遍照寺多宝塔とは
遍照寺多宝塔は、岡山県笠岡市笠岡中央町に建つ慶長11年(1606年)建立の桃山時代の多宝塔で、昭和50年(1975年)に重要文化財に指定された。
遍照寺は真言宗の寺院で、文化庁のデータベースでは「へんしょうじ」と読む。笠岡市の案内は「へんじょうじ」と表記しており、どちらの読みでも同じ寺を指す。寺は元弘年間(1331〜1334年)に現在の笠岡の地へ移されたと伝わる。
いま遍照寺多宝塔の周りに寺の伽藍はない。JR笠岡駅前の土地区画整理事業にともない、寺は1970年代に西の浜の埋立地へ移転したが、多宝塔と傍らのイチョウだけは元の場所に残された。塔の一帯は「いちょう公園」として整備され、駅前の市街地のなかに桃山時代の塔が1基だけ立つ、少し不思議な眺めになっている。
重要文化財としての価値―墨書と石碑が示す建立年
遍照寺多宝塔の建立年が慶長11年(1606年)と確定しているのは、二つの独立した証拠があるからだ。一つは初重の天井に残る墨書、もう一つは塔のそばに立つ石碑の刻銘である。この石碑は附(つけたり)として塔とあわせて重要文化財に指定されており、落慶の法要で法華経を読誦したことが刻まれている。
文化庁の解説は、遍照寺多宝塔を小型の塔としながらも、細部に桃山時代の特色がよく表れ、内部の彩色も建立当初のものがよく残っていると評価する。岡山県の資料によれば、県内にある多宝塔4基のうち最も古い。
構造は三間多宝塔で、屋根は本瓦葺。岡山県は高さを15.5メートル、柱間を3.94メートルとしている。
遍照寺多宝塔の見どころ
瓦で覆われた亀腹
多宝塔は、方形の初重の上に饅頭形の「亀腹(かめばら)」をのせ、その上に円形の上重と屋根を重ねる形式である。亀腹は白い漆喰で塗り固めるのが一般的だが、遍照寺多宝塔では本瓦で葺かれている。笠岡市によると、もとは漆喰仕上げだったものが明治時代の修理で改められたといわれる。初重の屋根の上に目をやると、瓦の曲面が亀腹を包んでいるのが見える。
絵師・釣雪の彩色
遍照寺多宝塔の内部は、天井・壁・柱の全面に極彩色の文様と絵画が描かれている。笠岡市は描き手を絵師の釣雪(ちょうせつ)と伝え、天井には蟠龍図(とぐろを巻く龍の図)がある。文化庁が「当初の彩色がよく残る」と評価しているのはこの部分である。
石碑と枝垂れいちょう
塔の傍らの石碑は、建立年を裏づける証拠そのものなので、塔とあわせて見ておきたい。すぐ隣には「枝垂れいちょう」と呼ばれる大きなイチョウがそびえる。遍照寺多宝塔の建立を記念して植えられたといわれ、推定樹齢は約400年、笠岡市観光協会によれば樹高は約25メートル。枝が垂れ下がる姿からの呼び名で、学術上の品種名ではない。晩秋に葉が黄色く色づくと、塔の本瓦の屋根との対比がいっそう際立つ。
遍照寺多宝塔の見学方法
遍照寺多宝塔はJR山陽本線の笠岡駅のすぐ近くにあり、駅から歩いて数分で着く。笠岡市観光協会は徒歩2分、岡山県の資料は徒歩5分と案内している。車の場合は山陽自動車道の笠岡インターチェンジから約15分。
岡山県の資料では公開状況を「外観のみ」としている。遍照寺多宝塔の周囲はいちょう公園として整備されているため、外観は公園から自由に見学できる。内部の彩色は通常は見られないので、写真や解説で補うことになる。公園内にあるため、拝観料はかからない。
撮影についての制限を示した案内は見当たらず、公園から外観を撮影できる。なお、遍照寺の本堂などは西の浜の移転先にあり、多宝塔とは別の場所である。
Q&A
- 遍照寺多宝塔はいつ建てられたのですか?
- 慶長11年(1606年)です。初重天井の墨書と、塔のそばに立つ石碑の刻銘の両方から建立年が確かめられています。
- 遍照寺多宝塔はいつ重要文化財に指定されましたか?
- 昭和50年(1975年)6月23日に重要文化財に指定されました。附として石碑1基もあわせて指定されています。
- 遍照寺多宝塔の周りにお寺がないのはなぜですか?
- 1970年代の笠岡駅前の土地区画整理事業で、遍照寺は西の浜へ移転しました。多宝塔とイチョウだけが元の場所に残され、周囲はいちょう公園になっています。
- 遍照寺多宝塔の内部は見学できますか?
- 岡山県の資料では公開状況は「外観のみ」です。内部の極彩色は通常は見られませんが、外観はいちょう公園から自由に見学できます。
- 遍照寺多宝塔へは笠岡駅から歩いて行けますか?
- 歩いて行けます。JR笠岡駅から徒歩で数分です(笠岡市観光協会は2分、岡山県の資料は5分と案内)。
基本情報
| 名称 | 遍照寺多宝塔(へんしょうじたほうとう)附 石碑1基 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県笠岡市笠岡中央町16番地の2 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 昭和50年(1975年) |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 三間多宝塔、高さ15.5メートル、柱間3.94メートル(岡山県の資料による) |
| 所有者 | 遍照寺 |
| 公開状況 | 外観のみ(いちょう公園から見学可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)遍照寺多宝塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3027
- 遍照寺多宝塔|文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/123834
- 遍照寺多宝塔(岡山県の文化財解説シート)
- https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/260711.pdf
- 国指定 重要文化財(建造物) 遍照寺多宝塔附石碑1基|笠岡市ホームページ
- https://www.city.kasaoka.okayama.jp/soshiki/39/51962.html
- 遍照寺の枝垂れいちょう|笠岡市ホームページ
- https://www.city.kasaoka.okayama.jp/soshiki/39/2480.html
- 遍照寺多宝塔|笠岡観光WEB(笠岡市観光協会)
- https://www.kasaoka-kankou.jp/spot/294/
最終更新日: 2026.09.25