別府市朝見浄水場とは
別府市朝見浄水場は、大分県別府市朝見二丁目にある別府市営の浄水場で、大正6年(1917年)3月に完成し、配水池や集合井室など5件が平成9年(1997年)9月3日に国の登録有形文化財に登録された。ふだんは「朝見浄水場(あさみじょうすいじょう)」と呼ばれ、市の施設案内もこの名で載せている。
登録されたのは配水池、配水池北出入口、配水池南出入口、集合井室、量水室の5件で、登録番号は44-0012から44-0016まで連続する。登録基準はどれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。配水池と2つの出入口、集合井室は高台の浄水場の構内にあり、量水室だけが北側の低地に離れて建つ。
別府市上下水道局によれば、別府の近代水道は大分県内で最初、全国でも33番目という早さで給水を始めた。登録有形文化財となった5件は、その草創期の水道施設を、いまも動いている浄水場のなかに伝えている。
大分県で最初の近代水道
当時の別府町が水道の計画に取りかかったのは明治39年(1906年)のことである。国の補助をめぐる交渉が長引き、事業の認可が下りたのは大正2年(1913年)7月だった。大正3年(1914年)7月26日には、朝見の浄水場予定地で起工式が開かれている。
工事は不況や資材の遅れで2度延期され、大正6年(1917年)3月に竣工、4月から給水が始まった。水源は乙原川(おとばるがわ)と鮎返川(あゆがえりがわ)で、取水の割合は6対4。朝見浄水場では緩速ろ過池3池で水をこし、配水池2池を経て、高低差だけで水を流す自然流下方式で町の各方面へ送った。計画給水人口は2万5,000人、1日の最大給水量は2,800立方メートルとされた。
大正13年(1924年)に市制が敷かれると人口の増加に給水が追いつかなくなり、別府市は第1期拡張事業に乗り出す。大正14年(1925年)7月に認可を受け、大正15年(1926年)2月6日に起工、昭和2年(1927年)11月に竣工した。このとき緩速ろ過池は3池から7池に、配水池は2池から4池に増え、第二集合井室、量水池、量水室などが加わった。計画給水人口は7万5,000人に引き上げられている。
拡張はその後も重ねられた。市の資料では、平成29年(2017年)4月時点の朝見浄水場は昭和44年(1969年)に築造された急速ろ過の施設で、浄水能力は1日5万8,000立方メートルである。
建設年代をめぐる二つの記録
別府市朝見浄水場の5件の年代は、資料によって食い違う。文化庁の国指定文化財等データベースは、配水池と集合井室を大正6年(1917年)、2つの出入口を大正15年(1926年)、量水室を昭和2年(1927年)とする。配水池の解説には完成当時2万5,000人分の給水ができたとあり、創設期の施設として扱っている。
一方、別府市上下水道局が平成29年(2017年)に刊行した『別府市水道100年誌』は、登録された配水池、南北の出入口、第二集合井室、量水室を、いずれも第1期拡張事業で建てられたものとして紹介する。上下水道局は見学会の質疑でも、集合井室は第1期拡張事業のときに、創設時の第一集合井室(現存しない)の隣へ似た意匠で建てたと答えている。
各棟のページでは、年代と基本情報を文化庁のデータベースに合わせ、市の記録は本文に併記した。2つの出入口と量水室については、両者の示す時期がほぼ重なる。
5件の配置
朝見浄水場は、JR別府駅の南西およそ1キロメートルの高台にある。文化庁の解説によると、配水池は浄水場の敷地の西端に位置し、その南北の側面に管理用の出入口が1棟ずつ立つ。2つの出入口はどちらも配水池から独立した鉄筋コンクリート造の小さな建屋で、建築面積はそれぞれ13平方メートルにすぎない。
集合井室も同じ構内に建つ。八角形の平面に丸い屋根を載せた建屋で、5件のなかでもっとも目を引く姿をしている。
量水室だけは、高台の浄水場からやや離れた北側の低地にある。地図の上で高台の配水池と低地の量水室を並べてみると、この水道が地形の高低差に支えられていたことが読み取れる。
5件はどれも実用の施設だが、ペディメント、柱頭の飾り、アーチ形の窓枠、石積みを思わせる目地など、洋風の細部をまとっている。文化庁の解説は、小さな建屋でも本格的な建築として扱っている点を繰り返し評価している。
見学案内(アクセス・見学会)
別府市朝見浄水場は、いまも市の水道を支える稼働中の施設で、所在地は別府市朝見二丁目24番5号である。市のウェブサイトには常時の見学受付の案内が見当たらず、構内の4件を間近に見られるのは、上下水道局が夏休みに開いてきた見学会などの機会に限られる。令和8年(2026年)は8月1日に大分県企業局と共同で「別府発電所と朝見浄水場親子見学会」が開かれ、主に県内の小中学生とその保護者を対象に、定員60名の抽選、参加費無料で行われた。
撮影の可否について、市の案内に記載はない。見学会でも係員の指示に従いたい。見学の可否や外から見える範囲は、朝見浄水場(電話0977-22-0527)か別府市上下水道局に問い合わせるとよい。
朝見浄水場へは、JR別府駅から歩いて約15分。車ではJR別府駅から約5分(約1キロメートル)、別府インターチェンジから約10分(約3.5キロメートル)、別府国際観光港から約10分(約3.5キロメートル)である。バスはJR別府駅東口から19番内成線に乗り、「上畑」で降りる。市の施設案内には駐車場ありと記されているが、見学会の案内では台数に限りがあるとして乗り合わせを呼びかけている。
参考文献
- 別府市朝見浄水場集合井室(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000316
- 別府市朝見浄水場配水池(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000317
- 別府市朝見浄水場配水池北出入口(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000318
- 別府市朝見浄水場配水池南出入口(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000319
- 別府市朝見浄水場量水室(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000320
- 別府市朝見浄水場集合井室(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/176536
- 別府市水道100年誌(別府市上下水道局、PDF)
- https://www.city.beppu.oita.jp/doc/seikatu/suido/s_jigyo/anniversary/kinensi.pdf
- 別府市水道100周年記念事業(別府市)
- https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/suido/s_jigyo/anniversary.html
- 第7回「夏休み朝見浄水場見学会」アンケート集計結果(別府市上下水道局、PDF)
- https://www.city.beppu.oita.jp/doc/seikatu/suido/s_jigyo/kengaku/07.pdf
- 夏休み朝見浄水場見学会(別府市)
- https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/suido/s_jigyo/kengaku.html
- 朝見浄水場(別府市 施設案内)
- https://www.city.beppu.oita.jp/sisetu/suidou_gesui/10kurasi_10-17asami.html
- 別府市の指定文化財(別府市)
- https://www.city.beppu.oita.jp/gakusyuu/bunkazai/bunkazai_shiteibunkazai.html
最終更新日: 2026.09.29
基本情報
| 名称 | 別府市朝見浄水場 |
|---|---|
| 所在地 | 大分県別府市朝見2-4130-1 |
| 所有者 | 別府市 |
| 指定 | 登録有形文化財 5件 |
| 座標 | 33.27037, 131.49228 |