3-81
電話番号 025-524-1188
営業時間 8:30~19:00
定休日 毎週水曜日(8月は無休)
アクセス えちごトキめき鉄道・妙高はねうまライン「南高田駅」より徒歩約10分

参考文献

文化遺産オンライン - 髙橋あめや主屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/141611
上越観光Navi - 高橋孫左衛門商店
https://joetsukankonavi.jp/spot/detail.php?id=381
新潟直送計画 - 高橋孫左衛門商店
https://shop.ng-life.jp/s0656/
上越特産市場 - 髙橋孫左衛門商店
https://www.joetsu-tokusan.jp/shop/16.html
雪国ジャーニー - 日本最古の飴屋「髙橋孫左衛門商店」粟飴を紹介
https://www.yukiguni-journey.jp/12106/
上越市ホームページ - 上越市の文化財
https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/cultural-property/

最終更新日: 2026.03.27