江渡家住宅
青森県三戸郡五戸町、城下の面影を残す町の中心に、桁行24.5メートル、梁間12.0メートルという大きな茅葺の家が残る。江渡家は南部藩五戸代官所の下役を務めた給人の家柄で、この住宅は天明3年(1783年)頃、江戸時代後期の建築とされる。寄棟造の屋根が四方に勾配を下ろし、北側に正面玄関を構える。
江渡家のような家は、武士でありながら在郷に暮らし、土地を耕しながら家禄を受けた。学術的には在郷武士の住宅と呼ばれる。営農を兼ねて町なかに屋敷を構えた点に、その暮らしぶりがあらわれている。外観は地方の大型農家でありながら、内に武家の格式を備える。二つの性格を一棟のなかに収めた建物である。
重要文化財に指定された理由
江渡家住宅は昭和48年(1973年)2月23日に国の重要文化財(建造物)に指定された。評価の柱は二つある。ひとつは建設年代がほぼ天明3年頃と確かめられること。この古さの民家で年代がはっきりするのは珍しい。もうひとつは、在郷武士の家の形式が完成された姿で残っていることである。
土間から続いて居住用の四間が並び、その先に接客用の座敷四間が置かれる。日常を営む側と、客を迎える格式の側とがはっきり分かれる。この構成こそが、家格を持つ郷士の住まいの特徴である。江渡家は郷士の家柄にふさわしい規模を持ち、用いられた材も質が高い。
見どころ
道から見上げると、まず大きな屋根が目に入る。四方に勾配を持つ寄棟造で、厚い茅に覆われ、軒が長く続く。正面玄関が北側に開く点も覚えておきたい。客が表の通りから座敷へ進む動線が、この向きによって決まっていた。
建物の見え方は、立つ位置によって変わる。全体を眺めれば地域の大型農家に見え、部屋ごとに追っていくと座敷の連なりが武士の家であることを示す。この二面性を同時に味わうのが、この家を見る楽しみといえる。
訪ねる前にひとつ確かめておきたい。内部は公開されておらず、見学は外観のみである。それでも外から学べることは多い。屋根の架構、軒の出、一棟が二つの社会的役割を担った造り。室内を歩くことを期待するより、外観をじっくり眺める前提で予定を組むとよい。
五戸の町と周辺
五戸は慶長以後に南部氏の領となり、南部藩はここに代官所を置いた。五戸代官所はこの地方の15村、一万五千石を治め、司法・行政・警察の権限を統括していた。江渡家がこの代官所に勤めたという経歴が、住宅の格を支えている。
歩いてほど近いところに、武士住宅の様式を備えた旧圓子家住宅が残る。その敷地には推定樹齢750年、日本最古ともいわれるカシワの木が立つ。格天井に極彩色の植物を描いた寶福寺なども近く、二つの住宅と寺を一日でまわることができる。
多くの来訪者は八戸方面から訪れる。JR八戸駅から南部バスの五戸行きに乗ると、約30分で「荒町」に着き、降りればすぐ目の前である。自動車なら駅から約25分、八戸自動車道八戸北インターからは約30分の道のりとなる。
Q&A
- 建物の中を見学できますか。
- 内部は公開されていません。見学は外観のみとなります。屋根や全体の規模、佇まいは外からよく見ることができます。
- いつ頃建てられた家ですか。
- 天明3年(1783年)頃、江戸時代後期の建築とされます。年代がほぼ確かめられている点が、この住宅の価値の一つです。
- 江渡家とはどのような家柄ですか。
- 南部藩から家禄を受けた給人で、五戸代官所の下役を務めました。在郷に暮らし、営農も兼ねた在郷武士の家柄です。
- アクセス方法を教えてください。
- JR八戸駅から南部バス五戸行きに乗り、「荒町」で下車してすぐです。所要約30分。自動車なら駅から約25分です。
- 近くに見どころはありますか。
- 武士住宅様式の旧圓子家住宅(古いカシワの大木があります)や、格天井の絵で知られる寶福寺などが近くにあります。
基本情報
| 名称 | 江渡家住宅(えどけじゅうたく) |
|---|---|
| 所在地 | 青森県三戸郡五戸町字荒町17番地1 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年月日 | 昭和48年(1973年)2月23日 |
| 指定番号 | 01873 |
| 種別 | 近世以前/民家 |
| 時代 | 江戸後期・天明3年(1783年)頃 |
| 構造及び形式 | 桁行24.5m、梁間12.0m、寄棟造、茅葺、北正面玄関付 |
| 員数 | 1棟 |
| 公開状況 | 外観のみ見学可(内部非公開) |
| アクセス | JR八戸駅から南部バス五戸行きで「荒町」下車(約30分)。車で駅から約25分 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/87
- 江渡家住宅(VISITはちのへ観光物産サイト)
- https://visithachinohe.com/spot/etokejutaku/
- 名所旧跡(五戸町観光協会 まるっとごのへ)
- https://www.gonohe-kankou.jp/tourism/historic_spot/
最終更新日: 2026.06.03