厩が前に出た家

大山家住宅は、秋田県山本郡三種町鵜川字飯塚にある19世紀中期(江戸末期)建築の茅葺農家で、昭和48年(1973年)2月23日に国の重要文化財に指定された。文化庁のデータベースには「大山家住宅(秋田県山本郡八竜町)」として登録されている。八竜町は平成18年(2006年)の合併で三種町となったため、指定当時の町名が名称に残る形になっている。

平面はL字。東西に伸びる主屋から厩の棟が前方に突き出し、出入口はその突出部のほうに設けられる。秋田県北部ではこの形式を中門造りと呼び、突出部が馬屋である場合はとくに厩中門と呼び分ける。

馬は家族と同じ屋根の下で暮らした。情緒的な理由ではない。冬の長い地域で馬を労働力とする農家にとって、屋外に出ずに世話ができ、暖が保たれる位置に厩を置くのは合理である。厩に続く広い土間は、作業場であり、貯蔵の場であり、雪に閉ざされた季節の仕事場でもあった。

数ある中門造りのなかで、なぜこの家か

中門造りの民家は東北地方の日本海側に少なからず残る。そのなかで大山家住宅が指定を受けた理由は、形式の発展史における位置にある。文化庁の解説文は、この住宅を先行する嵯峨家住宅の発展した形式と位置づけ、さらに両中門造りへ発展する過程をも示していると記す。つまり、形そのものが年代を語る資料になっている。

解説文はもう二点を加える。中門造りの完成した時期の典型であること、そしてきわめて保存がよいこと。地元の説明では、建設当初の形態をそのまま残す点も評価されている。

格式は木組みに現れる。大山家は代々村役を務めた家柄で、この住宅には桁から軒先まで腕木を伸ばして屋根を支える「せがい」という工法が用いられている。藩の定めではせがいは上層階級の住宅にのみ許され、一般の農家には禁じられていた。ここで使われているのは隅木入せがい造で、隅木を組み込んだ形式である。

農家建築の標準からはずれる要素がほかにも二つある。窓に取り付けられた出格子は、本来は町屋建築に見られるもの。そして茅葺屋根の棟には野芝を自生させてある。棟を締め、傷みを防ぐこの手法は、秋田では珍しい。

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文化庁の記録による寸法は、主屋部が桁行21.8メートル、梁間12.1メートル。東面が入母屋造、西面が寄棟造という左右非対称の屋根をもつ。中門部は桁行6.1メートル、梁間7.3メートルの寄棟造。全体が茅葺である。

主屋の内部は、土間に続いて居住部四間、さらに座敷三間が並ぶ。作業空間から家族の空間、そして接客空間へという順序は大規模な民家の基本的な文法だが、座敷を三間確保している点には、来客を受ける機会の多かった家の性格が出ている。

実見した人が口をそろえるのは、装飾の少なさである。目を奪う彫り物のたぐいがない。三種町の説明も同じ見方をとる。意匠はきわめて簡素で、農家建築に見られる力強さよりも、洗練された美しさのほうが際立つ、と。

年代については食い違いがある。文化庁は19世紀中期、江戸末期とする。一方、地元の一部の解説にはおよそ270年前、江戸時代後期という記述も見られ、こちらだとかなり遡ることになる。一次資料である国指定文化財等データベースの記載を採るのが妥当である。

実際に見るには

自由に入れる施設ではない。住宅であり、見学には事前予約が必要になる。三種町は問い合わせ先として三種町八竜公民館(0185-85-2177)、および教育委員会生涯学習係(0185-87-2113)を案内している。見学料はかからない。

内部への立ち入りは現在制限されている。三種町の案内によれば、部屋の奥への立ち入りを制限しており、玄関口での案内となる。見学時間は9時から15時ごろとする情報があるが、いずれにせよ予約時に時間を調整することになる。撮影の可否も同時に確認しておきたい。

訪問には車が要る。最寄りのJR奥羽本線北金岡駅からは徒歩約4キロ、徒歩圏のバス停は運行本数が限られ往復の利用は現実的でない。森岳駅からは車で15分ほどである。

足を運ぶのであれば、同じ三種町内の琴丘歴史民俗資料館にある「三種の館」も合わせて訪ねたい。琴丘地域入通の旧畠山金一郎宅を移築修復した明治初頭の中門造り民家で、農具や民具も展示されている。中門造りの内部を歩いてから大山家住宅を玄関口から眺めると、どちらか一方だけを見るより像が結びやすい。こちらも見学には生涯学習係への事前連絡が必要である。

Q&A

Q大山家住宅は見学できますか。予約や料金は必要ですか?
A見学は可能ですが事前予約制で、料金はかかりません。三種町八竜公民館(0185-85-2177)または三種町教育委員会生涯学習係(0185-87-2113)へ連絡してください。現在は部屋の奥への立ち入りが制限され、玄関口での案内となります。
Q大山家住宅の所在地はどこですか。八竜町と三種町、どちらが正しいのですか?
A現住所は秋田県山本郡三種町鵜川字飯塚62番地です。文化庁のデータベースには指定当時の町名を用いた「大山家住宅(秋田県山本郡八竜町)」で登録されています。八竜町は平成18年(2006年)に合併して三種町になりました。
Q大山家住宅の中門造りとはどのような形式ですか?
A主屋から棟が前方に突き出し、その突出部に出入口を設けるL字型の平面です。秋田県北部に多く見られ、突出部が馬屋の場合は厩中門と呼ばれます。文化庁は大山家住宅を中門造りが完成した時期の典型と評価しています。
Q大山家住宅はいつ建てられ、いつ重要文化財になりましたか?
A文化庁は建築年代を19世紀中期、江戸末期としています。重要文化財の指定は昭和48年(1973年)2月23日、指定番号01875です。
Q大山家住宅へは公共交通機関で行けますか?
A実質的には困難です。最寄りのJR奥羽本線北金岡駅から徒歩約4キロあり、近くのコミュニティバスは本数が限られています。森岳駅から車で約15分というのが現実的な経路です。

基本情報

名称大山家住宅(おおやまけじゅうたく)/文化庁登録名「大山家住宅(秋田県山本郡八竜町)」
所在地秋田県山本郡三種町鵜川字飯塚62番地
指定区分重要文化財(近世以前/民家)指定番号01875
指定年昭和48年(1973年)2月23日/建築年代は19世紀中期(江戸末期)
員数1棟
寸法桁行21.8メートル、梁間12.1メートル、東面入母屋造、西面寄棟造。中門は桁行6.1メートル、梁間7.3メートル、寄棟造、茅葺
所有者文化庁データベースに記載なし(見学の窓口は三種町)
公開状況事前予約制で見学可・無料。現在は玄関口での案内に限定

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「大山家住宅(秋田県山本郡八竜町)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/166
三種町「文化」(大山家住宅・国指定重要文化財)
https://www.town.mitane.akita.jp/soshikikarasagasu/kyoikuiinkaijimukyoku/2/229.html
文化遺産オンライン「大山家住宅(秋田県山本郡八竜町)」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/184316
三種町観光協会「国の重要文化財 大山家住宅」
https://mitanekanko.com/enjoy/大山家住宅/

最終更新日: 2026.08.11