醤油醸造家・柏屋の屋敷と邸内社

茂木七郎右衛門家住宅は、千葉県野田市野田にある醤油醸造家・茂木七郎右衛門家の屋敷で、江戸時代後期から大正9年(1920年)にかけて建てられた建物18件が、平成30年(2018年)3月27日に国の登録有形文化財となった。住まいとしての主屋・書院・土蔵・門塀と、屋敷神として祀られてきた琴平神社の社殿がひとつの敷地にまとまって残っている。

茂木七郎右衛門家は「柏屋」の屋号で、安永元年(1772年)から醤油を造ってきた家である。明治20年(1887年)に野田醤油醸造組合が結成されると5代茂木七郎右衛門が頭取に就き、大正6年(1917年)に野田の醸造家が合同して野田醤油株式会社を設立した際には6代茂木七郎右衛門が社長となった。野田醤油株式会社は、現在のキッコーマン株式会社にあたる会社である。

屋敷の東隣には琴平神社の境内がある。寛政元年(1789年)、2代茂木七郎右衛門が讃岐の金刀比羅宮から分祠したのが始まりとされ、家の神として祀られながら、明治時代以降は地域の人々の信仰も集めるようになった。

18件の内訳

登録番号は12-253から12-270まで連続している。千葉県はこれを「17棟1基」と数えており、1基にあたるのは煉瓦塀である。内訳を用途ごとに並べると次のようになる。

  • 住まいの棟:主屋、書院、新座敷
  • 土蔵:本蔵、新蔵、向蔵、奥文庫蔵、穀物蔵
  • 門:正門、内門
  • 塀:煉瓦塀、書院北・東側土塀、書院南側板塀
  • 琴平神社:本殿、神楽殿、額殿(絵馬殿)、手水舎、琴平蔵

年代の幅は広い。もっとも古いのは江戸時代後期とされる本蔵と奥文庫蔵で、琴平神社の本殿と手水舎は明治5年(1872年)、主屋は明治中期、書院は明治38年(1905年)の建築である。いちばん新しい神楽殿は大正9年に建った。江戸時代後期から大正時代まで、代を重ねるごとに建て増されてきた屋敷ということになる。

登録の基準も2種類に分かれる。主屋と書院の2件は「造形の規範となっているもの」、残る16件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。個々の建物の造りが評価されたのは住まいの中心の2棟で、それ以外の蔵や塀、社殿は屋敷全体の景観を形づくる一部として評価されている。

屋敷の配置と、火と盗みへの備え

主屋は敷地の北西寄りに南を向いて建つ。玄関の南東には内門が開き、左右に延びる板塀が主屋の前庭を区切る。主屋の北面東端からは渡廊下が延びて書院につながり、書院の北と東は高い土塀、南は庭を囲む板塀で守られている。主屋の背後には本蔵と新蔵が並び、関西風の造りとされる新座敷の背面側に奥文庫蔵が建つ。新蔵と奥文庫蔵をL字に結び、さらに敷地の北辺を区切るのが煉瓦塀である。

配置を追っていくと、この屋敷が火事と盗難にどれほど神経を使っていたかが見えてくる。煉瓦塀も書院北・東側土塀も高さは4メートルを超え、本蔵は壁の中に砂利を詰めて防火と防犯を図っている。新座敷は背面側を大壁や鉄板張にして火に備えた。醤油の商いで蓄えた財と帳簿を守ろうとする意識が、住まいのかたちにそのまま表れている。

琴平神社の境内は屋敷の東隣にあり、本殿は南を向く。本殿の南東に手水舎、本殿と神楽殿の間に額殿(絵馬殿)、本殿の西方に祭礼の道具を納める琴平蔵が建つ。穀物蔵だけは屋敷を囲む塀の外側に出ており、琴平神社へ向かう参道の脇に位置している。千葉県の解説によれば、本殿・神楽殿・額殿・手水舎はいずれも立川流の宮大工、佐藤庄助則久と里次則莊(さとじのりたけ)の手になる。

見学とアクセス

茂木七郎右衛門家住宅は現在も住まいとして使われている。野田市は、敷地に入ることも建物の内部を見ることもできないと案内している。住宅部分の建物について外から目に入るのは、門や塀など敷地の外周に面したものに限られる。住まいであることを考え、門や塀の隙間から内部を撮影するようなことは控えたい。

例外は琴平神社で、一般の参拝のために毎月10日に門が開かれる。この日には境内の本殿・神楽殿・額殿・手水舎と、本殿の西方にある琴平蔵を外から見ることができ、参道脇の穀物蔵も参拝の道すがら目にすることになる。開門の時間帯や、境内での撮影の可否について野田市の案内には記載がないため、当日の掲示に従ってほしい。

最寄りのバス停は「キッコーマン前」で、野田市のコミュニティバス「まめバス」の9愛宕ルート・11南循環ルート・12新南ルートと、茨急バスが停まる。バス停からは歩いて約2分である。茨急バスには東武アーバンパークラインの野田市駅を発着する路線がある。問い合わせ先は野田市生涯学習部生涯学習課(電話04-7123-1366)。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)茂木七郎右衛門家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012108
国指定文化財等データベース(文化庁)茂木七郎右衛門家住宅琴平神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012121
国指定文化財等データベース(文化庁)茂木七郎右衛門家住宅煉瓦塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012118
千葉県 茂木七郎右衛門家住宅主屋ほか
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/q111-103.html
野田市 茂木七郎右衛門家住宅(もぎしちろうえもんけじゅうたく)
https://www.city.noda.chiba.jp/kurashi/kyoiku/bunka/1000585/1017161.html
野田市 茂木七郎右衛門家住宅などが国の登録有形文化財に
https://www.city.noda.chiba.jp/kurashi/oshirase/kyoikubunka/1012398.html
野田市 市民会館(旧茂木佐平治邸)建築100周年記念事業 企画展資料
https://www.city.noda.chiba.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/042/112/100syunen.pdf

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称茂木七郎右衛門家住宅
所在地千葉県野田市野田339ほか
所有者個人(住宅部分)、宗教法人琴平神社(琴平神社の4棟)
指定登録有形文化財 18件
座標35.94438, 139.86331