宮小路町の土塁道に建つ武家住宅

旧武居家住宅主屋は、千葉県佐倉市宮小路町にある江戸時代後期の武家住宅で、平成28年(2016年)8月1日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。木造平屋建、銅板葺、建築面積76平方メートルの一棟。所有者は佐倉市で、登録番号は12-0187、第84回の登録にあたる。

土塁と生垣が続く細い通りに、武家屋敷が三棟並ぶ。旧河原家住宅(宮小路町57)、旧武居家住宅(同60)、旧但馬家住宅(同61)である。三棟とも佐倉藩士の住まいだが、文化財としての位置づけは揃っていない。旧河原家住宅は千葉県指定有形文化財、旧但馬家住宅は佐倉市指定有形文化財、そして旧武居家住宅が国の登録有形文化財。国・県・市という三つの制度が、数十メートルのあいだに並ぶ。

屋敷地の来歴は、佐倉市の調査でかなり細かく追える。斉藤氏の屋敷だった土地に、文政5年(1822年)前後には依田平内が入り、続いて服部用太郎が住んだ。万延元年(1860年)以前から明治初期にかけては田島伝左衛門・田島育太郎の屋敷で、当時の呼称は佐倉城外54番屋敷である。その後数人の手を経て、明治33年(1900年)に武居氏がこの住宅を取得した。建物が現在地へ移築復元されて公開が始まったのは平成9年(1997年)で、文化庁のデータベースにも「1997移築」と記録されている。建てられた場所と、いま建っている場所は別なのだ。

屋根は銅板で葺かれている。同じ通りの旧河原家住宅が茅葺であることと比べると、遠目にも印象が違う。

二列の平面と、長押のない座敷

登録の根拠となった基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説は、この住宅の平面を「接客と生活空間を二列に分けた」と要約している。表向(おもてむき)と日常の暮らしの場がそれぞれ独立した列をなし、しかも列ごとに入口が設けられる。客を迎える動線と家族の動線が交わらない構成で、武家住宅という建物種別の性格が、そのまま間取りとして立ち上がっている。

柱の立て方にも古い形式が残る。木柄の細い柱を一間(約1.8メートル)ごとに立てる手法は、江戸後期の住宅としてはむしろ前の時代に属するものだ。

座敷に長押(なげし)を付けない点も見落とせない。長押は柱と柱を水平に繋ぐ化粧材で、書院造の座敷では格式を示す部材として扱われてきた。それを省き、表向の占める面積そのものも小さく抑えている。飾りを削った造りから、この家に暮らした藩士の身分がおおよそ読み取れる。佐倉市はこの建物を「佐倉藩の中級藩士の住宅遺構」と位置づけ、文化庁は「比較的小規模な武家住宅の遺構として貴重」と評価している。表現は違うが、指している方向は同じである。

登録有形文化財は、国宝や重要文化財とは制度そのものが異なる。築50年を経た建造物のうち一定の評価を得たものを国が登録し、現状変更は原則として届出で足りる、緩やかな保護の枠組みだ。使いながら残すことを前提とした制度と言い換えてもいい。同じ通りに国・県・市の三段階が並ぶ宮小路町は、その制度の重なりを歩きながら確かめられる、めずらしい場所になっている。

見学のしかたと、周辺の歩き方

佐倉武家屋敷の開館時間は午前9時から午後5時で、入館受付は午後4時30分まで。休館日は月曜日と年末年始(12月28日から1月4日)で、月曜が祝日にあたる場合は翌火曜が休館に振り替わる。入館料は武家屋敷のみなら一般250円、学生120円。武家屋敷・旧堀田邸・佐倉順天堂記念館をまわれる三館共通入館券は一般600円、学生300円で、当日限り各館1回ずつ使える。支払いは現金のみで、キャッシュレス決済には対応していない。土曜・日曜・祝日は小中学生が無料になる。

旧武居家住宅では、移築の際に出土した武家屋敷関連の資料が展示されている。建物の中に入って見学できることは佐倉市も明記している。ただし三棟の公開のしかたは同じではなく、旧河原家住宅は年6回の特別公開時に内部へ入れるという扱いになっている。訪問前に佐倉市文化課の案内を確認しておくと確実だ。無料のボランティアガイドも用意されており、受付票を提出すれば案内を頼める。

アクセスは鉄道が使いやすい。JR佐倉駅から徒歩約15分、京成佐倉駅からは徒歩約20分。バスなら「宮小路町」で降りて徒歩約5分になる。車の場合、屋敷の並ぶ通りに普通車10台分の駐車場があるが、大型車はこの通りに進入できない。佐倉城大手門跡広場駐車場に停め、ひよどり坂またはくらやみ坂を経由して徒歩約9分で歩く方法もある。階段を避けたいならくらやみ坂を選ぶとよい。

