はじめに

茨城県取手市米ノ井の静かな住宅地に佇む竜禅寺三仏堂は、室町時代の面影を今に伝える貴重な仏堂です。取手市内で唯一の国指定重要文化財であり、三方に裳階(もこし)を備えた他に類を見ない建築形式と、平将門伝説にまつわる深い歴史が、訪れる人々を中世の世界へと誘います。茅葺き屋根の優美な曲線と、禅宗様と和様が融合した建築様式は、関東地方における中世建築の貴重な証人です。

歴史的背景

竜禅寺は天台宗の古刹で、延長2年(924年)に伝誉大阿闍梨が三仏堂を道場として開いたのが始まりと伝えられています。山号「米井山」は、承平年間(937年)に平将門が武運長久を祈願して参詣した際、堂前の井戸から米が湧き出たという伝承に由来します。この吉兆に感じた将門は、龍禅寺の堂宇を建て直したとも言われています。さらに別の伝承では、将門の母が竜禅寺に子宝祈願を行い、将門自身が三仏堂の前で生まれたとも語り継がれています。

現在の三仏堂は建築様式から室町時代後期、16世紀前半の建立と推定されています。昭和60年(1985年)1月から昭和61年10月にかけて行われた解体修理の際に、永禄12年(1569年)の墨書のある木札が発見され、少なくともこの年には三仏堂が建立されていたことが裏付けられました。昭和51年(1976年)5月20日に国の重要文化財に指定されています。

文化財指定の理由

竜禅寺三仏堂が重要文化財に指定された理由は複数あります。第一に、建造当時の部材が軒先に至るまで極めて良好な状態で保存されており、旧痕跡も明瞭で当初の状態がよくわかる点です。第二に、正面を除く三方(両側面と背面)に裳階を付けるという平面形式は、他の現存建築に類例がなく、極めて特異な構成を持つ点です。第三に、禅宗様と和様が混合した建築様式は、関東地方における中世から近世にかけての建築の流れを知る上で非常に貴重な遺構である点が評価されました。

建築の見どころ

三仏堂は寄棟造・茅葺きの一重仏堂で、桁行三間(約6.4メートル)、梁間四間(約7.3メートル)の規模を持ちます。内部は正面寄りの一間を外陣、後方を内陣とし、内陣には禅宗様の須弥壇が置かれ、堂名の由来となった釈迦如来・阿弥陀如来・弥勒菩薩の三体の仏像が安置されています。この三仏はそれぞれ過去・現在・未来を象徴するとされます。

最大の特徴は、正面以外の三方を巡る裳階です。この裳階によって二重の軒が生まれ、茅葺き屋根の優美な曲線を一層際立たせています。組物は出組と平三斗を用い、木鼻と板蟇股に簡素な彫刻を施していますが、彩色は施されておらず、素朴で格調高い佇まいです。解体修理の際には、部材の至るところに梵字で経文が書かれていることが判明し、さらに仏壇下の地下から壺が発見されるなど、建立時の信仰の深さを物語る貴重な発見がありました。

拝観案内

三仏堂は竜禅寺の境内に位置しており、境内への立ち入りはいつでも自由で、拝観料は無料です。三仏堂の外観は自由に見学できますが、周囲には柵が設けられており、縁側に上がったり内部に入ったりすることはできません。内部の拝観を希望される場合は、事前にお寺へご連絡ください(電話:0297-78-8225)。特別公開が開催されることもありますので、最新の情報は取手市教育委員会埋蔵文化財センター(電話:0297-73-2010)にお問い合わせください。

最寄り駅は関東鉄道常総線の稲戸井駅で、駅から徒歩約10分(約700メートル)です。お車でお越しの場合は、参拝者用の無料駐車場をご利用いただけます。

周辺の見どころ

取手市とその周辺には、文化財愛好家にとって魅力的なスポットが点在しています。JR取手駅東口から徒歩約5分の長禅寺は、同じく平将門ゆかりの臨済宗寺院で、全国に5棟しか現存しない「さざえ堂」形式の三世堂(茨城県指定文化財)が見どころです。旧取手宿本陣染野家住宅は、旧水戸街道に残る本陣建築の中で最も古く最大規模を誇り、茨城県指定文化財・市指定史跡として内部が公開されています。キリンビール取手工場では工場見学が楽しめるほか、利根川の小堀の渡しでは昔ながらの渡し船体験ができます。春には北浦川緑地公園の桜並木も見事です。

Q&A

Q三仏堂に祀られている三体の仏像は何ですか?
A釈迦如来・阿弥陀如来・弥勒菩薩の三体が安置されています。それぞれ過去・現在・未来を象徴するとされ、一木から造立されたと伝えられています。
Q三仏堂の建築の何が珍しいのですか?
A正面を除く三方(両側面と背面)に裳階(もこし)を備えている点が最大の特徴です。このような形式の建物は他に例がなく、日本唯一の構成とされています。
Q三仏堂の内部は見学できますか?
A通常は周囲に柵があり内部には入れませんが、事前にお寺に連絡すれば案内していただける場合があります(電話:0297-78-8225)。不定期で特別公開が行われることもあります。
Q竜禅寺へのアクセス方法を教えてください。
A関東鉄道常総線の稲戸井駅から徒歩約10分(約700メートル)です。お車の場合は参拝者用の無料駐車場があります。
Q平将門と竜禅寺の関係は?
A伝承によると、平将門が武運長久を祈願した際に堂前の井戸から米が湧き出たとされ、これが山号「米井山」の由来です。また、将門がこの地で生まれたという伝説も残されています。

基本情報

名称 竜禅寺三仏堂(りゅうぜんじさんぶつどう)
指定 国指定重要文化財(昭和51年5月20日指定)
建立年代 16世紀前半(室町時代後期)、永禄12年(1569年)以前
構造 桁行三間、梁間四間、一重、両側面及び背面裳階付、寄棟造、茅葺(裳階板葺)
宗派 天台宗
本尊 釈迦如来・阿弥陀如来・弥勒菩薩
所在地 茨城県取手市米ノ井467
アクセス 関東鉄道常総線 稲戸井駅より徒歩約10分
拝観料 無料(外観見学)
お問い合わせ 竜禅寺:0297-78-8225 / 取手市埋蔵文化財センター:0297-73-2010

参考文献

取手市公式サイト「(国指定文化財)竜禅寺三仏堂」
https://www.city.toride.ibaraki.jp/maibun/bunkakatsudo/rekishi/shitebunkazai/ryuzenji.html
取手市観光協会「国指定重要文化財 竜禅寺三仏堂」
https://www.toride-kankou.net/page/page000043.html
茨城県教育委員会「竜禅寺三仏堂」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/kuni-24/
文化遺産オンライン「竜禅寺三仏堂」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/177633
Wikipedia「竜禅寺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%9C%E7%A6%85%E5%AF%BA
文化遺産見学案内所「重要文化財|竜禅寺 三仏堂」
https://bunkaisan.exblog.jp/29415206/
茨城の旅「龍禅寺三仏堂(取手市)」
https://www.ibatabi.com/toride/ryuu.html

最終更新日: 2026.04.07