他に例のない三尊像、丈六の巨像として伝わる

根来寺の中心に建つ大伝法堂に、三躯の金色の坐像が並んで安置されている。いずれも丈六の巨像で、中尊の像高はおよそ三・五メートルに及ぶ。中央は金剛界の大日如来、向かって右に金剛薩埵、左に尊勝仏頂を配する。尊勝仏頂は仏頂尊の一であり、彫像として造られること自体がまれである。この三尊の組み合わせを本尊とする寺は、ほかにない。

この構成は偶然ではない。同じ三尊は、本寺の前身である高野山大伝法院にも安置されていたことが知られ、こうした尊像構成は同院を開いた覚鑁(一〇九五-一一四三)の創案とみられる。覚鑁の教学はやがて新義真言宗を生み、根来寺はその総本山にあたる。

指定の理由と価値

大日如来像と金剛薩埵像の像内に銘があり、三尊の造像がおよそ嘉慶元年(一三八七)から応永十二年(一四〇五)頃にかけて行われたことが判る。室町時代の作である。文化庁は、表現に形式化が認められるとしつつ、髪際高で丈六という巨大な像容を破綻なくまとめた作者の手腕を評価する。作者を伝える史料はないが、三尊像の製作中、明徳二年(一三九一)に本寺の弘法大師像を造立した三条仏師定円、あるいは同門の仏師が想定されている。

本三尊の意義は二つある。平安後期の真言密教の高僧覚鑁の教義にもとづく特殊な三尊像の唯一の遺品であること、そして天正十三年(一五八五)の豊臣秀吉による根来攻めの戦禍を免れて今日に伝えられたことである。三尊は平成6年(一九九四)6月28日に重要文化財に指定され、令和6年(二〇二四)8月に附の指定が追加された。

根来寺を訪ねる

根来寺は、和歌山県岩出市の丘陵に広がる新義真言宗の総本山である。三尊を安置する大伝法堂は文政10年(一八二七)の再建で、これ自体が重要文化財に指定されている。その傍らには、国宝の大塔が建つ。日本最大級の多宝塔として知られ、境内は春の桜の名所でもある。

大伝法堂は拝観に開かれており、三尊を間近に見ることができる。ただし、十月下旬の法要の期間は堂内の拝観が休止され、像の撮影は認められていない。三尊を目的に訪れる場合は、事前に寺務所へ拝観時間を確認しておきたい。

Q&A

Qこの三尊像は何が特別なのですか。
A金剛界大日如来に金剛薩埵と尊勝仏頂を配する構成で、覚鑁の創案に由来します。この組み合わせは他に遺例がなく、尊勝仏頂は彫像化されること自体がまれです。
Q像の大きさはどのくらいですか。
Aいずれも丈六の巨像で、中尊の大日如来はおよそ三・五メートルに及びます。仏像のなかでも最も大きな規格にあたります。
Qいつ造られたのですか。
A像内の銘により、嘉慶元年(一三八七)から応永十二年(一四〇五)頃の室町時代の作と判ります。作者は不明ですが、三条仏師定円か同門の仏師が想定されています。
Q拝観できますか。
A大伝法堂は通常拝観に開かれています。ただし十月下旬の法要期間は休止され、撮影はできません。事前に寺務所へ確認してください。

基本情報

名称木造大日如来坐像/木造金剛薩埵坐像/木造尊勝仏頂坐像(大伝法堂安置)
所在地和歌山県岩出市 根来寺
指定区分重要文化財(平成6年〔1994〕6月28日指定/令和6年〔2024〕8月27日附追加)
員数3躯(三尊)
時代室町時代(嘉慶元年〔1387〕〜応永12年〔1405〕頃)
品質・構造木造
所有者新義真言宗総本山根来寺
公開大伝法堂は通常拝観可。10月下旬の法要期間は休止。撮影不可。事前に寺務所へ確認。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/5136
新義真言宗総本山 根来寺(公式サイト)
https://negoroji.org/

最終更新日: 2026.06.22