古建築のようでいて、大正生まれの楼閣

箕面駅から箕面川沿いの滝道をたどると、朱塗りの瑞雲橋を過ぎたあたりで、対岸の高い石垣の上に木造の楼閣が見えてくる。切妻造の瓦屋根と、北端に置かれた宝形造の塔屋。一見すると数百年を経た古建築のようだが、この瀧安寺鳳凰閣が竣工したのは大正6年(1917年)である。設計したのは、当時の日本でもっとも先進的な建築家の一人だった。

鳳凰閣という名は、宇治の平等院鳳凰堂に由来する。とはいえ平安時代の鳳凰堂をそのまま写したわけではない。左右に翼を広げた翼廊の趣を取り込み、箕面川の渓流の上に据えることで、建物と谷の景観がひとつの構図として立ち上がるように設計されている。地元では「箕面の鳳凰堂」とも呼ばれてきた。

設計者と、登録された理由

設計を手がけたのは武田五一(1872〜1938)。「関西建築界の父」と称される建築家で、京都帝国大学に建築学科を創設して初代教授を務め、多くの後進を育てた。ヨーロッパ留学でアール・ヌーヴォーやゼツェションといった新しい意匠に触れ、それらを日本に紹介した人物でもある。アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトと親交を結び、その作風を日本に知らしめた。さらに法隆寺や平等院といった古建築の修理にも関わっており、鳳凰閣が平等院に寄せる意匠には、その経歴と響き合うものがある。

鳳凰閣は登録有形文化財である。これは平成8年(1996年)に設けられた制度で、国宝や重要文化財という従来の指定とは別に、保存が望まれる建造物を緩やかに保護する仕組みだ。とくに近代以降の建築を対象としている。瀧安寺鳳凰閣は平成12年(2000年)9月26日に登録され、登録番号は27-0099。「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準による。周囲から際立つのではなく、その場の景観に溶け込むように構想された建物にふさわしい基準といえる。

見どころ

細部に目をとめたい。屋根は大部分を桟瓦で葺き、一部に銅板を用いている。北端の塔屋には宝形造の屋根が架かるが、これは本来、聖なる像を祀る堂宇に多く見られる形式である。鳳凰閣の場合もその通りで、楼上には修験道の開祖とされ、瀧安寺の創建にも関わると伝わる役行者(役小角)の御影が安置されている。建物全体は木造平屋建で、建築面積はおよそ130平方メートルになる。

内部の公開は特別拝観の期間に限られ、紅葉の季節がもっとも確実だ。公開時に印象に残るのは、室内そのものよりむしろ窓の外に広がる眺めである。鳳凰閣からは箕面川の渓谷が一望でき、眼下には箕面山と龍をかたどった枯山水が配されている。隣接する客殿は鳳凰閣とは別の、より古い建物で、およそ百畳の大広間に襖絵や皇室の来訪に備えた玉座が残る。内部は撮影が可能だが、三脚・自撮り棒・飲食・ペットの持ち込みは禁じられている。

周辺の楽しみ方

鳳凰閣は明治の森箕面国定公園の一角、箕面公園のなかにある。阪急箕面駅から箕面大滝へと続く滝道の途中、瑞雲橋の近くで対岸に望める。落差33メートルの箕面大滝は「日本の滝百選」に数えられ、この渓谷一帯は大阪を代表する紅葉の名所として知られる。見頃はおおむね11月中旬から12月上旬。駅から滝までの舗装路は約2.8キロメートル、片道40〜50分ほどで、鳳凰閣はその下流側の区間で目に入る。

道沿いでは名物のもみじの天ぷらが売られている。もみじの葉を甘い衣で揚げたもので、温かいうちに口にしたい。周囲の山にはニホンザルが生息し、ときおり谷に下りてくることがあるため、姿を見かけたら食べ物はしまっておきたい。

Q&A

Q鳳凰閣の内部は見学できますか。
A内部の公開は特別拝観の期間に限られ、紅葉シーズンがもっとも確実です。訪問前に瀧安寺の公式サイトでご確認ください。外観は一年を通じて滝道から眺められます。
Q大阪市内からの行き方は。
A阪急電鉄で箕面駅まで向かいます(梅田から石橋阪大前で乗り換え、約30分)。駅から箕面川沿いの滝道を滝の方向へ歩くと、瑞雲橋の近く、対岸に鳳凰閣が建ちます。駅から徒歩15分ほどです。
Q平等院の鳳凰堂と同じ建物ですか。
A別の建物です。宇治の鳳凰堂は天喜元年(1053年)の建立で、国宝に指定されています。瀧安寺鳳凰閣は大正6年(1917年)の建築で、鳳凰堂の趣を取り入れて設計されたものです。
Q近くにほかの見どころはありますか。
A瀧安寺の本堂である弁天堂、文化6年(1809年)に京都御所から移築された山門、そして箕面大滝が同じ滝道沿いにあります。瀧安寺は日本の宝くじの起源とされる「富くじ」発祥の地としても知られています。
Q訪れるのに適した季節は。
A紅葉と特別拝観の両方が楽しめる秋がおすすめです。新緑の春から初夏にかけては人出も落ち着き、静かに歩けます。

基本データ

名称瀧安寺鳳凰閣(りゅうあんじほうおうかく)
所在地大阪府箕面市箕面公園内
所有者宗教法人瀧安寺
建立大正6年(1917年)
設計・施工設計:武田五一/施工:高橋組
構造木造平屋建、瓦一部銅板葺、切妻造に宝形造の塔屋付、建築面積約130平方メートル
指定区分登録有形文化財(平成12年〔2000年〕9月26日登録、登録番号27-0099)
員数1棟
アクセス阪急箕面駅から滝道を箕面大滝方面へ徒歩約15分
公開状況外観は通年で滝道から見学可。内部は特別拝観期間(主に秋)に公開

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001834
文化遺産オンライン(国立文化財機構)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/114714
瀧安寺 公式サイト(特別拝観)
https://www.ryuanji.org/haikan
箕面公園 公式サイト(アクセス)
https://www.mino-park.jp/access/

最終更新日: 2026.06.20