石で組まれた門、鳥居に似た輪郭
更上閣門(こうじょうかくもん)は、青森県八戸市大字本徒士町5-4の更上閣敷地東南部に建つ大正8年(1919年)頃の石造門で、平成15年(2003年)に国の登録有形文化財となった。
邸宅の門といえば木造が通例であるところ、この門は石材を中心に築かれている。間口2.7メートル、左右には袖塀が伸びて敷地境界と一体化する。背後に控える主屋が木造であることを思えば、材料の選択は経済的な妥協ではなく、意図の表明と受け取れる。
特徴は頂部の処理にある。笠木の先端部に反りがつけられ、正面から見た輪郭が鳥居を思わせる。神社の参道を歩いたことのある人なら、一目で気づく形である。門そのものは鳥居ではない。輪郭だけを借りている。
両側の通用口は脇障子風に扱われ、小壁は羽目板状につくられる。脇障子も羽目板も本来は木造の語彙であり、それを石材で写している。大規模邸宅にふさわしい構えという評価は、この置き換えの手際に対するものだろう。
主屋とは異なる登録基準
門と主屋は同日、平成15年9月19日に登録され、告示は同年10月17日、第38回登録である。登録番号は門が02-0024、主屋が02-0023。両者を分けるのは、適用された登録基準である。
登録有形文化財制度は平成8年(1996年)に発足し、三つの登録基準のいずれかに該当する建造物を対象とする。主屋には「造形の規範となっているもの」が適用された。門に適用されたのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物単体の完成度ではなく、街並みの中での働きが評価されたことになる。
この判断は現地に立つと納得がいく。本徒士町は八戸城の南西に置かれた武家町だった。呉服商から醤油の製造販売、繊維工場、泉山銀行へと事業を広げた泉山家がこの門を築いた大正8年頃、周辺はすでに近代の市街地へと姿を変えていた。通りを歩く者が必ず目にするのは、主屋ではなく門である。敷地の間口を規定し、公私の境を示し、一世紀以上その位置を動かずにきた石の構造物が、街区の景観を支えてきた。
門と主屋を別々の基準で登録した点は、両者が一組の構成として設計されたことを裏側から示している。近代和風の大邸宅では、門から玄関へ至る道筋そのものが計画の対象だった。
門の前で立ち止まる
くぐる前に、いったん止まりたい。門は主屋玄関棟の正面東側に位置し、二つは正対する。外から見ると、石の枠が背後の玄関を切り取る。二軒半繁垂木の軒も、虹梁形の頭貫も、この額縁越しに現れる。偶然の効果とは考えにくい。
視線を上端に置いて笠木の反りを確かめ、次に両脇の通用口、そして小壁の羽目板状の仕上げへと降ろしていく。木造建築からの引用が三つ、間口3メートル足らずの中に収まっている。
門の外側には更上閣にぎわい広場がある。第2期八戸市中心市街地活性化基本計画にもとづき、平成30年(2018年)2月に整備された広場で、ベンチと芝生が門に向き合う。道を隔てた位置から門をじっくり眺められるようになったのは、それほど古い話ではない。毎年6月と10月には、キッチンカーや中心街の飲食店が出店する「更上閣ガーデンレストラン・ヨルニワ」が開かれる。
門をくぐることに料金はかからない。貸館の予約が入っていない日は敷地内を無料で見学でき、時間は午前9時から午後9時まで、夜間の申込がない日は午後5時に閉館する。休館日は12月28日から1月4日。駐車場は11台分。通りや広場からの撮影に制限はない。
この門が最も多く写されるのは2月である。「お庭えんぶり」の観客が、日の落ちた石の門を抜けて庭へ向かう。かがり火のもとで太夫が舞い、座敷から甘酒と八戸せんべい汁を手にそれを見る。八戸えんぶりは国の重要無形民俗文化財で、例年2月17日から20日ごろに行われる。
交通はJR八戸線本八戸駅から徒歩約15分。問い合わせは更上閣(0178-22-2260、平日午前9時から午後5時)へ。
Q&A
- 更上閣門はいつでも見られますか。見学料はかかりますか。
- 門は道路と更上閣にぎわい広場に面しているため、外観はいつでも無料で見学・撮影できます。門をくぐって敷地に入る場合も無料で、時間は午前9時から午後9時まで(夜間の利用申込がない日は午後5時閉館)です。
- 更上閣門はなぜ鳥居のような形に見えるのですか。
- 頂部の笠木の先端部に反りをつけているためです。両側の通用口も脇障子風に扱われており、社寺建築の要素を私邸の門に取り入れています。主屋の玄関棟が社寺の技法を用いている点とも呼応します。
- 更上閣門の構造と規模を教えてください。
- 石造で、間口2.7メートル、左右に袖塀が付きます。員数は1棟、年代は大正8年(1919年)頃と文化庁の国指定文化財等データベースに記載されています。
- 更上閣門は主屋とは別に登録されているのですか。
- 別登録です。登録日は主屋と同じ平成15年9月19日ですが、登録番号は門が02-0024、主屋が02-0023。適用基準も異なり、門は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、主屋は「造形の規範となっているもの」です。
- 更上閣門へのアクセスを教えてください。
- JR八戸線本八戸駅から徒歩約15分です。東北新幹線が停まる八戸駅からは距離があるため、市街地側の本八戸駅が便利です。駐車場は11台分あります。
基本データ
| 名称 | 更上閣門(こうじょうかくもん) |
|---|---|
| 所在地 | 青森県八戸市大字本徒士町5-4 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 02-0024 |
| 指定年 | 平成15年(2003年)9月19日登録、同年10月17日告示(第38回) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 石造、間口2.7メートル、左右袖塀付 |
| 所有者 | 八戸市 |
| 公開状況 | 公開。外観は通りから常時見学可、敷地内は午前9時から午後9時(夜間申込がない日は午後5時閉館)、12月28日から1月4日休館 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 更上閣門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003494
- 文化遺産オンライン 更上閣門
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/116374
- 青森県 登録有形文化財 更上閣門
- https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kyoiku/e-bunka/torokuyukei_24.html
- 八戸市 八戸市更上閣・更上閣にぎわい広場
- https://www.city.hachinohe.aomori.jp/soshikikarasagasu/bunka/bunka/03/6454.html
最終更新日: 2026.08.13