寺田家住宅(貝塚市)の概要
寺田家住宅は、大阪府貝塚市新町にある昭和11年(1936年)を中心に建てられた屋敷で、主屋・新宅・内蔵・外蔵・納屋・本門・石垣塀の7棟が平成23年(2011年)7月25日に登録有形文化財となった。
屋敷の西辺は府道204号堺阪南線、すなわち旧紀州街道に面している。通りを歩くと、まず花崗岩を積んだ石垣塀が56メートルにわたって続き、その南端に急勾配の屋根をもつ本門が構える。塀の内側に主屋以下の建物が並ぶが、外からは屋根と樹木の頭しか見えない。この「見えなさ」こそ、昭和初期の実業家が街道沿いに構えた屋敷の姿である。
寺田家は「寺楠」の屋号で呼ばれた家で、建物は和風と洋風を一棟のなかで組み合わせている。主屋の玄関まわりと応接室はスパニッシュ様式、座敷は数寄屋風という具合である。7棟が一度に登録されたのは、個々の建物の質だけでなく、塀と門から蔵・納屋までがひと続きの屋敷構えとして残っていることが評価されたためとみられる。
「寺楠」の分家から屋敷の完成まで
寺田家は、岸和田を中心に築かれた寺田財閥の一族である。楠治が大正初年に分家してこの家を興し、名前の一字から「寺楠」と呼ばれた。楠治は分家にともない、屋敷地に近い麻生郷村海塚で鉄工所を営んでいる。
現在の屋敷地を求めたのは昭和9年(1934年)頃で、新宅を除く建造物は昭和11年(1936年)に建てられた。分家から20年あまりを経た時期にあたる。
7棟のうち2棟は、この年代からずれる。外蔵は他所から移された建物で、入口の庇を支える部分の彫刻から、当初の建築年代は幕末から明治と考えられている。新宅は戦後の昭和33年(1958年)の建築で、貝塚市内で最も古い鉄筋コンクリート造の建物である。ひとつの屋敷のなかに幕末から昭和30年代までの建築が同居している。
寺田家住宅の屋敷の構成
敷地は街道に面した西辺から東へ広がる。順に見ていくと、建物どうしの関係がつかみやすい。
- 西辺の街路沿いに石垣塀。北寄りに半円アーチの通用門を開き、南端の石段上に本門が建つ
- 敷地北寄りに主屋。建築面積213平方メートル、屋根は寄棟造や入母屋造を組み合わせる
- 主屋の東面に渡り廊下でつながる内蔵。そのさらに東に、主屋を向いて外蔵が建つ
- 主屋背面の勝手口の北側に納屋。地形の高低差を利用し、上の階が主屋へ通じる1階、下の階が地下1階となる
- 主屋と中庭を挟んで新宅。東半を客室部、西半を居室部とし、南庭にテラスを設ける
蔵が2棟あるのは、用途を分けていたためである。母屋に接続する内蔵は日常的に出し入れするもの、独立して建つ外蔵はそれ以外という分担が一般的で、寺田家住宅でも内蔵は渡り廊下で主屋とつながる一方、外蔵は庭を隔てて建っている。
登録されている7棟
寺田家住宅の7棟は第70回の登録で、登録番号は27-0542から27-0548までの連番である。内訳は次のとおり。
- 主屋(27-0542)昭和11年。木造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積213平方メートル
- 新宅(27-0543)昭和33年。鉄筋コンクリート造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積139平方メートル
- 内蔵(27-0544)昭和11年。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積19平方メートル
- 外蔵(27-0545)昭和11年。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積24平方メートル
- 納屋(27-0546)昭和11年。木造平屋地下1階建、瓦葺、建築面積20平方メートル
- 本門(27-0547)昭和11年。木造、瓦葺、間口3.7メートル
- 石垣塀(27-0548)昭和11年。石造、総延長56メートル
登録基準は2種類に分かれる。主屋・新宅・本門が「造形の規範となっているもの」、内蔵・外蔵・納屋・石垣塀が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。前者は建物そのもののつくりを、後者は街路や屋敷景観への寄与を評価した区分といえる。
寺田家住宅の見学とアクセス
寺田家住宅は個人の住宅で、内部は公開されていない。見学は通りからの外観に限られる。
見どころは西辺である。石垣塀と本門が府道204号堺阪南線に面しており、歩道から真正面に見ることができる。塀の南北の折れ曲がりに沿って歩けば、瘤出し仕上げの花崗岩の積み方や、本門の軒先の納まりまで確認できる。屋敷の内側に入ることはできないので、門扉の隙間から中をのぞいたり、敷地に立ち入ったりしないでほしい。
最寄り駅は南海本線・水間鉄道の貝塚駅で、西へ徒歩5分ほど。駅前から紀州街道筋に出て南下する経路が分かりやすい。周辺は貝塚寺内町の町並みが残る一帯で、市が案内する寺内町の散策コースからも近い。来訪者向けの駐車場は設けられていないため、公共交通機関の利用が確実である。
撮影は公道からであれば差し支えないが、居住者の生活空間であることに配慮したい。地域のまちづくり行事にあわせて屋敷が公開された例もある。公開の予定については、貝塚市教育部文化財保存活用室(電話072-433-7126)で確認できる。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 寺田家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008731
- 国指定文化財等データベース 寺田家住宅新宅(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008732
- 国指定文化財等データベース 寺田家住宅石垣塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008737
- 寺田家住宅(貝塚市)
- https://www.city.kaizuka.lg.jp/bunkazai/bunkazaidata/bunkazai/kuni_sitei/tourokubunkazai/teradake.html
- 寺内町エリア(貝塚市)
- https://www.city.kaizuka.lg.jp/kanko/onedaytrip/jinaicho.html
最終更新日: 2026.09.23
基本情報
| 名称 | 寺田家住宅(貝塚市) |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府貝塚市新町 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 7件 |
| 座標 | 34.44485, 135.35366 |