はじめに
滋賀県甲賀市甲南町寺庄の杣街道沿いに、周囲の伝統的な町並みの中でひときわ存在感を放つ西洋古典様式の建物があります。旧滋賀銀行甲南支店は、アメリカ出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計により1925年(大正14年)に竣工した鉄筋コンクリート造2階建ての建築物です。もともとは地域銀行である寺庄銀行の本店として建てられ、その後、滋賀銀行甲南支店として2007年(平成19年)まで実際の銀行業務に使用されていました。2015年(平成27年)に国の登録有形文化財に登録され、大正期の銀行建築の貴重な遺構として、また地域の近代化を物語る重要な建造物として評価されています。
歴史的背景
旧滋賀銀行甲南支店の歴史は、明治中期に数多く設立された地域銀行のひとつである寺庄銀行に遡ります。寺庄銀行は甲賀地域の経済発展を支える金融機関として重要な役割を果たしていました。1925年(大正14年)、その本店社屋として、近江八幡を拠点に活動していたヴォーリズ建築事務所の設計によりこの建物が建築されました。
その後、寺庄銀行は1928年(昭和3年)に第百三十三国立銀行と合併し、さらに1933年(昭和8年)には八幡銀行との合併を経て滋賀銀行となりました。建物は滋賀銀行甲南支店として引き続き使用され、2007年(平成19年)7月に新店舗への移転により閉鎖されるまで、約80年以上にわたり地域の金融拠点として親しまれてきました。
設計者のウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880〜1964年)は、1905年(明治38年)にYMCA派遣の英語教師として来日し、滋賀県近江八幡を拠点に伝道活動と建築設計を行いました。1941年(昭和16年)には日本国籍を取得し、一柳米来留と改名しています。教会や学校、住宅から百貨店に至るまで、全国で約1,500件もの建築を手がけ、その作品群は日本の近代建築史において重要な位置を占めています。
文化財としての価値
旧滋賀銀行甲南支店は、2015年(平成27年)3月26日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。寺庄集落の中ほどで杣街道に面して建つ本建物は、鉄筋コンクリート造の正面に矩形の柱形を張り出し、その内側にイオニア式オーダーを表現した重厚なエンタブレチュアを支える構成となっています。玄関上部には半円アーチの窓が設けられ、装飾的な持送りを兼ねた要石が飾られており、銀行建築にふさわしい古典的な意匠が施されています。
また、ヴォーリズ建築事務所の設計による作品として、その建築史的な価値も高く評価されています。滋賀県教育委員会文化財保護課は本建物を「地域活性化の起点になりうる建物」と評価しており、建築的な価値にとどまらず、地域の文化的遺産としての意義も認められています。
建築の見どころ
旧滋賀銀行甲南支店の建築には、大正期の銀行建築ならではの格調高い意匠が随所に見られます。主な見どころは以下の通りです。
- イオニア式柱頭:正面ファサードには矩形の柱形が張り出し、その内側にイオニア式の柱頭を持つオーダーが表現されています。重厚なエンタブレチュア(梁部)を支えるこの古典的意匠は、金融機関としての信頼性と威厳を視覚的に表現しています。
- 半円アーチ窓と要石:玄関上部に設けられた半円アーチ窓は、装飾的な持送りを兼ねた要石で飾られており、建物のファサードに優美なアクセントを加えています。
- 鉄筋コンクリート造:建築面積約150平方メートルの鉄筋コンクリート造2階建てで、竣工当時の農村部としては先進的な構造でした。コンクリート造であることが、西洋古典様式の大胆な造形を可能にしています。
- 街並みとの対比:土塀が附属する伝統的な住宅が並ぶ杣街道沿いにあって、西洋古典様式のこの建物は際立った存在感を示しています。和洋の建築様式が共存する独特の景観は、近代化の歴史を雄弁に物語っています。
見学・アクセス情報
旧滋賀銀行甲南支店は、甲賀市甲南町寺庄の杣街道沿いに位置しています。建物の外観は公道から自由に見学することができます。ただし、内部の常時公開は行われていないため、特別公開やイベントの開催情報については甲賀市観光協会にお問い合わせください。
最寄り駅はJR草津線の寺庄駅で、徒歩約7分です。お車の場合は、新名神高速道路の甲南インターチェンジから約6分でアクセスできます。周辺の駐車場は限られていますので、公共交通機関のご利用をおすすめします。
周辺の観光スポット
寺庄地区および甲賀エリアには、文化財や観光施設が点在しています。
