二代目として建った塔
通天閣は、大阪市浪速区恵美須東にある展望塔で、昭和31年(1956年)に竣工し、平成19年(2007年)5月15日に国の登録有形文化財に登録された。同じ名を持つ塔としては二代目にあたる。
初代が建ったのは明治45年(1912年)。明治36年(1903年)の第5回内国勧業博覧会の跡地に、遊園地ルナパークとともに現れた。凱旋門の上にエッフェル塔の上半分を載せたような姿で、高さは約75メートル。当時としては群を抜く高さであり、園内と塔とは赤いロープウェイで結ばれていた。命名者は明治期の儒学者・藤沢南岳で、「天に通じる高い建物」の意を込めたとされる。
昭和18年(1943年)、足元の映画館から出た火災を受けて塔は解体される。鉄材は戦時下の資材として供出されたと伝わる。新世界は13年のあいだ、目印を失った。
再建を実現させたのは地元の資金である。昭和29年(1954年)に新世界町連合会の役員らが創立事務所を置き、翌30年に住民の出資で通天閣観光株式会社を設立、昭和31年10月に二代目が開業した。設計を託されたのは構造家の内藤多仲。名古屋テレビ塔を完成させたばかりで、二年後には東京タワーを手がけることになる技術者だった。内藤が設計した数多の塔のうち、電波塔としての機能を持たず、登ることだけを目的とした塔はこれひとつである。
登録の理由と、塔身が語る構造
文化庁は通天閣を第54回登録の登録番号27-0415として登録した。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。告示は平成19年5月29日である。員数は1基、種別は文化福祉/その他工作物に分類されている。
データベースの解説は簡潔で、技術的だ。脚部を鉄骨鉄筋コンクリート造とし、塔の東側に円筒形の補助塔を添える。塔身は四角形から八角形へと平面形状を変えながら立ち上がり、頂部に独特な形の展望台を戴く。そして四周には広告用の施設が付く。
最後の一点は、字面より重い意味を持つ。日本の保護建造物の多くは、変わらなかったことを理由に評価される。通天閣の場合、評価の一部を担うのは商業的な外皮そのものだ。1950年代から輪郭の一部であり続けてきた広告照明は、多くの人が思い浮かべる大阪の像と分かちがたい。
登録後も塔は手を加えられ続けている。緩やかな保護を前提とする登録制度だからこそ可能な運用でもある。平成27年(2015年)には営業を続けたまま免震改修が施され、あわせて初代通天閣に描かれていた天井画が復刻された。現在は1階で見ることができる。
塔身の形状変化についても触れておきたい。基部の四角形が上へ行くほど絞られ、八角形に転じる。頭部の展望台が大きく張り出すため、遠景では頭でっかちなシルエットになる。電波塔なら不要な造形であり、展望塔として設計されたことの帰結でもある。
高さの表記には注意が必要である。文化財登録原簿は103メートルの鉄塔と記す。これは登録された平成19年時点で正しい数値で、塔本体が100メートル、避雷針が3メートルだった。その避雷針が平成28年(2016年)に8メートルのものへ更新され、以後、運営者は108メートルと案内している。どちらの数字も、それぞれの時点では正確である。
登り方と見どころ
主たる展望台は5階、地上87.5メートルの「黄金の展望台」。大阪平野から港湾部まで360度が開け、東には生駒の稜線、晴れた日には淡路島や和歌山方面まで視界が届く。中央に座すのがビリケンである。明治45年にルナパーク内へ祀られた初代は、大正期の閉園とともに行方が分からなくなった。昭和54年(1979年)に復元された二代目は、32年間なで続けられて足裏が4センチほど窪み、平成24年(2012年)の展望台改装に合わせて現在のクスノキ製の三代目に代わった。4階は照明演出を主体とした「光の展望台」。
その上に、屋外の展望空間がある。特別屋外展望台「天望パラダイス」は地上94.5メートル、直径8.5メートルの回廊で、視界を遮るものがない。ここに接続する跳ね出し展望台「TIP THE TSUTENKAKU」は地上92.5メートル、長さ5.4メートル、幅1.5メートルで、先端12平方メートルがシースルーフロアとなっている。いずれも雨天・強風・濃霧では予告なく閉鎖され、階段での移動を伴うため、車椅子利用者や足元に不安のある人の入場は控えるよう案内されている。
近年に加わった二つの設備は、上ではなく下へ向かう。令和4年(2022年)に開業したタワースライダーは、エレベーター塔の外周に取り付けた全長60メートルのチューブ型滑り台で、3階の地上22メートルから斜度約30度で1回転半し、地下1階の地上マイナス4.5メートルへ約10秒で降りる。「Dive&Walk」は約14メートル下の3階展望台屋上へ飛び降りる体験型設備。どちらも展望料金とは別料金で、身長・体重・年齢の制限がある。
実用情報を挙げておく。2026年時点で、一般展望台は9時から21時45分(最終入場21時15分)、特別屋外展望台も同時間で最終入場は21時35分。入場料は大人(15歳以上)1,500円、子ども(5歳から14歳)800円。特別屋外展望台は一般展望台とのセット券のみの扱いで、追加料金が必要になる。入場は時間予約制へ移行しており、事前のオンライン購入が待ち時間を避ける近道となる。夕方以降は完売することがある。営業時間は2026年3月、料金は同年4月に改定されているため、訪問前に公式サイトで確認してほしい。