撮影については、佐倉市が文化財施設での撮影利用に関する案内を別に設けている。ロケや番組の撮影が入る日もあるため、静かに見たい人は平日を選ぶのが無難だろう。

竹林に挟まれたひよどり坂、佐倉城址公園、国立歴史民俗博物館、旧堀田邸。半日あれば徒歩で繋げられる範囲に収まっている。旧武居家住宅は日本遺産「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」の構成文化財にも数えられており、佐倉・成田・佐原・銚子を横断するストーリーの一部として位置づけられている。

Q&A

Q旧武居家住宅主屋は見学できますか。開館時間と入館料は。
A見学できます。佐倉武家屋敷として公開されており、開館時間は午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)。休館日は月曜日(祝日の場合は翌火曜日)と12月28日から1月4日です。入館料は武家屋敷のみで一般250円、学生120円。武家屋敷・旧堀田邸・佐倉順天堂記念館の三館共通入館券は一般600円、学生300円です。支払いは現金のみで、土曜・日曜・祝日は小中学生が無料になります。
Q旧武居家住宅主屋へのアクセス方法と、駐車場はどうなっていますか。
AJR佐倉駅から徒歩約15分、京成佐倉駅から徒歩約20分です。バスの場合は「宮小路町」下車で徒歩約5分。車では東関東自動車道佐倉インターチェンジから約10分で、屋敷の並ぶ通りに普通車10台分の無料駐車場があります。大型車はこの通りに進入できないため、佐倉城大手門跡広場駐車場を利用し、ひよどり坂かくらやみ坂を経由して徒歩約9分で向かいます。
Q旧武居家住宅主屋は国宝や重要文化財とどう違うのですか。
A旧武居家住宅主屋は「登録有形文化財」で、国宝や重要文化財の「指定」とは制度が異なります。登録有形文化財は築50年以上の建造物のうち一定の評価を得たものを国が登録する仕組みで、現状変更は原則として届出で足り、使いながら保存することを前提としています。同じ通りの旧河原家住宅は千葉県指定有形文化財、旧但馬家住宅は佐倉市指定有形文化財で、三棟で保護制度の段階が異なります。
Q旧武居家住宅主屋の中では何が見られますか。
A移築にともなって出土した武家屋敷関連の資料が展示されています。建物そのものも見どころで、接客の場である表向と日常の生活空間を二列に分けた平面、列ごとに設けられた入口、一間ごとに立つ細い柱、長押を用いない簡素な座敷などが確認できます。無料のボランティアガイドに解説を頼むこともできます。
Q旧武居家住宅主屋はいつ現在の場所に移されたのですか。
A平成9年(1997年)に移築復元が完了し、公開が始まりました。建物自体は江戸時代後期(18世紀半ばから19世紀前半)の建築です。屋敷地の記録では、明治33年(1900年)に武居氏がこの住宅を取得しており、それ以前は田島伝左衛門・田島育太郎らの屋敷でした。
Q旧武居家住宅主屋の周辺には他に何がありますか。
A竹林の切通しであるひよどり坂がすぐ近くにあり、佐倉城址公園、国立歴史民俗博物館、旧堀田邸(国重要文化財・名勝)も徒歩圏です。武家屋敷から旧堀田邸までは徒歩約20分。旧武居家住宅は日本遺産「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」の構成文化財にも含まれています。

基本データ

名称旧武居家住宅主屋(きゅうたけいけじゅうたくしゅおく)
所在地千葉県佐倉市宮小路町60
指定区分国登録有形文化財(建造物)/登録基準「造形の規範となっているもの」/登録番号12-0187
指定年平成28年(2016年)8月1日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、銅板葺、建築面積76平方メートル
所有者佐倉市
公開状況佐倉武家屋敷として公開。午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜・年末年始休館。入館料一般250円、学生120円(三館共通券 一般600円、学生300円)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 旧武居家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011073
文化遺産オンライン ― 旧武居家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/288920
佐倉市 ― 【旧武居家住宅】【旧平井家住宅】〔国 登録有形文化財〕
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/bunkaka/bunkazai/sakurabunkazai/3807.html
佐倉市 ― 【佐倉武家屋敷】(旧河原家住宅・旧但馬家住宅・旧武居家住宅)
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/bunkaka/bunkazai/sisetsu/buke/3032.html
千葉県教育委員会 ― 県内の登録有形文化財
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/touroku/touroku.html

最終更新日: 2026.08.19