天神川の山裾に鎮まる立川稲荷神社

立川稲荷神社は、鳥取県鳥取市立川町4丁目にある神社で、寛保元年(1741年)建築の拝殿及び幣殿と、大正10年(1921年)建築の本殿・中門の3棟が、平成26年(2014年)12月19日に国の登録有形文化財に登録された。

読みは「たちかわいなりじんじゃ」。鳥取県神社庁の名簿では社名を「稻荷神社」とし、「立川稲荷」を通称として載せている。祭神は保食神(うけもちのかみ)と菅原道眞命の2柱で、旧社格は村社。鳥取県の文化財ページは、もとは立川村の産土神(うぶすながみ)であったと紹介している。

社地は天神川の北岸、山の裾にあり、石段およそ50段を上った先に社殿が南西を向いて並ぶ。神社庁の記載では境内の広さは約3,700平方メートル。よく茂った照葉樹の林に囲まれ、イヌマキ(幹周り約2.6メートル)やモミ、ヒノキ、スギの大木が残る。本殿の裏には「延命水」と呼ばれる小さな滝がある。

立川稲荷神社の成り立ち:稲荷社と北野神社の合祀

立川稲荷神社の創立年代は分かっていない。神社庁の由緒によると、稲荷社はもともと今の社地から見て右手の山腹(立川町4丁目156番地)にあり、「立川稲荷」と呼ばれていた。大正7年(1918年)10月、近隣の北野神社を合祀して北野神社の社地へ移り、大正10年(1921年)7月に本殿以下すべての社殿を改築したと記されている。

合祀された北野神社にも長い来歴がある。由緒によれば、もとは備前国小島郡(いまの岡山県)の竹島山松雲寺にまつられた「竹島天神」で、岡山藩主の池田忠継・忠雄に崇敬された。寛永9年(1632年)、池田光仲が岡山から鳥取へ移封された際にこの地へ移され、社領90石が寄進されたと伝わる。鳥取に来てからも竹島天神の名で呼ばれた。いまも祭神に菅原道眞命が加わり、7月25日の夏祭を「天神祭」と呼ぶのはこの系譜による。

鳥取県の文化財ページは、大正期の合祀のあと、かつての北野神社の境内を広げて現在の敷地が造られたと説明する。文化庁のデータベースも、本殿と中門を大正10年(1921年)の建築とする一方、拝殿及び幣殿は寛保元年(1741年)の建物を大正7年(1918年)に改修したものとしている。北野神社の拝殿を残して手を入れ、稲荷社の本殿を新たに建てた経緯が、建物の年代にそのまま表れている。神社庁の「すべての社殿を改築」という記述とは、拝殿の扱いが食い違う。

神社庁の由緒には、宝暦3年(1753年)9月に鳥取藩主池田重寛が社殿を建てた記録があるとも書かれている。ただ、それが稲荷社と北野神社のどちらの、どの建物を指すのかは由緒の文面からは読み取れず、文化庁が拝殿の建築年とする寛保元年との関係も分からない。

立川稲荷神社の3棟と境内の配置

3棟は平成26年(2014年)12月19日の第79回登録で、登録番号は本殿が31-0192、拝殿及び幣殿が31-0193、中門が31-0194と続く。本殿と拝殿及び幣殿は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、中門は「造形の規範となっているもの」という基準で登録された。

石段を上ると、まず正面に唐破風の向拝を構えた拝殿が建つ。拝殿の背後に幣殿が張り出し、その奥の石段の上に中門、さらにその上に本殿が建つ。斜面に沿って、拝殿・幣殿・中門・本殿が段を追って高くなっていく並びである。文化庁の登録所在地は、本殿と中門が立川町4-218-2、拝殿及び幣殿が立川町4-68と地番が分かれている。

建築面積は拝殿及び幣殿が68平方メートル、本殿が21平方メートル。中門は間口2.4メートルの小さな門である。瓦葺の拝殿が江戸時代の装飾を見せる一方、大正の本殿と中門は金属板葺で、飾りを抑えた端正なつくりになっている。境内には元禄13年(1700年)の狛犬もあり、神社庁は県内でも最古級のものとしている。

立川稲荷神社の参拝と行き方

鳥取県の文化財ページによると、立川稲荷神社の3棟は外観の見学が自由で、内部は公開されていない。拝観料についての案内は見当たらず、境内に入って外から社殿を拝する形になる。撮影の決まりも公式の案内には書かれていないので、祈祷や祭事の最中は控えたい。

JR鳥取駅からは東へ道のりで約2.6キロ、歩いて35分ほど。車なら約2.8キロである。神社庁の名簿は住所を鳥取市立川町4丁目67としており、文化庁の登録所在地(4-218-2と4-68)とは地番が異なる。地図アプリで探すときは「立川稲荷神社」の名で検索すると見つけやすい。

例祭は5月23日、夏祭(天神祭)は7月25日。社殿まわりは石段と斜面が続くので、歩きやすい靴で訪れたい。問い合わせは稻荷神社(電話0857-23-1087)。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):立川稲荷神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010336
国指定文化財等データベース(文化庁):立川稲荷神社拝殿及び幣殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010337
国指定文化財等データベース(文化庁):立川稲荷神社中門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010338
とっとり文化財ナビ(鳥取県):立川稲荷神社本殿、拝殿及び幣殿、中門
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/67CCE23BD3E5801549257F7300060780
鳥取県神社庁:稻荷神社(通称 立川稲荷)
https://tottori-jinjacho.jp/pages/119/

最終更新日: 2026.10.04

基本情報

名称立川稲荷神社
所在地鳥取県鳥取市立川町4-218-2
所有者宗教法人稲荷神社
指定登録有形文化財 3件
座標35.49283, 134.24798