昭和二十六年の木造再建
大山寺本堂は、鳥取県西伯郡大山町大山字中門院谷にある天台宗別格本山・角磐山大山寺の本堂で、昭和26年(1951年)に再建され、平成29年(2017年)10月27日に国の登録有形文化財に登録された。
登録有形文化財の多くは明治・大正期の建物である。太平洋戦争終結の六年後に建てられた堂宇が登録されているという事実は、それ自体が立ち止まるに値する。
建物は木造平屋建、屋根は銅板葺、建築面積251平方メートル。平面は正面五間・側面六間、屋根は棟をもたず一点に集まる宝形造である。正面には三間の向拝が張り出し、その上に唐破風が架かる。
内部は中世寺院本堂の構成を踏襲する。参詣者が入る外陣、その奥の内陣、両脇の脇陣、そして後陣。後陣の中央三間には来迎壁を立て、その手前に須弥壇を構えて内々陣とする。本尊は地蔵菩薩。旅人と子ども、そして死者を見守る菩薩である。
焼失と再建―何が評価されたのか
大山寺の開創は養老2年(718年)、金蓮上人が地蔵菩薩を祀ったことに始まると伝わる。平安期に天台宗の寺院となり、山岳修験の一大拠点へと成長した。最盛期には百を超える支院と数千の僧兵を擁し、江戸幕府からは三千余石の寺領を認められている。
明治の神仏分離と廃仏毀釈が、その姿を大きく変えた。寺はかつての本社を手放すことを余儀なくされる。それが現在の大神山神社奥宮(重要文化財)である。明治36年(1903年)に再興された際、中門院の大日堂が新たな本堂とされ、旧本社から移された地蔵菩薩がここに納められた。
その本堂が昭和3年(1928年)の火災で焼失する。国宝に指定されていた『大山寺縁起絵巻』をはじめ、多くの宝物がこのとき失われた。
再建の着手は昭和十年代。戦争による中断を挟み、昭和25年(1950年)に鐘楼、翌26年に本堂が完成し、落慶法要が営まれた。大工棟梁は栗林禎松。昭和60年には改修の手が入っている。
登録の理由は、この再建にあたっての選択にある。当時、米子など近隣の寺院は耐火性を重視した鉄筋コンクリート造で堂宇を建て直していた。大山寺はそれを採らず、木造で、しかも中世の和様本堂の構成を忠実に再現する道を選んだ。一方で彫刻の意匠は中世の規範を超えて豊かで、近代らしい設計意識がはっきり読み取れる。中世の骨格に近代の装飾が重なるこの組み合わせを、文化庁の記録は「近代寺院建築の好例」と評価している。登録基準は「造形の規範となっているもの」、登録番号31-238、第88回登録。鐘楼も同日付で登録された。
参道を登る
本堂までは坂を登ることになる。大山寺バス停から石畳の参道を約15分。杉並木の両側に、現存する十の支院が構えている。参拝堂は四つが残る。
参拝志納金は大人300円、小人200円。宝物館・霊宝閣の入館料を含む。参拝時間は4月1日から11月30日までが午前9時から午後4時まで(季節により変更あり)。この期間外も参拝はできるが、霊宝閣は12月1日から3月31日まで休館となる。先に霊宝閣で志納金を納め、そのうえで本堂へ向かうのが寺の想定する順路である。
参道の最後の直線で、下から屋根を見上げてほしい。銅板は年月とともに金属光沢から茶へ、さらに緑青へと色を変える。昭和26年に葺かれた屋根は、山肌を背にしてほとんど石板のように落ち着いた緑をたたえている。宝形造は棟をもたないぶん、視線が頂点の一点へ集まる。
向拝に着いたら、唐破風の内側と、その下の組物を見上げる。二十世紀の設計が姿を現すのはこの部分である。
徒歩でさらに15分ほどの位置に、室町時代の重要文化財・阿弥陀堂が建つ。堂内の木造阿弥陀如来及び両脇侍像は天承元年(1131年)に大仏師良円が手がけたもので、こちらも重要文化財に指定されている。霊宝閣には重要文化財の観音像四躰と鉄製厨子が納められる。日本一長いとされる石畳の参道を進めば、大神山神社奥宮にも足を延ばせる。
行事に合わせるなら時期を選びたい。大山夏山開き祭は6月の最初の週末、前夜にたいまつ行列が行われる。三年に一度の御幸は5月。古式の装束をまとった行列と神輿が参道を進む。
外観の撮影に制限はない。堂内と霊宝閣では、カメラを構える前に一言尋ねたい。展示施設ではなく、現に祈りが続いている場所である。
Q&A
- 大山寺本堂は拝観できますか。参拝時間と志納金は?
- 拝観できます。参拝志納金は大人300円、小人200円で、宝物館「霊宝閣」の入館料を含みます。参拝時間は4月1日から11月30日まで午前9時から午後4時まで(季節により変更あり)、霊宝閣は12月1日から3月31日まで休館です。
- 大山寺本堂はいつ建てられたのですか。なぜ昭和の建物が文化財なのですか。
- 現在の本堂は昭和3年(1928年)の焼失を受けて昭和26年(1951年)に再建されました。近隣の寺院が鉄筋コンクリート造で再建していた時期に、木造で中世の和様本堂の構成を忠実に再現し、そこへ意匠性の高い彫刻を加えた点が評価され、平成29年に登録されています。
- 大山寺本堂へのアクセスは。米子駅からどのくらいかかりますか。
- JR米子駅からバスで約54分、「大山寺」下車。そこから石畳の参道を徒歩約15分登ります。車の場合は米子自動車道・米子ICから約30分、博労座の駐車場を利用します。
- 大山寺本堂の本尊は何ですか。
- 地蔵菩薩です。明治の神仏分離によって旧本社から取り除かれた像が本堂に祀られました。大山は地蔵信仰の中心地として知られています。
- 大山寺本堂の周辺に他の文化財はありますか。
- 徒歩約15分の阿弥陀堂は室町時代の重要文化財で、天承元年(1131年)に大仏師良円が制作した阿弥陀三尊像も重要文化財です。霊宝閣には重要文化財の観音像四躰と鉄製厨子があり、少し先には大神山神社奥宮があります。
基本情報
| 名称 | 大山寺本堂 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県西伯郡大山町大山字中門院谷9 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 31-238(第88回登録) |
| 指定年 | 平成29年(2017年)10月27日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、銅板葺、建築面積251平方メートル。正面五間・側面六間、宝形造、向拝三間・正面唐破風付 |
| 所有者 | 宗教法人大山寺 |
| 公開状況 | 公開(4月1日〜11月30日 9:00〜16:00、季節により変更あり。参拝志納金 大人300円・小人200円、霊宝閣入館料を含む) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)大山寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012019
- 文化遺産オンライン 大山寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/294700
- 天台宗別格本山 角磐山 大山寺 公式サイト
- https://daisenji.jp/
- 大山寺公式サイト 大山寺紹介(参拝志納金・拝観案内)
- https://daisenji.jp/pages/2/
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁)大山寺本堂
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/2201/
最終更新日: 2026.08.21