大正前期、主屋の西に増築された座敷棟

岩根家住宅奥座敷は、大阪府富田林市五軒家二丁目1525-1にある木造平屋建の座敷棟で、大正前期(1912年から1925年)の建築として2008年(平成20年)4月18日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

建築面積は88平方メートル。主屋の西側に接続し、屋根は入母屋造と切妻造を組み合わせた桟瓦葺とする。内部は15畳の座敷と10畳の次の間からなる2室の続き座敷で、その南面と北面にそれぞれ廊下を通す。

岩根家は五軒家を代表する旧家である。明治初期から昭和初期まで酒造業で栄え、15代当主の岩根猪五郎は村長を務めた。敷地はおよそ1000坪。奥座敷は、家業が伸びていた時期の仕事にあたる。

「登録」と「指定」を取り違えない

本件は登録有形文化財であって、重要文化財でも国宝でもない。1996年(平成8年)の文化財保護法改正で設けられた登録制度は、届出を基本とする緩やかな保護の枠組みで、近代以降の建造物を幅広く救うことを目的として運用されてきた。指定制度が対象を厳選するのに対し、登録制度は網を広く張る。制度上の性格がそもそも異なるので、記述の際は混同しないほうがよい。

奥座敷の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録番号は27-0463、第59回登録で、告示は2008年5月7日付である。

岩根家住宅の登録は二段階に分かれている。2008年に主屋・奥座敷・酒蔵の3棟が登録され、2015年(平成27年)11月17日に茶室・門屋・南蔵・西蔵・籠塀の5棟が追加された。敷地内には現在8棟の登録建造物が並ぶ。

座敷飾りと欄間彫刻

文化庁の解説は、15畳敷の座敷が良質なつくりの座敷飾りを備えると記す。床と棚を配した構えで、内庭に向かって開く。天井は高く取られ、10畳の次の間と続けて使えば相応の人数を通せる規模になる。市の解説はこの空間を「おおらかな書院座敷」と表現している。

欄間彫刻をはじめ造作は丁寧で、近代和風建築としての水準は高い。

注目したいのは、この増築が主屋の姿まで変えている点だ。奥座敷が敷設された時期に主屋の2階が改修され、桟瓦葺の入母屋造となった。主屋は江戸後期(1830年から1867年頃)の建築で、木造2階建、建築面積180平方メートル。東半は土間を基本として大型の竈を残し、西半は5間取の床上部とし、南側に続き座敷を配する。当初は広い土間をもつ整形4間取であったとみられている。

近世の大型農家として建てられた住まいに、大正の書院座敷が接続する。二つの時代の建築が一つの屋敷の中で役割を分け合う構図は、この住宅の面白さの中心にある。奥座敷が接客の場を引き受けたことで、主屋は生活の場としての性格を保ったまま外観だけが整えられた、とも読める。

こうした建築の変遷は、大阪芸術大学建築学科教授の山形政昭による調査で明らかにされ、2008年の登録の根拠となった。

見学の可否とアクセス

岩根家住宅は現在も個人の住まいであり、一般公開されていない。富田林市も公式サイトに公開していない旨を明記している。拝観時間や拝観料の設定はなく、内部の見学も撮影もできない。15畳の座敷も、床棚も、欄間彫刻も、訪問者が実見できる対象ではない。

外から見えるのは屋敷の縁だけである。敷地の南側は街道に接し、石垣の上部には瓦葺の板塀(籠塀)がめぐらされている。この籠塀と門屋、南蔵が街路側の表構えをつくる。見るとしても公道からにとどめ、私有地には立ち入らないこと。

公共交通で近づくなら、南海高野線の金剛駅か近鉄長野線の富田林駅が起点となる。金剛駅からは直線でおよそ2キロ、徒歩なら30分前後を見ておきたい。両駅からは藤沢台方面へ路線バスの便がある。近代和風建築や町家を実際に歩いて見たい場合は、北へ数キロの富田林寺内町(重要伝統的建造物群保存地区)を組み合わせると訪問の密度が上がる。

Q&A

Q岩根家住宅奥座敷は見学できますか。内部は公開されていますか。
A見学できません。岩根家住宅は現在も個人の住まいで、富田林市も一般公開していないと明記しています。拝観時間・拝観料の設定はなく、内部見学も内部撮影もできません。街路から敷地の外周が見える範囲にとどまります。
Q岩根家住宅奥座敷はいつ建てられ、いつ文化財になりましたか。
A建築年代は大正前期で、文化庁は1912年から1925年の範囲で示しています。登録有形文化財(建造物)への登録は2008年(平成20年)4月18日付、登録番号27-0463、第59回登録です。告示は同年5月7日でした。
Q岩根家住宅奥座敷は重要文化財ですか。登録有形文化財との違いは何ですか。
A重要文化財ではなく、登録有形文化財です。登録制度は1996年の文化財保護法改正で創設された緩やかな保護の枠組みで、届出を基本とします。国宝・重要文化財の指定制度とは選定の考え方も規制の強さも異なります。
Q岩根家住宅奥座敷の規模と構造を教えてください。
A員数は1棟、木造平屋建、瓦葺で、建築面積は88平方メートルです。屋根は入母屋造および切妻造の桟瓦葺。内部は15畳の座敷と10畳の次の間による2室の続き座敷で、南北両面に廊下を配します。
Q岩根家住宅には奥座敷のほかにどんな登録建造物がありますか。
A主屋と酒蔵が2008年に同時登録され、2015年11月17日に茶室・門屋・南蔵・西蔵・籠塀の5棟が加わりました。合計8棟です。なかでも茶室は直径・高さとも約2メートルの酒樽を転用した小規模なもので、蔵元らしい造作として知られます。

基本情報

名称岩根家住宅奥座敷(いわねけじゅうたくおくざしき)
所在地大阪府富田林市五軒家二丁目1525-1
指定区分登録有形文化財(建造物)※「指定」ではなく「登録」。登録番号27-0463、第59回登録
指定年2008年(平成20年)4月18日登録/告示同年5月7日
員数1棟
寸法建築面積88平方メートル/木造平屋建、瓦葺
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開。一般公開されておらず、内部見学・内部撮影ともに不可
時代大正前期(1912年から1925年)
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 岩根家住宅奥座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007088
文化遺産オンライン — 岩根家住宅奥座敷
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/191810
富田林市 — 岩根家住宅主屋、奥座敷、酒蔵
https://www.city.tondabayashi.lg.jp/site/bunkazai/2496.html
富田林市 — 登録文化財 岩根家住宅
https://www.city.tondabayashi.lg.jp/site/bunkazai/2558.html
文化遺産オンライン — 岩根家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/198079
文化庁 — 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html

最終更新日: 2026.08.13