地下1階の「わくわくランド」は入場無料で、チケットなしで立ち寄れる。撮影は展望台内で可能だが、三脚・一脚の使用は館内全域で認められていない。
アクセスはOsaka Metro堺筋線の恵美須町駅3号出口から徒歩3〜4分。御堂筋線・堺筋線の動物園前駅5号出口からは約6分、JR新今宮駅からも同程度である。日没後は通天閣本通商店会の側から眺める角度が地元で勧められている。月ごとに色が変わるライトアップが正面に見える。
Q&A
- 通天閣の高さは何メートルですか。資料によって数字が違うのはなぜですか。
- 塔本体は100メートルです。文化財登録原簿は103メートルと記載しますが、これは登録時の平成19年(2007年)に避雷針が3メートルだったことによります。平成28年(2016年)に避雷針が8メートルのものへ更新されたため、現在は108メートルと案内されています。展望台は地上87.5メートルと94.5メートルの位置にあります。
- 通天閣の営業時間と入場料を教えてください。
- 一般展望台は9時から21時45分(最終入場21時15分)、特別屋外展望台も同じ時間で最終入場は21時35分です。入場料は大人(15歳以上)1,500円、子ども(5歳から14歳)800円。特別屋外展望台は一般展望台とのセット券のみとなります。営業時間は2026年3月に、料金は同年4月に改定されているため、公式サイトでの確認をお勧めします。
- 通天閣のチケットは事前予約が必要ですか。
- 入場時間予約制となっているため、事前のオンライン購入が推奨されています。大阪周遊パスなどの各種パスを利用する場合は、当日現地のチケットセンターで入場時間を予約します。夕方以降は完売する場合があるので、夕景や夜景を狙うなら時間に余裕を持って向かってください。
- 昭和31年建設の通天閣が、なぜ登録有形文化財なのですか。
- 登録制度は、国宝や重要文化財の指定制度とは別に、景観を形づくる比較的新しい建造物を幅広く守るために平成8年(1996年)に設けられた枠組みです。許可制ではなく届出制をとり、使い続けながら保護することを前提とします。通天閣は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として、登録番号27-0415で登録されました。
- 通天閣の展望台で写真撮影はできますか。三脚は使えますか。
- 手持ちでの撮影は展望台内で可能です。三脚や一脚を使用した撮影、および特定の場所を占拠する行為は館内全域で禁止されています。特別屋外展望台では安全上の理由から手荷物の持ち込みが制限される場合もあります。
- 通天閣への行き方と最寄り駅を教えてください。
- Osaka Metro堺筋線の恵美須町駅3号出口から徒歩3〜4分です。御堂筋線・堺筋線の動物園前駅5号出口からは約6分、JR新今宮駅からも同程度の距離になります。所在地は大阪市浪速区恵美須東1-18-6、新世界の中心部です。
基本情報
| 名称 | 通天閣(つうてんかく) |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市浪速区恵美須東1-18-6 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 27-0415 |
| 指定年 | 平成19年(2007年)5月15日登録、同年5月29日告示(第54回登録) |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 登録原簿は高さ103メートルの鉄塔と記載(塔本体100メートル。2016年の避雷針更新後は108メートルと案内)/脚部は鉄骨鉄筋コンクリート造 |
| 所有者 | 通天閣株式会社(登録原簿の記載)/運営は通天閣観光株式会社 |
| 公開状況 | 年中公開。9時〜21時45分(一般展望台の最終入場21時15分)。大人1,500円、子ども(5〜14歳)800円。入場時間予約制 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「通天閣」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005702
- 文化遺産オンライン「通天閣」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/190430
- 通天閣公式サイト「営業案内」(営業時間・料金)
- https://www.tsutenkaku.co.jp/annai/index.html
- 通天閣公式サイト「天望パラダイス/TIP THE TSUTENKAKU」
- https://www.tsutenkaku.co.jp/tour/tenbo-paradise.html
- 通天閣公式サイト「資料館」(初代通天閣と再建の経緯)
- https://www.tsutenkaku.co.jp/other/shiryo.html
- 大阪市浪速区「区内の名所・旧跡 通天閣」
- https://www.city.osaka.lg.jp/naniwa/page/0000000985.html
最終更新日: 2026.08.20