太刀〈銘則国〉 ― 粟田口派の名工が遺した稀少な一口

銘に「則国」と切られた太刀は、現存するものがごくわずかしかない。そのうちの一口が、京都国立博物館に収められている。鎌倉時代、十三世紀の作とされる。刃長は74.7センチ、茎尻の近くに二字の銘が残る。長らく鳥取藩主・池田家に伝来した一振りである。

作者の則国は、平安時代末から鎌倉時代にかけて京都の東山・粟田口に住んだ刀工の一群、粟田口派に属する。父は国友とされ、国友は粟田口派の祖の一人に数えられるとともに、後鳥羽上皇の御番鍛冶に名を連ねた刀工でもあった。則国は、名高い六兄弟に続く世代の筆頭に位置づけられることが多い。

国宝に指定された理由

本太刀は、昭和9年(1934年)1月30日に重要文化財、昭和29年(1954年)3月20日に国宝へと指定された。その評価を支える理由は二つある。一つは稀少性である。則国の銘が確実に認められる作はきわめて少なく、現存する銘の刻み方にも互いに小さな違いがある。本品は、名古屋の熱田神宮が蔵する太刀と並んで、確実な在銘作の数少ない例に数えられている。

もう一つは、作そのものの質の高さである。本太刀は後世に磨上げられ、扱いやすいよう茎の一部を詰めて短くされているが、姿のまとまりは失われていない。当初は三尺近い長寸の太刀であったと考えられる。地鉄はよく約んで精美であり、刃文は沸がよくついて匂口が冴える。細直刃を品よく焼いたその出来は、粟田口派の典型を示す優品として評価されている。

刀身を見るときの着眼点

日本刀は、時間をかけて眺めるほど見どころが増えてくる。本太刀でとくに注目したいのは三点ある。まず地鉄である。則国の鍛えは小板目肌がよく約んで、刃の平地に白く詰んだ肌目が現れる。この白っぽい見えは、地鉄を丁寧に折り返した鍛錬の跡であり、京都の刀に共通する特色のひとつでもある。

次は刃文である。焼き入れによって硬い刃と軟らかい地との境に立ち上がる線で、則国はまっすぐに近い細直刃を選び、長さに沿って浅く湾れている。そのまわりには沸と呼ぶ微粒子が厚くつき、刃中には金筋が頻りにかかる。帽子は直ぐに小丸に返り、ここにも沸と金筋が見てとれる。

最後に全体の姿である。細身で鋒が小さく、反りの中心はやや腰寄りにある。これらは鎌倉時代初期の太刀に共通する特徴で、磨上げを経てなお、各部の釣り合いに破綻がない。展示の前ではまず一歩下がって姿の線を追い、それから近寄って地鉄と刃文を確かめるとよい。

博物館の周辺

京都国立博物館は、市街の東側、東山区に位置する。周囲には見どころが密集している。道を挟んだ向かいには、千体の千手観音立像が並ぶ三十三間堂が建つ。坂を上れば、斜面に張り出した舞台で知られる清水寺があり、東山の古い町並みを抜ければ祇園へと続く。

訪問にあたって一点、注意しておきたいことがある。国宝の刀剣は光や扱いに弱いため、通年ではなく限られた期間にのみ公開される。本太刀を実際に見たい場合は、出かける前に博物館の展示予定を確かめておくとよい。展示されていない時期でも、国立博物館などが共同で運営する収蔵品データベース「ColBase」で、高精細の画像を見ることができる。

Q&A

Qこの太刀はいつでも見られますか。
Aいいえ。国宝の刀剣であるため、光や扱いへの負担を抑える目的で、特定の展示期間にのみ公開されます。訪問前に京都国立博物館の展示予定を確認してください。
Q則国の在銘作はなぜそれほど少ないのですか。
A則国本人の銘が確実に認められる作は現存数が限られ、銘の刻み方にも作ごとの違いがあります。本品と熱田神宮蔵の太刀が、確実な在銘作の数少ない例とされています。
Q「磨上げ」とは何ですか。
A扱いやすくするために茎を詰めて刀身を短くすることを磨上げといいます。本太刀も磨上げられており、当初はかなりの長寸であったと考えられます。銘は、詰められた茎の先近くに残っています。
Q刀剣に詳しくありません。どこを見ればよいですか。
A刀身全体の姿、平地に現れる地鉄の肌目、硬い刃と地との境に立つ刃文の三点に注目してください。それぞれが、作り方や属する流派を語る手がかりになります。
Qこの太刀はもともと誰のものでしたか。
A鳥取藩主の池田家に長く伝来しました。現在は独立行政法人国立文化財機構が所有し、京都国立博物館に保管されています。

基本情報

名称太刀〈銘則国〉
種別工芸品(刀剣)
指定国宝(重要文化財指定 昭和9年/国宝指定 昭和29年)
作者則国(粟田口派)
時代鎌倉時代・13世紀
員数1口
寸法身長74.7cm 反り2.3cm 元幅2.7cm 先幅1.8cm 鋒長2.7cm 茎長22.3cm
形状鎬造、庵棟、小鋒、磨上げ、腰反り
所有者独立行政法人国立文化財機構
所在地京都国立博物館(京都府京都市東山区茶屋町527)
公開状況特定の展示期間に公開(通年公開ではない)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/447
文化遺産オンライン(国立情報学研究所)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/178072
e国宝・e-Museum(国立文化財機構)
https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=101111
ColBase 国立文化財機構所蔵品統合検索システム
https://colbase.nich.go.jp/collection_items/kyohaku/E甲204
京都国立博物館
https://www.kyohaku.go.jp/

最終更新日: 2026.06.11