新井家住宅とは

新井家住宅(あらいけじゅうたく)は、大阪府泉佐野市中庄にある昭和7年(1932年)着工の和風邸宅で、玄関・座敷、奥座敷、主屋、蔵、門、塀の6件が平成11年(1999年)7月8日に登録有形文化財となった。登録番号は27-0066から27-0071まで連番で、6件とも登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

施主は大阪・船場で証券業などを営んだ新井末吉(1864年から1936年)。生まれ故郷の北中通村(現在の泉佐野市中庄)に、自らの住まいと来客をもてなす迎賓館を兼ねて建てた。所有者が公開している沿革によれば、着工から落成まではおよそ1年半かかっている。

敷地は地元で天神山と呼ばれる小高い丘の上にあり、広さは約7,500平方メートル。南東には七の池というため池が広がり、西は大阪湾の方向に開ける。現在の所有者は新井家の4代目当主で、建物は住まいとしてではなく、見学や貸しスペースとして使われている。

新井末吉と屋敷の来歴

所有者の沿革によると、新井家は泉州日根郡の旧家である新川家から分かれた家で、姓はもともと「にいい」と読んだ。末吉は16歳のころ大阪へ出て、雑貨商や玩具の製造販売など多くの商いを手がけたが、3度の火事で資産を失うなど明治期は苦労が続いた。事業が軌道に乗ったのは大正期に入って始めた電話売買業からで、のちに新井商事、新井証券(現在の新井株式会社)を興している。電話口で「にいい」が聞き取りにくいことから、この時期に読みを「あらい」に改めたと伝わる。

新井家住宅の建築を始めたとき、末吉は68歳前後だった。大阪の商人たちが集う社交の場にすることも意図していたとされ、昭和10年(1935年)には元首相の斎藤実がここを訪れた記録写真が残る。末吉は昭和11年(1936年)に亡くなり、屋敷は長男の健治が継いだ。

昭和20年(1945年)、近くに陸軍佐野飛行場が置かれたのに伴い、新井家住宅には大隊本部が設けられた。戦時中には屋根瓦が3度ほど機銃掃射を受けたという。戦後も一家の住まいとして守られ、平成11年(1999年)に6件がそろって登録された。

平成26年(2014年)には関西大学の西澤英和教授(当時)の監修で建築構造調査が行われ、耐震を含む補強工事が続いた。平成30年(2018年)の台風21号では屋根瓦などに大きな被害を受け、存続が危ぶまれたが、令和5年(2023年)に補修と補強を終えている。このとき主屋の内部にキッチンスタジオが設けられ、奥座敷・座敷とあわせて貸しスペースとしての運用が始まった。

敷地の構成と歩く順序

新井家住宅は、和風庭園を中心に3棟の建物がコの字形に囲む構成をとる。文化庁の解説は、中央を玄関・座敷、左翼を奥座敷、右翼を主屋としている。座敷と奥座敷はともに畳廊下と縁を庭側に回し、室内から庭を広く見渡せるようにつくられた。主屋は家族の住まいと台所を受け持つ棟で、その南側には大きな土蔵が建ち、主屋と廊下でつながる。

屋敷の西辺は土塀で仕切られ、その中ほどに門が開く。門は敷地の南西部、やや曲がった道に面しており、道路から少し奥へ引き込んだ位置にある。門を入ると松を主木とした庭が正面に広がり、その先に玄関が見える。庭には燈籠が20基あまり、大きな庭石が配され、桜、百日紅、つつじが季節ごとに色を添える。

  • 玄関・座敷(昭和7年、木造平屋建、本瓦葺、建築面積181平方メートル/登録番号 27-0066)
  • 奥座敷(昭和7年、木造平屋建、瓦葺、建築面積120平方メートル/登録番号 27-0067)
  • 主屋(昭和7年、木造平屋建、瓦葺、建築面積329平方メートル/登録番号 27-0068)
  • 蔵(昭和7年、2階建の土蔵、本瓦葺、建築面積126平方メートル/登録番号 27-0069)
  • 門(昭和7年、木造薬医門、本瓦葺、建築面積32平方メートル/登録番号 27-0070)
  • 塀(昭和7年、土塀、瓦葺、延長130メートル/登録番号 27-0071)

見学の順序としては、道から門と土塀の外観を見て、門をくぐって庭に入り、中央の玄関から座敷、左手の奥座敷へ進むのが自然である。右手の主屋と蔵は住まいの側にあたる。塀の長さについては、文化庁のデータベースが延長130メートル、所有者の案内が全長約100メートルとしており、数え方の違いとみられる。

見学とアクセス

新井家住宅は常時公開の施設ではない。所有者の公式サイトによれば、建物の見学は10名以上の団体で、祝日を除く月曜から金曜に受け付けている。文化財維持協力金として一般は1人500円、学生は1人300円が必要で、所要は1時間から2時間ほど、スタッフが簡単な説明をする。申し込みは公式サイトの問い合わせフォームから、名前、連絡先、希望日時、人数を送る(2026年9月27日確認)。

個人で訪れたい場合は、毎年秋に設けられる無料の一般公開日がよい。令和6年(2024年)は11月23日の午前10時から午後4時30分まで開かれ、申し込みは不要だった。開催日はおよそ1か月前に公式サイトのお知らせ欄に掲載される。なお、大阪府建築士会などが運営する大阪文化財ナビは「見学不可」と記載しているが、令和4年(2022年)3月の更新で、現在の運用とは異なる。

奥座敷と座敷、主屋のキッチンスタジオは、審査のある会員登録を経て貸しスペースとして借りることもできる。撮影会や講演会、ワークショップでの利用が想定されている一方、大量の飲酒を伴う宴会やバーベキューには貸していない。

最寄り駅は南海本線の泉佐野駅(東出口)とJR阪和線の熊取駅(東口)で、新井家住宅までは歩いて20分から25分、タクシーなら6分から7分ほどかかる。関西国際空港からはタクシーでおよそ20分から25分。車の場合は国道26号の神山下交差点から南東へ入り、普通車10台ほどの駐車場がある。一般公開日は駐車場が足りなくなるため、車での来場は控えるよう案内されている。

参考文献

国指定文化財等データベース 新井家住宅玄関・座敷(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001200
国指定文化財等データベース 新井家住宅奥座敷(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001201
国指定文化財等データベース 新井家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001202
国指定文化財等データベース 新井家住宅塀(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001205
新井家住宅について(登録有形文化財 泉佐野 新井家住宅)
https://arai-residence.com/about/
歴史(登録有形文化財 泉佐野 新井家住宅)
https://arai-residence.com/history/
レンタル・見学について(登録有形文化財 泉佐野 新井家住宅)
https://arai-residence.com/rental/
アクセス(登録有形文化財 泉佐野 新井家住宅)
https://arai-residence.com/access/
新井家住宅(泉佐野市デジタルアーカイブ)
https://adeac.jp/izumisano-city/catalog/b000070
新井家住宅(大阪文化財ナビ)
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/%E6%96%B0%E4%BA%95%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称新井家住宅
所在地大阪府泉佐野市中庄1380
所有者個人
指定登録有形文化財 6件
座標34.40892, 135.32913