坂本総本店店舗:明治の面影を残す土蔵造りの老舗菓子店

千葉県匝瑳市八日市場の旧街道沿いに佇む坂本総本店店舗は、明治38年(1905年)に建てられた土蔵造り2階建ての商店建築です。黒漆喰塗の重厚な外壁と切妻平入の伝統的な構えが特徴的なこの建物は、平成11年(1999年)に国の登録有形文化財に登録されました。文化2年(1805年)に創業した坂本総本店は、200年以上にわたり菓子の製造・販売を続ける老舗であり、この歴史ある建物は今もなお現役の店舗として、往時の八日市場の街道景観を今に伝える貴重な存在です。

歴史的背景

坂本総本店は、文化2年(1805年)、江戸後期に創業しました。当時の八日市場一帯には茄子畑が広がっており、創業者はこの地元の茄子を砂糖漬けにした銘菓「初夢」を考案しました。この銘菓は現在に至るまで坂本総本店の看板商品の一つとして受け継がれています。

現在の店舗建物は明治38年(1905年)に建設されました。この時代、八日市場は東総地区の経済・行政・金融の中心地として栄えており、東金と銚子を結ぶ街道沿いには多くの商家が軒を連ねていました。建物の地棟下端に残された墨書からは、建設年と棟梁名(大木某)が判明しており、建築史上の貴重な記録となっています。

坂本総本店の歴史において特筆すべき出来事は、明治44年(1911年)5月の皇太子(後の大正天皇)の八日市場行啓です。この折、県知事からの依頼を受けて、千葉県特産の落花生を原料とした「落花煎餅」を創製し、献上しました。以来、落花煎餅は坂本総本店の代表銘菓として、100年以上にわたり販売が続けられています。

登録有形文化財としての価値

坂本総本店店舗は、平成11年(1999年)7月8日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録の理由は、八日市場の往時の街道景観を偲ばせる遺構として貴重であるという点にあります。

かつてこの一帯には、土蔵造りの建物が数多く並んでいましたが、昭和中期頃までにそのほとんどが姿を消しました。坂本総本店店舗は、明治期の商家建築の姿をよくとどめる数少ない遺構の一つです。近隣にはやはり登録有形文化財である新井時計店(昭和初期の洋風商家建築)や鶴泉堂菓子店(店舗兼主屋と大谷石造りの石倉庫)が残されており、これらとともに八日市場本町通り商店街の歴史的な景観を構成しています。

建築の見どころ

坂本総本店店舗は、土蔵造り2階建て、瓦葺きの建物で、建築面積は約40平方メートルです。最大の特徴は、外壁全面に施された黒漆喰塗(くろしっくいぬり)です。漆喰に松煙や油煙を混ぜて黒く仕上げるこの技法は、独特の光沢ある深い黒色を生み出し、建物に重厚かつ格調高い雰囲気を与えています。黒漆喰は美観だけでなく、防火性や耐久性にも優れた仕上げ材です。

屋根は切妻造りで、入口は棟と平行な面(平入り)に設けられています。街道に面した正面には庇が設けられ、「坂本総本店」の看板が掲げられています。堅牢な土蔵造りの構造と、商家としての開放的な店先が見事に調和した佇まいは、明治時代の商人たちが大切にした二つの要素―商品を火災から守る堅固さと、客を迎え入れる親しみやすさ―を体現しています。

訪問案内

坂本総本店店舗の大きな魅力は、登録有形文化財でありながら現役の菓子店として営業を続けていることです。歴史的建造物を眺めるだけでなく、実際に店内で伝統の味を購入し、味わうことができます。営業時間は午前9時から午後6時まで、定休日は水曜日です。

看板商品の「落花煎餅」は、千葉県八街市産の上質な落花生を細かく刻み、卵・小麦粉・砂糖の生地にたっぷりと混ぜ込んだ煎餅です。表面には「すり蜜」と呼ばれる砂糖を結晶化させたコーティングが施され、落花生の香ばしさとほのかな甘みが絶妙なバランスを生み出しています。もう一つの名物「初夢」は、地元産の茄子を砂糖漬けにした珍菓で、創業以来の伝統を受け継ぐ逸品です。

