現役で動く大正10年の煉瓦造閘門

横利根閘門は、茨城県稲敷市西代地先にある煉瓦造の閘門で、大正10年(1921年)に完成し、平成12年(2000年)に重要文化財に指定された。

場所は横利根川の南端、利根川との合流点からわずかに上流にあたる。県境が敷地を横切っているため、駐車場の一部は千葉県側に入る。

横利根閘門が造られたのは、明治33年(1900年)から昭和5年(1930年)まで内務省が直轄で進めた利根川改修工事の一環としてである。工事は中川吉造を中心に進められ、大正3年(1914年)8月に起工、大正10年3月に竣工した。当時の横利根川は霞ヶ浦と利根川を結ぶ舟運の要路だった。二つの川は水位が異なり、しかも出水の状況によってどちらが高いかが入れ替わる。閘門はその段差を越えて船を通すために置かれている。

構成は現地で目で追える。船が水位調節を待つ細長い閘室があり、その両端を門扉を収めた閘頭部が締めている。稲敷市は全体の規模を長さ90.9メートル、幅10.9メートルとしており、竣工当時の日本では最大級だった。

指定の理由

横利根閘門は平成12年(2000年)5月25日に重要文化財に指定された。適用された指定基準は「技術的に優秀なもの」と「歴史的価値の高いもの」の二つである。文化庁は、利根川改修工事を代表する土木構造物の一つであり、煉瓦造閘門の一つの到達点を示す遺構だと位置づけている。

その評価を支えているのは、まず材料である。煉瓦と石で築かれた閘門としては国内で最後に建造されたもので、コンクリートへ移行する直前の時期にあたる。設計と施工の水準はいずれも高い。

もう一つは門扉の構えだ。横利根閘門は複閘式で、両端の閘頭部にそれぞれ内開きと外開きの2枚を組み合わせている。どちら側から水が押してきても受け止められる構造である。

指定の範囲は項目ごとに定められている。両岸の防舷材を含む閘室、門扉4枚・ラック棒4本・給排水扉2枚・給排水扉開閉装置1基を含む閘頭部2所、そして閘門外の擁壁4所。これに加えて、利根川治水記功碑、中川吉造の胸像所、旧門扉の部分、旧排水扉の巻揚機械の4件がとして登録されている。

現地で見るべきところ

横利根閘門の上を歩くと、煉瓦の面に仕掛けが読み取れる。閘室の壁の両端には縦長の窪みが彫り込まれていて、船が通るとき門扉はここに畳み込まれて壁と面一になる。天端には石が回してあり、摩耗を受ける稜線を煉瓦のまま曝さない造りになっている。水面ぎわには両側に防舷材が並び、船体と石積みを互いから守る役目を今も続けている。

機械類は年代の混ざったもので、その継ぎ目も見える。平成6年(1994年)に国土交通省(当時は建設省)が傷みの激しい部分を補修し、門扉の開閉を自動化した。旧門扉の一部と旧巻揚機械は附の指定に残されているため、取り替えられた部分と残された部分を見比べることができる。

保存されただけの遺構ではない。釣り船やプレジャーボートは今も横利根閘門を通航しており、そこへ一隻が入ってくれば一連の動作が目の前で始まる。警報音、閉じる門扉、閘室の水位が上下する数分、そして青に変わる信号。それを待つ時間が、この場所でいちばん贅沢な使い方かもしれない。

改築に合わせて両岸が「横利根閘門ふれあい公園」として整備され、平成12年から一般に公開されている。展望広場からは閘室越しに利根川の方向が見通せる。ポプラやケヤキ、桜が植えられた園内は、利根川下流の風景のなかでどこか西洋の運河めいて映る。桜の見頃は4月上旬である。

横利根閘門の見学方法

横利根閘門はいつでも見学できる。周囲の横利根閘門ふれあい公園は門扉も受付もない開放された河川敷公園で、入園は無料、隣接する駐車場も無料である。展示施設や案内所は置かれていないので、両岸を歩いて30分から40分ほどの自由見学と考えておきたい。

最寄り駅はJR成田線の佐原駅で、車またはタクシーで約10分。直通のバス路線はなく、堤防沿いを歩くと1時間近くかかるため、車の利用が現実的である。東京都心からは道路で2時間ほどを見ておくとよい。

撮影は公園内・堤防上とも自由で、三脚を立てても差し支えない。守るべきは文化財としての制限ではなく安全上の注意である。横利根閘門は国土交通省が管理する現役の施設なので、門扉や機械に乗ったり触れたりせず、船が通航しているときは閘室の縁から離れて見ること。通航に関する問い合わせは関東地方整備局利根川下流河川事務所(電話0478-52-3795)が受け付けている。

Q&A

Q横利根閘門は見学できますか。料金や開放時間は?
A見学できます。横利根閘門ふれあい公園の中にあり、開放時間の定めはなく入園無料、駐車場も無料です。建物ではなく現役の閘門なので、内部に入る見学やガイドツアーはありません。
Q横利根閘門へは公共交通機関でどう行けばよいですか?
AJR成田線の佐原駅からタクシーで約10分です。直通のバスはなく、駅から堤防沿いに歩くと1時間近くかかります。
Q横利根閘門は今も使われているのですか?
A使われています。利根川と横利根川の間を釣り船やプレジャーボートが通航しており、門扉は平成6年(1994年)に自動化されました。管理は国土交通省で、出水のあとは通航が止まることもあります。
Q横利根閘門はなぜ重要文化財に指定されたのですか?
A技術的に優秀であること、歴史的価値が高いことの二点により平成12年(2000年)に指定されました。煉瓦と石で築かれた閘門としては国内最後の建造で、当時最大級の規模を持ち、両端に内開きと外開きの門扉を備えた複閘式である点が評価されています。
Q横利根閘門を訪れるのに良い季節はいつですか?
A桜が煉瓦を背に咲く4月上旬です。船の通航は春から秋の釣りの季節に多く、閘門が動く場面に出会える確率も上がります。

基本情報

名称横利根閘門
所在地茨城県稲敷市西代地先
指定区分重要文化財
指定年平成12年(2000年)5月25日
員数1所
寸法長さ90.9メートル、幅10.9メートル
所有者国(国土交通省)
公開状況横利根閘門ふれあい公園として常時開放。入園無料。外観のみの見学

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「横利根閘門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3676
稲敷市「横利根閘門(西代)」
https://www.city.inashiki.lg.jp/page/page000054.html
稲敷市「横利根閘門ふれあい公園」
https://www.city.inashiki.lg.jp/page/page000044.html
国土交通省関東地方整備局 利根川下流河川事務所「横利根閘門の通航再開について」
https://www.ktr.mlit.go.jp/tonege/tonege00787.html
茨城県教育委員会「横利根閘門」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/kuni-28/

最終更新日: 2026.09.06