正門と一体でつくられた職人の部屋

神谷家住宅左官部屋及び炭部屋は、愛知県安城市和泉町にある明治38年(1905年)頃の木造平屋建で、平成20年(2008年)4月18日に国の登録有形文化財に登録された。建築面積32平方メートル、切妻造桟瓦葺。敷地南辺に、正門と一連の建物として建つ。

正門とは棟の高さを変えて区別している。この建物の棟は正門より一段高く、一方で敷地内側の庇は正門の庇と軒の高さを揃える。外に向けては差をつけ、内に向けては揃えるという二段構えの調整である。

外壁は黒塗の簓子下見板張。小壁は柱を見せる真壁造とし、漆喰で仕上げる。神谷家住宅左官部屋及び炭部屋の登録番号は23-0291である。

屋敷を維持する側の建物

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。左官部屋という名が示すとおり、ここは壁を塗る職人の作業場である。土蔵を4棟抱える屋敷では、漆喰や土の補修が絶えず必要になる。専用の部屋を設けるということは、その作業が臨時ではなく日常だったことを意味する。

炭部屋も同じ性格の空間である。暖房と煮炊きの燃料を貯えておく場所で、湿気を避けて保管する必要がある。神谷家住宅左官部屋及び炭部屋は、座敷や蔵のような見せる建物ではなく、屋敷という装置を動かし続けるための建物にあたる。

それでも外観は手を抜いていない。通りに面する南辺に建つ以上、屋敷の顔の一部だからである。

見どころ

棟の高さの操作を確かめたい。正門の棟より一段高くすることで、長く続く南辺の屋根に段差が生まれる。単調に伸びる建物列に、この段差がリズムを与えている。

壁のつくり分けも見どころである。腰から下は黒塗の簓子下見板張、その上の小壁は真壁造の漆喰仕上げ。黒い板と白い漆喰、柱の線が水平と垂直に組み合わさり、屋敷構えに落ち着いた重さを与えている。左官部屋を備えた家の外壁が丁寧に仕上げられているのは、理にかなった話でもある。

神谷家住宅左官部屋及び炭部屋の西側には渡りが続き、その先は米蔵に接続する。南辺は正門からこの建物、渡り、米蔵へと途切れず続く。屋敷の南面はひとつながりの壁面として設計されている。

見学方法とアクセス

神谷家住宅左官部屋及び炭部屋は個人が所有する住宅の一部で、内部は公開されていない。ただし敷地南辺に建ち通りに面しているため、黒い板張りの外壁と屋根の段差は公道から見ることができる。撮影は公道上からとし、門の内側へレンズを向けることは控えたい。安城市も、市内の歴史的建造物の多くが個人や私的団体の所有であるとして、見学時の配慮を求めている。

アクセスは、JR東海道本線の安城駅または三河安城駅から市のあんくるバス南部線に乗り「上之切」または「和泉丈山苑」下車。本数が少ないため時刻の確認をすすめたい。南へ徒歩7分ほどの位置には安城市の丈山苑があり、江戸初期の文人・石川丈山の生誕地に庭園と書院が設けられている。開苑は午前9時から午後5時(入苑は午後4時30分まで)、月曜日(祝日の場合は開苑)と年末年始が休みである。

Q&A

Q神谷家住宅左官部屋及び炭部屋は見学できますか。
A内部は非公開ですが、敷地南辺に建ち通りに面しているため、黒塗の板張りの外壁と屋根は公道から見ることができます。
Q左官部屋とは何をする場所ですか。
A壁を塗る職人が作業や道具の保管に使う部屋です。土蔵を複数抱える屋敷では漆喰や土壁の補修が日常的に必要になるため、専用の部屋が設けられました。
Q神谷家住宅左官部屋及び炭部屋の規模は。
A建築面積32平方メートルの木造平屋建で、屋根は切妻造の桟瓦葺です。明治38年(1905年)頃の建築とされています。
Q正門とはどのような関係にありますか。
A正門と一連の建物として建てられ、棟は正門より一段高く、敷地内側の庇は正門の庇と軒を揃えています。
Qいつ登録有形文化財になりましたか。
A平成20年(2008年)4月18日、登録番号23-0291です。同じ屋敷の14棟が同日に登録されました。

基本データ

名称神谷家住宅左官部屋及び炭部屋
所在地愛知県安城市和泉町上之切13
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2008年(平成20年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、建築面積32平方メートル
所有者個人
公開状況非公開(通り側の外観のみ公道から)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「神谷家住宅左官部屋及び炭部屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007040
文化遺産オンライン「神谷家住宅左官部屋及び炭部屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/172342
安城市「歴史的建造物」
https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/shisetsu/kyoikushisetsu/maibun-structure.html
安城市文化財図録Web版「神谷家住宅 母屋」
https://www.katch.ne.jp/~anjomuse/bunkazai_zuroku/kamiyake_jyuutaku/index.html
安城市「丈山苑」
https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/shisetsu/kyoikushisetsu/jozanen.html

最終更新日: 2026.08.30