アクセスは、JR総武本線八日市場駅から徒歩約5分です。本町通り商店街を散策しながら、近隣の登録有形文化財も合わせてご覧いただけます。

周辺の見どころ

坂本総本店のある八日市場地区と匝瑳市内には、多彩な観光スポットが点在しています。

本町通り商店街には、坂本総本店のほかにも登録有形文化財が見られます。新井時計店は昭和初期に建てられた洋風商家建築で、2階正面には「トケイハアライ」のネオンサインが掲げられています。鶴泉堂菓子店は店舗兼主屋と大谷石造りの石倉庫からなる和菓子店で、こちらも登録有形文化財です。

八日市場の市街地から北へ車で約12分の場所にある飯高寺(飯高檀林跡)は、日蓮宗最古・最大の学問所として知られ、講堂・鐘楼・鼓楼・総門が国指定重要文化財に指定されています。NHK大河ドラマのロケ地としても有名で、深い杉林に包まれた境内は荘厳な雰囲気に満ちています。

そのほか、天神山公園からは市街地や九十九里の海を一望でき、約550本の桜が植えられた花見の名所でもあります。元禄11年(1698年)に水戸光圀が飯高寺を訪れた記念に植えられた「黄門桜」や、樹齢1000年を超える「安久山のスダジイ」、地元の新鮮な農産物が揃う「ふれあいパーク八日市場」なども見逃せないスポットです。

Q&A

Q坂本総本店店舗はどのような建物ですか?
A明治38年(1905年)に建てられた土蔵造り2階建ての商店建築です。黒漆喰塗の外壁と切妻平入の屋根が特徴で、建築面積は約40平方メートルです。平成11年(1999年)に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。現在も菓子店として営業を続けています。
Q坂本総本店へのアクセス方法は?
AJR総武本線八日市場駅から徒歩約5分です。駅から北西方向の本町通り商店街沿いに位置しています。お車の場合は、銚子連絡道の横芝光ICから国道126号線を銚子方面に進んでください。
Q坂本総本店ではどのようなお菓子が購入できますか?
A代表銘菓の「落花煎餅」は、千葉県八街産の落花生をふんだんに使った煎餅で、明治44年に皇太子(後の大正天皇)に献上された歴史を持ちます。また、創業以来の伝統菓子「初夢」(茄子の砂糖漬け)のほか、蜂蜜かすてらや焼菓子なども販売しています。営業時間は9:00〜18:00、水曜定休です。
Qなぜ登録有形文化財に登録されたのですか?
A八日市場の往時の街道景観を偲ばせる遺構として貴重であることが登録の理由です。かつてこの一帯には土蔵造りの建物が多く並んでいましたが、現在ではほとんど残っていません。地棟下端の墨書から建設年と棟梁名が判明する点も、建築史上の重要な記録とされています。
Q周辺にはどのような観光スポットがありますか?
A本町通り商店街には新井時計店や鶴泉堂菓子店など他の登録有形文化財があります。また、車で約12分の飯高寺(飯高檀林跡)は国指定重要文化財の講堂や鐘楼を有する名刹です。天神山公園、黄門桜、安久山のスダジイ、ふれあいパーク八日市場なども人気のスポットです。

基本情報

名称 坂本総本店店舗(さかもとそうほんてんてんぽ)
文化財区分 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成11年(1999年)7月8日
建築年 明治38年(1905年)
構造 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約40㎡
所在地 〒289-2144 千葉県匝瑳市八日市場イ2474
所有者 株式会社坂本総本店
営業時間 9:00〜18:00(定休日:水曜日)
アクセス JR総武本線 八日市場駅から徒歩約5分
電話番号 0479-72-1325

参考文献

坂本総本店店舗 – 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/192169
坂本総本店店舗 – 千葉県ホームページ
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/q111-044.html
坂本総本店について – 坂本総本店公式サイト
https://sakamotosouhonten.com/about/
八日市場本町通り商店街の町並み – ちば観光ナビ
https://maruchiba.jp/spot/detail_11021.html
国指定文化財等データベース – 文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001169

最終更新日: 2026.03.28