都内最大のケヤキ巨樹に会いに行く

練馬区練馬四丁目、住宅街の一角に立つ白山神社。石鳥居をくぐった先、参道のすぐ脇に深い溝の刻まれた幹が太く立ち上がっている。これが国指定天然記念物「練馬白山神社の大ケヤキ」、樹高約19メートル、根元の幹周りは約8メートル。都内に現存するケヤキとしては最大の一本である。

かつてこの境内には大ケヤキが2本あった。石段の上と下に1本ずつ。今残るのは下の一本で、上の木はすでに姿を消している。

失われた一本

もとの天然記念物は、石段上のケヤキだった。樹高約14メートル、幹周り約7.2メートル。指定は昭和15年(1940年)7月12日。長年の内部腐朽で空洞化が進み、平成27年(2015年)10月の大風で主幹が折損したため、翌年に伐採された。文化庁の指定原簿には「根元ニ高サ約一メートルノ盛土アリ……幹圍約十メートルナリ。主幹ハ折レ東側ヨリ出デタル支幹之ニ代レリ」とあり、指定当時すでに痛みを抱えていた樹だったことが読み取れる。

現存する石段下のケヤキは、平成8年(1996年)3月29日に追加指定されたもの。落雷の傷や幹の空洞化で衰弱が進んでいたが、平成3年から平成9年にかけて樹木医による治療が施され、現在は樹勢を取り戻している。

源義家奉納の伝承

大ケヤキの起源としては、平安後期の伝承が知られる。永保3年(1083年)、後三年の役で奥州に下る源義家がこの地の有力者・豊嶋近義の館に泊まり、戦勝祈願として白山神社にケヤキの苗を奉納した。今に残る御神木は、その苗木が育ったものと伝わる。推定樹齢約900年という数字は、この伝承とよく符合する。

白山神社そのものの創建は平安時代と伝えられるが、明治初年の火災で由緒書を焼失しており、詳細は不明。境内から出土した板碑などから、少なくとも鎌倉時代にはこの地に祠があったと考えられている。義家奉納の話は史料で裏取りできるものではないが、樹齢推定の幅は伝承の年代とおおむね合致する。

近づいて観察したい点

まず注目したいのは根元。盛土に支えられた根張りが横に大きく広がり、太い板根のような形を成している。樹皮は縦に深く裂け、長い板状に剥がれかける。若いケヤキの滑らかな灰色の樹皮とは別物のような質感で、ここに樹齢の長さが手触りとなって現れる。視線を上に移すと、本来の主幹が早くから失われ、東側から伸びた支幹が代わって樹冠を支えていることに気づく。バランスはやや非対称で、これが古樹の風格を強めている。

季節ごとに表情が変わる。4月の新緑は淡い黄緑色で繊細、夏には深い陰を境内に落とす。11月下旬には黄葉が美しく、紅葉とは別種の落ち着いた金色に染まる。冬の落葉期は幹の量感と分岐の構造がよく見える時期で、樹形を見るにはむしろ好機である。

周辺の見どころとアクセス

白山神社は豊島園駅から南東へ徒歩4〜5分、練馬駅からも徒歩7〜10分の住宅街にある。境内南側には、明暦の大火(1657年)で焼け出された浅草の浄土宗寺院群が移転して成立した「練馬十一ヶ寺」と呼ばれる寺町が広がる。江戸初期に形成された宗教的な街区がそのまま残り、静かな散策コースになっている。さらに東に進むと、令和2年(2020年)に閉園した「としまえん」跡地の練馬城址公園が広がっており、現在も段階的な整備が続いている。

神社は終日参拝可、拝観料は不要。撮影は境内では可能だが、社殿内部は不可。例大祭は10月第2日曜で、当日は周辺の路地に露店が並び、神輿の渡御もある。

Q&A

Q樹齢はどのくらいですか?
A推定で約800〜900年とされています。源義家の苗木奉納(1083年)の伝承とよく符合しますが、内部空洞化が進んだ巨樹は年輪測定が難しく、確定的な数値ではありません。
Qかつて2本あったというのは本当ですか?
A本当です。石段上のケヤキが昭和15年(1940年)の原指定でしたが、2015年10月の大風で幹折れし、翌2016年に伐採されました。現在残るのは石段下の1本で、こちらは平成8年(1996年)に追加指定されたものです。
Q見頃の時期はいつですか?
A黄葉なら11月下旬、新緑は4月。冬の落葉期は幹の量感が直接見えるので、樹形を楽しむには最適です。
Q最寄り駅からのアクセスは?
A都営大江戸線または西武豊島線の豊島園駅から徒歩4〜5分。西武池袋線の練馬駅からは徒歩7〜10分です。
Q大ケヤキに触れることはできますか?
A触れることはできません。根の保護のため柵が設けられています。約1メートルまで近づいて間近に観察することは可能です。

基本情報

名称練馬白山神社の大ケヤキ
ふりがなねりまはくさんじんじゃのおおけやき
指定区分国指定天然記念物
指定年月日1940年(昭和15年)7月12日
追加指定年月日1996年(平成8年)3月29日(現存する石段下のケヤキ)
指定基準(一)名木、巨樹、老樹、畸形木、栽培植物の原木、並木、社叢
樹種ケヤキ(Zelkova serrata
樹高約19メートル
幹周り根元周り約8メートル
推定樹齢約900年
所在地東京都練馬区練馬4-1-2 白山神社境内
アクセス都営大江戸線・西武豊島線「豊島園」駅から徒歩4〜5分/西武池袋線「練馬」駅から徒歩7〜10分
参拝終日自由、拝観料無料、境内での撮影可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)|練馬白山神社の大ケヤキ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/702
練馬区公式ホームページ|練馬白山神社の大ケヤキ
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/annai/rekishiwoshiru/rekishibunkazai/bunkazai/b001.html
とっておきの練馬|練馬白山神社
https://www.nerimakanko.jp/spot/detail.php?spot_id=s000000019
練馬白山神社 公式サイト
https://nerimahakusan.or.jp/

最終更新日: 2026.05.28