煉瓦に見える壁に、煉瓦は使われていない

城端織物組合事務棟(じょうはなおりものくみあいじむとう)は、富山県南砺市城端648-1にある昭和3年(1928年)建築の木造建築で、平成12年(2000年)12月4日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。所有者は南砺市。現在は「SHAREじょうはな織館」として使われている。

観光案内の多くが、この建物を「煉瓦造り」と紹介している。実際には違う。文化庁の記録は素っ気ないほど正確で、木造2階建、瓦葺、建築面積274平方メートル。正面は木骨モルタルにタイルを貼り、道の向かい側から見たときに煉瓦積みに読めるよう仕上げてある。側面へ回ると仕掛けは解ける。そこにあるのは、瓦屋根を載せたごく普通の木造建築の横腹である。

正面と側面のこの落差こそが、登録の理由にあたる。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」。この建物が規範として示しているのは、昭和3年の地方の生産者組合が、京都や東京から来る買い手に対して自らをどう見せようとしたか、という一点である。

検査と乾燥、あるいは検印の場として

城端は近世以来の絹の町である。浄土真宗大谷派の城端別院善徳寺の門前町として町が建てられ、背後の山間、五箇山の養蚕地帯から生糸が下りてきた。加賀藩の庇護のもとで織られた布は加賀絹として京・大坂・江戸へ運ばれ、その代金が町に戻って曳山の漆と金具になった。明治に入って織物組合が組織され、産業としての規模はさらに大きくなる。

昭和3年の事務棟は、その仕事の器だった。文化庁の解説文は用途を、組合事務および出荷のための検査と乾燥、と記す。一方、南砺市や地元観光団体が出している資料は、同じ建物を「製品の規格統一のための検査及び検印の場所」と説明している。検査という点では一致するが、それ以外の機能の記述は揃っていない。ここは丸めずに、両論を並べて記しておく。

建築当時は屋上にサイレンが設置され、町に時を告げていたという。こちらは一次資料ではなく地元資料に見える伝えである。

登録番号は16-0059、第27回登録に含まれ、登録告示は平成12年12月20日。なお用語について一点。登録有形文化財は「登録」であって「指定」ではない。この建物を「国の指定文化財」と書いた紹介文は少なくないが、指定はより厳格な上位の区分を指す。

三度目の使われ方、SHAREじょうはな織館

建物が一般に開かれたのは平成15年(2003年)春である。南砺市が事務棟を改修し、ギャラリー、ショップ、染色室を備え、2階で手織り体験のできる交流施設「じょうはな織館」として開業した。この運営がおよそ20年続いた。

令和7年(2025年)、使われ方が改まる。絹織物業の松井機業が運営を引き受け、修繕費を募るクラウドファンディングで目標250万円に対し366人から約440万円を集め、5月5日のプレオープンを経て5月9日に「SHAREじょうはな織館」としてオープンした。ベーグルを供する飲食スペース、城端の絹や端切れを使うワークショップ、住民が本棚を借りて本を貸し借りする「おり図書」などが入っている。

オープン時に告知された営業時間は11時から18時、定休日は月曜と火曜。運営主体も時間割も直前に変わっているので、古い情報のまま出かけないほうがいい。ネット上には旧「じょうはな織館」時代の10時開館・水曜休館という表記がまだ多く残っている。1階は入館無料。手織りやものづくりの体験は別料金で、従来は予約が必要だった。

アクセスはJR城端線の城端駅から徒歩12分ほど。城端線は高岡から出ている。道路をはさんだ真向かいが城端曳山会館で、城端曳山祭の曳山と庵屋台が収蔵されている。この祭りは毎年5月4日の宵祭と5日の本祭で行われ、平成14年(2002年)2月12日に国の重要無形民俗文化財に指定、平成28年(2016年)には「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。曳山を見てから、その漆代を生んだ絹を検査していた建物に立つ。順序をそうすると、町の構造が腑に落ちる。

Q&A

Q城端織物組合事務棟は見学できますか。営業時間と料金を教えてください。
A見学できます。現在は「SHAREじょうはな織館」として運営されています。令和7年(2025年)5月のオープン時に告知された時間は11時から18時、定休日は月曜・火曜、1階は入館無料です。運営主体が2025年に変わっているため、訪問前に最新情報をご確認ください。
Q城端織物組合事務棟は煉瓦造の建物ですか。
A煉瓦造ではありません。文化庁の記録では木造2階建、瓦葺です。正面のみ木骨モルタルにタイルを貼り、煉瓦造に見えるよう仕上げてあります。「レンガ造り」と紹介する案内が多いのですが、正確ではありません。
Q城端織物組合事務棟はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和3年(1928年)の建築です。登録年月日は平成12年(2000年)12月4日、登録告示は同年12月20日、登録番号は16-0059。所有者は南砺市です。
Q城端織物組合事務棟へのアクセスを教えてください。
A所在地は富山県南砺市城端648-1で、JR城端線の城端駅から徒歩12分ほどです。城端線は高岡から運行しています。道路をはさんだ向かいが城端曳山会館です。
Q城端織物組合事務棟はもともと何に使われていた建物ですか。
A文化庁の解説文では、組合事務と、出荷のための検査および乾燥を目的として建てられたとされています。南砺市や地元観光団体の資料は「製品の規格統一のための検査及び検印の場所」と説明しており、検査という点では両者が一致します。

基本情報

名称城端織物組合事務棟(じょうはなおりものくみあいじむとう)/現名称:SHAREじょうはな織館
所在地富山県南砺市城端648-1
指定区分国登録有形文化財(建造物)/登録基準:造形の規範となっているもの/登録番号16-0059
指定年登録年月日 平成12年(2000年)12月4日/登録告示 同年12月20日
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積274平方メートル/正面は木骨モルタル・タイル貼
所有者南砺市
公開状況「SHAREじょうはな織館」として公開。11時〜18時、月曜・火曜定休(2025年5月告知時点)。1階入館無料。訪問前に要確認。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「城端織物組合事務棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002032
文化遺産オンライン(文化庁)「城端織物組合事務棟」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/167342
富山県「富山県の登録有形文化財(建造物)一覧表」
https://www.pref.toyama.jp/3009/bunkazai/bunkazai_shitei_touroku/registered_building_list.html
CAMPFIRE「富山・城端の文化財『織館』を地域の交流拠点に」プロジェクトページ
https://camp-fire.jp/projects/831044/view
旅々なんと(南砺市観光)「城端曳山祭」
https://www.tabi-nanto.jp/johana_hikiyama/
南砺市文化芸術アーカイブズ「城端曳山祭(ユネスコ無形文化遺産)」
https://culture-archives.city.nanto.toyama.jp/heritages/unesco0001/

最終更新日: 2026.08.24