高野山西塔の創建本尊

壇上伽藍の西北に建つ西塔は、根本大塔と二基一対をなすものとして構想された塔である。大塔が胎蔵界の大日如来を中心に金剛界の四仏を配するのに対し、西塔は金剛界の大日如来を中心に胎蔵界の四仏を奉安する。現在、高野山霊宝館に収蔵されるこの木造大日如来坐像は、その西塔の元本尊であり、塔の創建当初に造立された像と考えられている。

智拳印を結ぶ金剛界大日如来である。宝冠を戴き瓔珞や条帛を着ける菩薩形をとり、密教の教主にして全宇宙そのものとされる尊格の姿をあらわす。檜材の一木造で、平安初期の造像技法をよく示す。高野山は創建以来たびたび火災に見舞われており、平安前期にさかのぼる彫像はきわめて少ない。塔の創建期に結びつくこの像は、山内に残る古像のなかでも特筆される一軀である。

指定の理由と価値

本像は昭和34年(1959)12月18日に重要文化財に指定された。西塔は弘法大師の遺志を継いだ真然大徳によって仁和年間(886〜887年頃)に完成したと伝え、本像はその当初像とみなされる。山内の平安初期像が乏しいなか、塔の成立に直結する点に大きな意義がある。頭体の根幹を一材から彫り出す一木造の構造も、平安前期の作風と整合する。

西塔は単独で完結する塔ではない。根本大塔の胎蔵大日・金剛界四仏に対し、西塔は金剛界大日・胎蔵界四仏を据える。二基を併せ読むことで、金剛界と胎蔵界という別系統の経軌が究極において一つであるとする金胎不二の教えが、立体の曼荼羅として表現される。本像はその西塔曼荼羅の中軸を担う尊像であった。

拝観の手がかり

現在、当初像は塔内にはない。保存のため霊宝館に移され、西塔の堂内には模刻像が安置されている。霊宝館は所蔵品を常時すべて公開するわけではなく、企画展・大宝蔵展に応じて入れ替えながら展示する。本像の拝観を目的とする場合は、事前に同館の展示内容を確認しておきたい。

像が出陳されていない時期でも、西塔そのものは見る価値がある。現在の塔は天保5年(1834)の再建になる擬宝珠高欄付の多宝塔で、根本大塔と並ぶ壇上伽藍の要に立つ。二基の塔の間に立つと、弘法大師が絹本ではなく堂塔と空間によって描こうとした曼荼羅の構図が、おのずと立ち上がってくる。

Q&A

Q西塔の中で当初像を拝めますか。
A当初像は保存のため霊宝館に収蔵され、塔内には模刻像が置かれています。当初像の公開は霊宝館の展示替えによります。
Q根本大塔の大日如来との違いは何ですか。
A本像は智拳印を結ぶ金剛界大日如来です。根本大塔は胎蔵界大日如来を本尊とし、両塔は対をなすよう構想されました。
Q平安初期像であることがなぜ重要なのですか。
A高野山は度重なる火災で古い像を多く失っており、塔の創建期に結びつく本像は山内屈指の古像にあたるためです。
Q壇上伽藍へのアクセスは。
A南海高野線で極楽橋へ、ケーブルで高野山駅へ進み、山内バスで伽藍周辺へ向かいます。霊宝館は伽藍から徒歩圏です。

基本情報

名称木造大日如来坐像(西塔安置)
所在地和歌山県伊都郡高野町高野山
指定区分重要文化財(昭和34年〔1959〕12月18日指定)
員数1躯
時代平安時代
品質・構造木造・一木造(檜材)
所有者金剛峯寺
管理高野山文化財保存会(高野山霊宝館収蔵)
公開霊宝館の展示替えにより異なる。西塔堂内は模刻像。事前確認を推奨。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/4769
高野山霊宝館 収蔵品紹介(大日如来)
https://reihokan.or.jp/syuzohin/hotoke/nyorai/dainichi.html
高野山真言宗 総本山金剛峯寺 高野山の見どころ
https://www.koyasan.or.jp/meguru/

最終更新日: 2026.06.22