- 六角堂:JR寺庄駅から徒歩約5分に位置する、平面六角形の二重塔をもつ地蔵堂です。1788年(天明8年)に建造された江戸時代の建築で、甲賀市指定文化財に指定されています。滋賀県内に2棟しか残っていない六角堂のひとつで、貴重な遺構として大切にされています。
- 杣街道:近江国甲賀郡と伊賀国を結ぶ古い街道で、寺庄はその沿線に位置します。かつては伊勢参宮の間道としても利用された歴史ある道を散策しながら、昔ながらの町並みを楽しむことができます。
- 甲賀流忍術屋敷(甲賀の里忍術村):甲賀忍者の伝統を体験できる施設で、忍者の歴史や技術を楽しみながら学ぶことができます。
- 信楽焼の里:隣接する信楽町は日本六古窯のひとつに数えられる信楽焼の産地です。陶芸体験や窯元巡り、名物のたぬき焼きものの鑑賞など、焼きものの文化を堪能できます。
- 油日神社:甲賀市にある古社で、甲賀忍者とのゆかりも深い神社です。静寂な森に囲まれた境内は、四季折々の美しい景観を楽しめます。
Q&A
- 旧滋賀銀行甲南支店は誰が設計しましたか?
- アメリカ出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880〜1964年)が主宰するヴォーリズ建築事務所の設計です。ヴォーリズは1905年に英語教師として来日し、滋賀県近江八幡を拠点に全国で約1,500件もの建築を手がけました。1941年には日本国籍を取得し、一柳米来留と名乗りました。
- 建物の内部を見学することはできますか?
- 現在、内部の常時公開は行われておりません。ただし、特別公開やイベント時に見学できる場合があります。最新の情報は甲賀市観光協会(TEL: 0748-60-2690)にお問い合わせください。外観は公道からいつでも自由にご覧いただけます。
- 最寄り駅からのアクセス方法を教えてください。
- JR草津線の寺庄駅から徒歩約7分です。お車の場合は、新名神高速道路の甲南インターチェンジから約6分でアクセスできます。
- この建物はどのような建築様式ですか?
- 大正期の銀行建築に見られる西洋古典様式を用いています。正面にはイオニア式柱頭を持つオーダーが配され、玄関上部には半円アーチ窓と装飾的な要石が飾られるなど、金融機関にふさわしい格調高い意匠が特徴です。鉄筋コンクリート造2階建てで、建築面積は約150平方メートルです。
- 滋賀県内で他にヴォーリズ建築を見学できる場所はありますか?
- 滋賀県にはヴォーリズが手がけた建築が数多く残っています。高島市の旧百三十三銀行今津支店(今津ヴォーリズ資料館)や、近江八幡市のヴォーリズ記念館(一柳記念館)、池田町洋館街のヴォーリズ設計住宅群、ヴォーリズ記念病院礼拝堂などが代表的な見学スポットです。
基本情報
| 名称 | 旧滋賀銀行甲南支店(きゅうしがぎんこうこうなんしてん) |
|---|---|
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 2015年(平成27年)3月26日 |
| 設計 | ヴォーリズ建築事務所(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ) |
| 竣工 | 1925年(大正14年)/1975年改修 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積約150㎡ |
| 所在地 | 〒520-3301 滋賀県甲賀市甲南町寺庄字上川原1078 |
| アクセス | JR草津線 寺庄駅より徒歩約7分/新名神高速道路 甲南ICより車で約6分 |
| 内部見学 | 常時公開なし(甲賀市観光協会 TEL: 0748-60-2690 にお問い合わせください) |
参考文献
- 旧滋賀銀行甲南支店 - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/235711
- 旧滋賀銀行甲南支店 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/旧滋賀銀行甲南支店
- 旧滋賀銀行 甲南支店 | 甲賀市観光ガイド
- https://koka-kanko.org/see/kyushigabank-konan/
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010477
- 滋賀県甲賀市 滋賀銀行旧甲南支店 - japan-geographic.tv
- https://japan-geographic.tv/shiga/koka-shigabank.html
最終更新日: 2026.03.27