それ自体が文化財として登録された塀

池田の小林一三の山荘を訪れる多くの人は、次に挙げるこの要素を意識せずに通り過ぎるだろう。それこそが、この塀の本質の一部でもある。総延長およそ47メートルの鉄筋コンクリート造の塀は、北庭を囲み、敷地北辺の道路に面して延びる。単なる境界の塀が国の登録に独自の項目を持つという事実は、この敷地全体がいかに周到に設計されたかを、雄弁に語る。

塀は、山荘そのものの延長として始まる。旧本館玄関の壁面を北へ延ばして北庭を囲み、別の一続きが道路沿いに走る。厚さ0.2メートルの鉄筋コンクリート造で、高さは一定に保たれず、地形と囲む空間に応じて、およそ1.6メートルから2.1メートルの間で高低差をもつ。設計者はこの塀に、山荘と同じ壁の仕上げと、同じ色調の瓦を与えた。境界と建物が一つの構成として読めるように、である。

一見ありふれた構造物に映るものが、仔細に見れば意図された設計の所産である。塀はそれ単体で目を引くようには造られていない。山荘を完結したものと感じさせるために造られたのである。

塀が登録に値した理由

平成21年(2009)8月、この塀は山荘・正門・二棟の茶室とともに、国の登録有形文化財に登録された。登録番号は27-0534。周囲の建物と同じく、国土の歴史的景観に寄与しているものという基準による登録である。登録は、敷地の価値がその統一のうちにあること、そして家に合わせて設計された境界が、無色の背景ではなくその価値の一部であることを認めている。

コンクリートの塀に、山荘と同じスペイン瓦を載せ、その表面を同じ手法で仕上げるという選択は、統一への並外れた配慮を示す。多くの屋敷は外周を付け足しのように扱う。ここでは塀が建築の延長として引かれ、敷地の外側を歩く者はすでに、入る前から山荘の性格を受け取る。単調な一直線ではなく高さに変化をもたせたことで、塀は庭と、面する街路との釣り合いを保っている。

こう見れば、塀は物理的な囲いであると同時に、一つの設計思想を記録している。家と、それを取り巻くすべてが一つの構想に属すべきだという思想である。それは、芸術と日々の暮らしの一体を願って自邸を名づけた人物と、一貫している。

訪れて見るべきところ

北の道路沿いに敷地の外を歩き、塀の線を追ってみたい。一つの高さに留まらず起伏することに、そして頂部の瓦が、その向こうの山荘の屋根の瓦と揃っていることに気づく。表面の仕上げもまた旧本館に呼応し、塀は、守る家の低く水平な予告のように振る舞う。

次に、塀が山荘の玄関に接する箇所を見たい。ここは、境界と建物が文字どおり連続する地点であり、塀は家から離れて立つのではなく、家から生え出ている。見落としやすい細部だが、ひとたび気づけば、敷地全体の見え方が変わる。塀は静かな一つの文化財であり、その報いは、通り過ぎてしまうはずのものの前で歩みを緩め、眺めることを求める点にこそある。

Q&A

Qなぜ塀が文化財として登録されるのですか。
A山荘の敷地の不可分の一部として設計されたためです。仕上げや瓦を山荘と揃えることで敷地全体の統一を図っており、無色の障壁ではなく、歴史的景観に寄与する要素とみなされています。
Q塀の長さはどのくらいですか。
A総延長は約47メートルです。北庭を囲む部分と、北側道路に面する部分などからなります。
Q塀は何でできていますか。
A厚さ約0.2メートルの鉄筋コンクリート造で、高さはおよそ1.6〜2.1メートルと変化し、頂部には山荘と揃えた瓦が載ります。
Q塀は旧本館とどう関わっていますか。
A旧本館玄関の壁面を北へ延長させて北庭を囲むかたちで、山荘から直接続いています。塀と家が一続きの構成をなしています。
Q敷地に入らずに塀を見られますか。
A塀の一部は公道に面しているため、外観は外側から見られます。敷地は小林一三記念館として公開されており、開館時間は阪急文化財団の公式情報をご確認ください。

基本情報

名称逸翁美術館旧本館塀
所在地大阪府池田市建石町1965他
指定区分登録有形文化財(登録番号27-0534)
登録年月日平成21年(2009)8月7日(告示8月25日)
員数1基
構造鉄筋コンクリート造、厚さ約0.2メートル、総延長47メートル、高さ1.6〜2.1メートル。昭和12年建造
所有者公益財団法人阪急文化財団
交通阪急宝塚本線 池田駅から徒歩約10〜13分
公開小林一三記念館の敷地の一部。道路に面する部分は外側から見学可。最新の開館時間は事前にご確認ください

References

文化庁 — 国指定文化財等データベース 逸翁美術館旧本館塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007767
阪急文化財団 — 小林一三記念館 施設紹介(登録有形文化財)
https://www.hankyu-bunka.or.jp/kinenkan/facility/
阪急文化財団 — 阪急文化財団について
https://www.hankyu-bunka.or.jp/about/

最終更新日: 2026.07.05