ふだんは開かなかった門

村上家住宅御成門及び東塀は、愛媛県新居浜市の大島にある江戸時代中期の門と土塀で、令和6年(2024年)8月15日に登録有形文化財(建造物)に登録された。御成門は木造・瓦葺で間口2.4メートル、袖塀を伴う。東塀は土塀・瓦葺で、文化庁の国指定文化財等データベースは総延長を12メートルと記載する。年代は1661年から1751年の間で、明治4年(1871年)頃に改修を受けている。

御成門とは、身分の高い客の来訪、すなわち「御成り」のために設けられた門を指す。村上家は大島の庄屋を務めた家で、新居浜市の資料によれば、元禄年間(1688年から1704年)に西条藩主が立ち寄った記録が残る。村上家住宅御成門及び東塀は、その来訪の際にだけ開かれる門として、日常の出入口とは別に構えられた。

門は表門のすぐ東に並んで立ち、そこから東塀が北へ折れ曲がって延びる。屋敷の南東角を回り込む形である。

登録有形文化財になった理由

村上家住宅御成門及び東塀の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、登録番号は38-0189、第107回の登録にあたる。主屋、表門及び南塀と合わせて同じ日に登録され、屋敷の構えが三件に分けて記載された。

評価の要点は、二つの門が並んで残っていることにある。常用の門と貴人用の門を別に設ける構えは、庄屋という身分に伴う格式を建築の形で示すものだが、片方だけが失われた例は少なくない。村上家では両方が今も立っている。

登録有形文化財の登録は、建物を使い続けながら守る仕組みのうえに成り立つ。村上家住宅御成門及び東塀は現に人が暮らす屋敷の一部であり、登録後も塀は敷地を囲い、門は閉じたまま道に面している。

格式が表れる細部

屋根に注目したい。村上家住宅御成門及び東塀の門は切妻造平入で、瓦は本瓦葺である。丸瓦と平瓦を交互に伏せる本瓦葺は重く、手間も費用もかかる。西隣の表門は軽い桟瓦葺なので、二つの門は屋根の葺き方だけで格の違いを表している。主屋と同じ本瓦葺を載せているのは、この御成門のほうである。

門口には両開きの板扉が吊られる。その上、扉と屋根のあいだの欄間には横向きの連子が並ぶ。閉じたままでも風と光が通り、外からは中が見通しにくい。開かれることの少ない門にふさわしい設えといえる。表門にある潜戸は、こちらには付かない。人の出入りを想定していないからである。

門の左右には袖塀が付き、そこから続く東塀は白漆喰で仕上げられている。桟瓦葺の屋根を載せた土塀が北へ折れる線は、屋敷の外周をたどる手がかりになる。なお東塀の長さについて、文化庁データベースは構造の欄に総延長12メートルと記す一方、解説文では折れ曲がり部分の延長を8.3メートルとしている。どちらの数値も同じ資料に併記されているため、記事では構造欄の値を採用した。

見学方法とアクセス

村上家住宅御成門及び東塀は個人の住宅に付属する門と塀であり、内部は公開されていない。公開日も見学の受け付けもない。門と塀は道路に面しているので、外観を前面道路から見ることはできる。撮影の際は敷地の内側や住人が写らないようにしたい。

大島へ渡るには新居浜市営渡海船を使う。黒島港はJR予讃線多喜浜駅からおよそ2.5キロで、徒歩なら30分ほどかかる。黒島港から大島港までの所要は15分、片道運賃は大人60円、小人30円、便数は1日13往復である(令和5年(2023年)10月1日改正のダイヤ、2026年9月5日確認)。港から集落中心部までは徒歩5分ほど。

二つの門は数メートルの間隔で並んでいるので、同じ立ち位置から屋根の違いを見比べられる。晴れた日の午前は南面に光が回り、瓦の陰影がはっきり出る。

Q&A

Q村上家住宅御成門及び東塀は見学できますか。
A個人の住宅に付属するため内部は非公開で、門をくぐることもできません。公開日の設定も、見学申し込みの窓口もありません。外観は前面道路から見られます。
Q村上家住宅御成門及び東塀の「御成門」とは何ですか。
A身分の高い客の来訪(御成り)のために設けられた門です。村上家には元禄年間に西条藩主が立ち寄った記録が残っており、この門は日常の出入口とは別に構えられました。
Q村上家住宅御成門及び東塀の大きさはどれくらいですか。
A御成門は間口2.4メートルの木造・瓦葺で袖塀が付きます。東塀は土塀・瓦葺で総延長12メートルです。御成門と東塀は合わせて1棟として登録されています。
Q村上家住宅御成門及び東塀は表門とどこが違いますか。
A御成門の屋根は主屋と同じ本瓦葺で、欄間に横連子を入れ、潜戸を持ちません。西隣の表門は桟瓦葺で、西脇に潜戸を備えた日常の門です。
Q村上家住宅御成門及び東塀へはどう行けばよいですか。
A新居浜市営渡海船が黒島港と大島港を15分で結びます。黒島港へはJR予讃線多喜浜駅から約2.5キロ。運賃は片道大人60円、便数は1日13往復です。

基本データ

名称村上家住宅御成門及び東塀(むらかみけじゅうたくおなりもんおよびひがしべい)
所在地愛媛県新居浜市大島
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和6年(2024年)8月15日登録
員数1棟
寸法御成門は木造・瓦葺、間口2.4メートル、袖塀付。東塀は土塀・瓦葺、総延長12メートル
所有者個人
公開状況非公開。門をくぐることはできない。外観は前面道路から見られる

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 村上家住宅御成門及び東塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015094
文化遺産オンライン 村上家住宅御成門及び東塀
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/593692
新居浜市 指定・登録文化財
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/bunka/shiteitourokubunkazai.html
新居浜市消防本部 文化財防火デー 村上邸周辺の調査
https://www.city.niihama.lg.jp/site/syoubou/higashisyoubo-bunnkazai.html
新居浜市 市営渡海船時刻表(大島黒島間)
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/koutsu/tokaisenjikokuhyo.html
新居浜市 市営渡海船使用料(大島黒島間)
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/koutsu/tokaisenshiyouryo.html

最終更新日: 2026.09.05