窯で焼かれた鳥居

陶山神社鳥居(すえやまじんじゃとりい。神社は「とうざんじんじゃ」とも通称される)は、佐賀県西松浦郡有田町大樽にある磁器製の鳥居で、明治21年(1888年)の建立、平成12年(2000年)5月25日の告示により登録有形文化財となった。

町側から石段を上がると、鳥居は目の高さに白として現れる。花崗岩の灰でも丹塗の赤でもない、磁器の白である。表面には淡い青の唐草文が全体に回る。青は呉須、釉下に施す含コバルトの顔料で、文様は唐草。同じ年代に有田の窯が食器へ大量に描いていた図柄と、同じ系譜のものだ。

文化庁のデータベースは構造及び形式等を「磁器製、高さ3.7m」と記す。神社および有田町歴史民俗資料館の資料は、これに笠木の長さ3.9メートルを加える。形式は明神鳥居、すなわち笠木の下に島木を添え、笠木の両端に反りを持たせるもので、二大系統のうち手数の多い側にあたる。焼成で縮み、歪む素材でこの形をつくることの難度は、木や石の比ではない。

員数は1基。種別は宗教/その他工作物、登録番号は41-0015である。

「登録」と「指定」は別の制度である

この鳥居は登録有形文化財であって、重要文化財でも国宝でもない。両者の差は価値の序列ではなく、制度の仕組みの違いに由来する。

重要文化財・国宝を生む指定制度は強い規制を伴う。国が限られた件数を選び、現状変更に許可を求め、修理費の多くを負担する。これに対し登録制度は、平成8年(1996年)の文化財保護法改正で設けられた、意図的に緩やかな枠組みである。おおむね建設後50年を経た建造物を広く対象とし、変更は許可ではなく届出で足り、税制上の優遇と修理設計費の補助が用意される。私有され、日常的に使われ続け、件数が多すぎて指定制度では受け止めきれない建造物のための制度と言ってよい。

登録の基準は三つあり、いずれか一つを満たせばよい。国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないもの。陶山神社鳥居に適用されたのは三つめである。

この判断は対象に照らすと精確だ。長さ3.9メートルの部材を磁器で焼くには、素地の収縮を全長にわたって制御し、高温下で自重に負けないよう支え、どの工程での失敗も全体の破棄を意味することを受け入れねばならない。明治21年の有田はそれをやってのけた。同じ素地、同じ窯のふるまいで、いま同じものをつくれるか。基準が問うているのはその一点である。

奉納者について、有田町歴史民俗資料館の文化財マップは、その年の神事当番町であった稗古場町によるものと記す。地元で広く引かれる別の解説は町名を異なる字で伝えており、表記に揺れがある。ただしいずれの資料も、担い手を町の陶工たちとする点では一致する。窯業の神へ、窯業の側から、窯業の素材で捧げられた鳥居ということになる。

この鳥居は一度壊れ、直されている。現地案内板によれば、昭和31年(1956年)の台風で本鳥居の上部が飛散し、香蘭社十代深川栄左エ門の尽力で復旧が進み、昭和35年(1960年)秋に完成した。さらに令和2年(2020年)1月から、長年の風雨で生じた欠けとひび割れを埋める修復作業が行われている。目の前の白は、幾度か手当てを受けた白である。

境内という野外展示

陶山神社の創建は万治元年(1658年)、現在の伊万里市域にあった八幡宮から分霊を勧請し、有田皿山宗廟八幡宮として開かれた。明治4年(1871年)に現社名へ改める。祭神は応神天皇に加え、窯が置かれた藩の藩祖鍋島直茂、そして元和2年(1616年)に泉山で磁石場を見出し、日本で最初の磁器焼成を成したと伝わる李参平を祀る。

鳥居は、境内を埋める焼物のうち最も目につくものにすぎない。明治20年(1887年)、赤絵町の十代今泉今右衛門が奉納した白磁の狛犬一対がある。明治22年(1889年)の磁器製大水瓶は中ノ原町から。本殿を囲む高欄は、もとは弘化3年(1846年)に神域を画する玉垣として奉納されたもので、表面には呉須による細密な蔓草文が隙間なく描かれる。これらのうち複数が、鳥居と同じく登録有形文化財となっている。地元がここを野外美術館と呼ぶのは誇張ではない。

