昭和3年竣工、砺波平野東縁の近代和風住宅
冨田家住宅は、富山県南砺市安居にある木造2階建の近代和風住宅で、昭和3年(1928年)の建築として平成16年(2004年)7月23日に国の登録有形文化財に登録された。安居寺へ向かう参道入口の左手、砺波平野の東縁に位置し、屋敷林を伴う散居の景観のなかに建つ。
建築面積は365平方メートル。入母屋造、平入、屋根は総桟瓦葺で、1階の四周に一間の下屋を廻す。桁行11間半(約21メートル)、梁間9間(約16.7メートル)とされ、砺波地方の伝統的な住宅形式を大きく引き伸ばした規模になっている。
冨田家は戦国期にさかのぼる家系で、柴田勝家、次いで豊臣秀吉に仕え、慶長20年(1615年)の大坂夏の陣ののち当地に居を構えたと伝わる。現当主は18代目にあたる。
工事の期間については資料に幅がある。南砺市の記録は大正12年(1923年)着工、昭和4年(1929年)頃竣工とし、文化庁の国指定文化財等データベースは年代を昭和3年と記す。数季にわたった普請の、どの時点を竣工とみるかの差といえる。
その普請の途中で、施主であった16代当主が没した。2階は未完成のまま残された。
登録有形文化財としての評価
登録番号は16-0072、第43回登録にあたる。登録告示は平成16年8月17日。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
評価の中心は大工技術の水準にある。全体に良材を用い、仕上げの精度が主要室から奥の部屋まで落ちない。内部の木部化粧には透き漆塗を施し、木理を隠さずに深みを与えている。建具にはガラスを多用する。大正末から昭和初期にかけて、板ガラスはなお高価な材であり、伝統的な平面のなかへ新材料を持ち込む判断がここにあったことになる。
座敷の欄間は井波彫刻による。同じ南砺市内、井波の木彫が寺院建築ではなく民家に入った初期の作例とされる。欄間彫刻という限られた面を通して、寺社を主戦場としてきた彫刻技術が住宅意匠へ転じていく過程が読み取れる。
未完成の2階は、結果として構造を露わにした。軒の出を支える桔木をはじめ、小屋組が目に見える状態で残っている。完成していれば天井裏に隠れ、二度と目に触れなかった部分である。
屋敷構えと周辺の文化財
冨田家住宅は現住の個人住宅である。内部は非公開で、見学の受付も設けられていない。観察できるのは公道からの外観に限られる。
正面に構えるのは長屋門である。江戸後期の建築で、江戸末期に当家へ移築したと伝わる。北を門口、南を真壁漆喰塗の物置とし、門口の冠木上には繰形付きの出梁が並ぶ。
主屋背面の石垣上には、土蔵造2階建の南土蔵と北土蔵が並び建つ。主屋北側には土蔵造平屋建の味噌蔵が接続する。これら4棟は令和元年(2019年)9月10日に登録され、主屋と合わせて登録建造物は5棟となった。江戸後期の長屋門、明治前期の北土蔵、昭和前期の味噌蔵と南土蔵、そして昭和3年の主屋。屋敷は約一世紀をかけて形を整えている。
交通はJR城端線福野駅が起点となる。市営バスの安居方面が平日運行で、安居寺前停留所まで10〜15分ほど。タクシーであれば15分前後。車の場合は北陸自動車道の砺波インターチェンジ、または小矢部インターチェンジから向かう。公道からの外観撮影に制限はないが、居住者のある建物であり、門内へレンズを向けることは控えたい。
坂を上って徒歩10分ほどの位置に安居寺がある。高野山真言宗の寺院で、養老2年(718年)の創建と伝わる。観音堂は富山県指定文化財。背後の安居寺公園の展望台からは、砺波平野の散居村を見渡すことができる。
Q&A
- 冨田家住宅の内部は見学できますか。
- できません。現住の個人住宅であり、内部公開も見学受付もありません。屋敷前を通る公道から外観を眺めることになります。
- 冨田家住宅はいつ建てられたのですか。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは昭和3年(1928年)と記します。南砺市の記録は大正12年着工・昭和4年頃竣工としており、数季にわたる普請であったことによる差とみられます。
- 冨田家住宅の2階が未完成なのはなぜですか。
- 施主であった16代当主が普請の途中で没したためです。2階は構造体のまま残され、軒先の桔木を含む小屋組を見ることができる状態になっています。
- 冨田家住宅で登録有形文化財になっている建物は何棟ですか。
- 5棟です。主屋が平成16年(2004年)、味噌蔵・南土蔵・北土蔵・長屋門の4棟が令和元年(2019年)9月10日に登録されました。
- 冨田家住宅へは福野駅からどう行きますか。
- JR城端線福野駅から市営バス安居方面(平日運行)で安居寺前下車、所要10〜15分。タクシーで15分前後です。車の場合は北陸自動車道の砺波インターチェンジまたは小矢部インターチェンジが最寄りとなります。
基本情報
| 名称 | 冨田家住宅(とみたけじゅうたく) |
|---|---|
| 所在地 | 富山県南砺市安居188-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号16-0072 第43回登録 |
| 指定年 | 平成16年(2004年)7月23日登録/同年8月17日告示 |
| 員数 | 1棟(主屋) ※屋敷内の登録建造物は計5棟 |
| 寸法 | 建築面積365平方メートル 桁行約21メートル、梁間約16.7メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 現住の個人住宅。内部非公開、外観のみ公道から見学可 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース — 冨田家住宅
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004228
- 文化遺産オンライン — 冨田家住宅
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/139998
- 南砺市文化芸術アーカイブズ — 冨田家住宅
- https://culture-archives.city.nanto.toyama.jp/culture/bunkazai/bunkazai0245/
- とやまの文化遺産 — 冨田家住宅
- https://toyama-bunkaisan.jp/search/2540/
- 五箇山NANTO観光機構 — 安居寺
- https://www.tabi-nanto.jp/archives/613
最終更新日: 2026.08.24