倉吉・河原町に残る小川酒造の7件

小川酒造は、鳥取県倉吉市河原町にある旧酒造家・小川家の屋敷で、明治期から昭和初期に建てられた主屋・ビン詰場・旧仕込蔵・槽場・二階蔵・三階蔵・道具蔵の7件が、平成10年(1998年)10月9日にそろって国の登録有形文化財に登録された。読みは「おがわしゅぞう」。鳥取県は平成27年(2015年)4月7日にこの屋敷を「小川家住宅」として県の保護文化財に指定しており、県の資料ではこちらの名で呼ばれている。

小川記念館財団がまとめた家史によると、小川家の屋号は中江屋(中恵屋とも書く)。三代の富三郎(1804〜1891)が酒造と綿の商いで家を大きくし、四代の貞四郎(1845〜1915)は銘酒「久米川」を売るかたわら、明治26年(1893年)に小川製糸場を開いた。六代の貞一(1882〜1943)は明治43年(1910年)に小川合名会社を設立し、大正4年(1915年)に酒の銘を「打吹正宗」と改めている。醤油醸造にも手を広げ、県会議員や貴族院議員も務めた人物である。

いま小川酒造の敷地で酒は造られていない。令和8年(2026年)7月17日からは、屋敷の一部が宿泊施設「風の 倉吉」のフロントと客室として使われている。

小川酒造の7件と建てられた時代

小川酒造の7件は第14回の登録で、登録番号31-0029から31-0035が連番で振られた。文化庁のデータベースに載る年代と構造、建築面積は次のとおりである。

  • 主屋:大正初期。木造2階建で、建築面積360平方メートル
  • ビン詰場:明治期。土蔵造2階建で、218平方メートル
  • 旧仕込蔵:大正期。土蔵造2階建で、237平方メートル
  • 槽場:明治期。土蔵造2階建で、77平方メートル
  • 二階蔵:昭和初期。土蔵造2階建で、52平方メートル
  • 三階蔵:昭和初期。土蔵造3階建で、62平方メートル
  • 道具蔵:昭和初期。土蔵造2階建で、75平方メートル

屋根はすべて瓦葺である。登録基準は主屋とビン詰場が「造形の規範となっているもの」、残る5件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。酒を搾る、仕込む、瓶に詰める、道具をしまうといった酒造りの工程ごとの建物が、店と住まいを兼ねた主屋の背後にひとそろい残っている点に、小川酒造の値打ちがある。

県の保護文化財「小川家住宅」は、県の文化財データベースでは「10点」、倉吉市の県指定文化財一覧では「六棟」と数えられている。どの建物がその内訳に入るかは、公開されている資料からは読み取れない。また、倉吉市が公表している国の登録文化財の一覧(令和3年6月24日現在)には小川酒造の建物が載っていない。文化庁のデータベースには登録が掲載されたままであり、このページはデータベースの記載に従っている。

小川酒造の敷地と鉢屋川

鳥取県の解説によると、小川酒造のある河原町は、天神川の支流・小鴨川の右岸に沿った町並みで、打吹山のふもとに東西へ延びる倉吉の町の西の端にあたる。東の端が打吹玉川の伝統的建造物群保存地区である。県はこの屋敷を、鉢屋川と本通りのまわりに残る古い建物の中心になる存在と位置づけている。

文化庁の解説文から小川酒造の配置を拾うと、次のようになる。主屋は河原町通りに面し、南北に土間が通り抜ける。その土間を抜けた奥にビン詰場があり、ビン詰場に向き合って二階蔵が建つ。三階蔵は二階蔵の北側、主屋とのあいだに二階蔵と平行に並ぶ。道具蔵は敷地のほぼ中央にある。敷地のいちばん奥、鉢屋川に面して旧仕込蔵が建ち、槽場がそれに続いている。

小川酒造にとって鉢屋川は、荷を運ぶ水路であり、動力の源でもあった。旧仕込蔵は川の側に出入口を設け、槽場の脇には水車へ水を引いた水路と煉瓦積みの壁が残る。その一方で、三階蔵と道具蔵については、床を上げたつくりが水害に備えたものと文化庁は見ている。

小川家の庭も3つの区画に分かれる。平成22年(2010年)の鳥取県教育委員会の資料は、河原町通りに面した前庭、主屋と土蔵のあいだの中庭、鉢屋川沿いの別の区画にある環翠園を挙げ、環翠園の景色に赤煉瓦の煙突が取り込まれていることに触れている。前庭と中庭は公開されていない。

小川酒造の見学と行き方

鳥取県の文化財データベースは、小川酒造(小川家住宅)の公開状況を「非公開」としている。建物の内部を見学する受付はなく、宿泊しない人が見られるのは河原町通りからの外観である。

令和8年(2026年)7月17日に開業した「風の 倉吉」は、小川家と、徒歩3分ほどの旧髙多家の2か所に客室11室を置く宿で、小川家の主屋にフロントがある。小川家側は主屋・洋館・新座敷・茶室「清和軒」を客室6室とフロントに充てている。門の内側は宿の管理下にあるので、敷地に入る場合や写真を撮る場合はフロントに確かめたい。

小川家の庭のうち環翠園だけは、小川記念館財団が河原町3030-12で予約制の公開を行っている。財団の案内では、公開は金・土・日曜日と祝日、1日5回の入れ替え制で、利用日の2週間前までの予約が必要である。

小川酒造へは、JR倉吉駅から日本交通の広瀬線バスに乗り、「河原町」で降りて歩いて5分ほど(鳥取県の案内)。車なら駅から約15分だが、屋敷の前の道は午前7時から午後5時まで一方通行で、東から西へは入れない。宿の案内に従い、西側の小鴨橋東交差点の方から回り込む。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000889
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造ビン詰場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000890
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造旧仕込蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000891
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造槽場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000892
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造二階蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000893
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造三階蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000894
国指定文化財等データベース(文化庁):小川酒造道具蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000895
とっとり文化財ナビ(鳥取県):小川家住宅
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/81801E062D55083349257E200010AB92
鳥取県教育委員会:教育委員会報告事項(平成22年5月27日)
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/502089/220527houkokuka.pdf
倉吉市:国登録文化財
https://www.city.kurayoshi.lg.jp/4237.htm
倉吉市:県指定文化財
https://www.city.kurayoshi.lg.jp/4249.htm
小川記念館財団:小川氏庭園 環翠園とは
https://www.kansuien.jp/html/about.html
風の 倉吉 公式サイト
https://www.kazenoheritage.jp/hotels/kurayoshi/
風の 倉吉:お部屋
https://www.kazenoheritage.jp/hotels/kurayoshi/rooms/
風の 倉吉:行き方
https://www.kazenoheritage.jp/hotels/kurayoshi/directions/
風の 倉吉:お知らせ
https://www.kazenoheritage.jp/hotels/kurayoshi/news/

最終更新日: 2026.09.30

基本情報

名称小川酒造
所在地鳥取県倉吉市河原町1969
指定登録有形文化財 7件
座標35.42943, 133.81197