参道について一つ、初めて訪れる人が必ず驚くことがある。石段の途中から社殿へ向かう道を、JR佐世保線の線路が横切っている。佐世保への路線を敷く際、有田の町には他に線路を通す余地がなく、境内の端を通すことになったという経緯による。磁器の鳥居の足元から数メートルのところを列車が通過し、参拝者は踏切で待つ。

拝観の実際。境内は屋外で、拝観料はなく、参道に閉門はない。社務所は日中に開き、御祈祷を受け付けるほか、有田製の磁器のお守りを授与している。鳥居の撮影に制限はない。晴天より曇天のほうが撮りやすく、白磁に直射が当たると青の文様が飛びやすい。参道には石段があり、上の境内は段差なしでは到達できない。JR上有田駅から徒歩約20分、JR有田駅から車で約7分、波佐見有田インターチェンジからは車で約10分。秋の有田くんちは10月16日・17日である。

所在地表記に注意が要る。国のデータベースは大樽2-1464とし、神社および観光資料は大樽2-5-1と記す。地番と住居表示の違いであり、地図アプリによって指す位置がわずかに異なることがある。

Q&A

Q陶山神社鳥居は自由に見られますか。拝観料は必要ですか。
A参道上に立つ鳥居で、境内は屋外に開かれており拝観料はかかりません。参拝者はその下をくぐって進みます。御祈祷や磁器製のお守りを希望する場合は、日中に開く社務所へお越しください。
Q陶山神社鳥居はほかの鳥居と何が違うのですか。
A石材でも木材でも金属でもなく、磁器で焼かれている点です。高さ3.7メートル、笠木の長さ3.9メートル。明治21年(1888年)に有田で製作され、全体に呉須で唐草文が描かれています。この長さの部材を磁器でつくった例は極めて少数です。
Q陶山神社鳥居は重要文化財ですか。
Aいいえ、登録有形文化財です。平成12年(2000年)5月25日告示、登録番号41-0015。登録制度は平成8年の法改正で設けられた届出制の緩やかな保護であり、許可制の指定制度(重要文化財・国宝)とは別の枠組みです。
Q陶山神社へのアクセスを教えてください。
AJR上有田駅から徒歩約20分、JR有田駅から車で約7分、波佐見有田インターチェンジから車で約10分です。参道には石段があり、途中でJR佐世保線の踏切を渡ります。
Q陶山神社の境内には鳥居のほかにどんな焼物がありますか。
A明治20年(1887年)の白磁狛犬一対、明治22年(1889年)の磁器製大水瓶、弘化3年(1846年)に玉垣として奉納され現在は本殿の高欄となっている磁器製欄干などがあります。青銅製の燈籠や狛犬も並び、これらのうち複数が登録有形文化財です。

基本データ

名称陶山神社鳥居(すえやまじんじゃとりい)
所在地佐賀県西松浦郡有田町大樽2-1464(神社・観光資料は大樽2-5-1と表記)
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 41-0015。登録基準は「再現することが容易でないもの」
指定年登録 平成12年(2000年)4月28日、告示 同年5月25日
員数1基
寸法磁器製、高さ3.7メートル、笠木の長さ3.9メートル。明神鳥居形式、呉須による唐草文。明治21年(1888年)建立
所有者宗教法人陶山神社
公開状況屋外の参道上にあり常時見学可、拝観料無料。参道に石段およびJR佐世保線の踏切あり

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)/陶山神社鳥居
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001757
文化遺産オンライン(文化庁)/陶山神社鳥居
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/114837
陶山神社 公式ホームページ
https://arita-toso.net/
有田観光協会 ありたさんぽ/「陶山神社 磁器製鳥居」が修復され、美しく生まれ変わりました
https://www.arita.jp/news/pickup/3869.html
あそぼーさが(佐賀県観光サイト)/陶山神社
https://www.asobo-saga.jp/spots/detail/28a57d5b-1b72-4149-810d-c9444d6f0d3e

最終更新日: 2026.08.09