北前船の湊に建った鉄筋コンクリートの銀行
旧森田銀行本店は、福井県坂井市三国町南本町にある鉄筋コンクリート造の銀行建築で、文化庁の登録原簿は大正8年(1919年)の建築とし、平成9年(1997年)12月12日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。
三国は九頭竜川の河口にある。中世以来、越前の物資が集まる湊であり、その繁栄を支えたのが北前船による廻船業だった。森田家はその廻船問屋のひとつである。
ただし船の時代は続かない。森田三郎右衛門は廻船業の先細りを読み、明治27年(1894年)に森田銀行を創業して業種転換をはかった。銀行は県内でも上位の優良行に育ち、その新しい本店として建てられたのがこの建物である。
建築年については断りが要る。文化庁のデータベースは大正8年(1919年)とする。一方、坂井市と指定管理者の三國會所は、落成を大正9年(1920年)としている。登録原簿が躯体の完成年を、地元資料が営業開始の年を採っているとみるのが自然だが、両方の年が並んで流通しているのは事実なので、記述の違いに気づいたときは誤植を疑う必要はない。
登録原簿の記載は、1棟、鉄筋コンクリート造2階建、建築面積163平方メートル。
山田七五郎の設計と、古典主義の外皮
適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」で、登録は第7回の登録分、登録番号は18-0004である。この若い番号は、平成8年(1996年)に登録制度が始まってまもない時期に、福井県内でごく早く登録された物件であることを示す。登録告示は平成10年(1998年)1月8日で、登録年月日から3週間ほど遅れている。
設計は山田七五郎。横浜市開港記念会館や長崎県庁舎を手がけた技師である。大工棟梁は地元三国の四折豊が務めた。全国的に知られた技師と地元の職人が組んだ結果が、この建物の性格をよく説明する。古典主義の語彙を臆せず使いながら、細部の扱いには冷たさがない。
外壁は茶系のタイルと擬石で仕上げられ、日本の資料はこの意匠を「近代復興式」と呼ぶ。窓には巻上式のシャッターが備わっていた。大正8年の日本の建築実務としては、かなり先端の装置である。目を上げれば屋上には煙突と飾りが載る。
文化庁の解説は、これを県内では初期の本格的な鉄筋コンクリート造建築とし、質も高いと評価する。坂井市や三國會所はもう一歩踏み込んで、県内に現存する鉄筋コンクリート造としては最古と説明する。二つの言い方は矛盾しない。早い時期の、意欲的な建物であり、これより古い同工法の建物は地元に残っていないということである。
内部と、訪ねかた
訪ねる理由は内部にある。1階は吹き抜けの営業室と個室、2階部分の背後に会議室が置かれる。営業室の天井は白漆喰が深く彫り込まれ、木部の色と対比して浮かび上がる。多くの見学者が最初に見上げ、いちばん長く記憶するのがここだ。会議室には象嵌の仕事が加わる。金庫の扉もシャンデリアも残っている。
銀行のほうは残らなかった。森田銀行は福井銀行と合併し、建物は福井銀行三国支店として使われ続けたが、老朽化には勝てなかった。平成6年(1994年)に当時の三国町の財産となる。三国町は平成18年(2006年)の合併で坂井市の一部になった。詳細な調査を経て復元保存工事が行われ、平成11年(1999年)7月から一般公開されている。
入館は無料。開館時間は9時から17時で、夜間催事がある日は22時閉館になる。展示やコンサートの会場として使われるためだ。休館は月曜日(祝日は開館)と12月29日から1月3日まで。保守点検や清掃で臨時に休むこともある。指定管理者は一般社団法人三國會所(0776-82-0299)。
撮影については、場所によって扱いが分かれるので具体的に書いておく。外観の撮影は自由である。内部については、報道向けやテレビ番組の撮影の場合、三國會所へ事前に申し出て、日時・目的・撮影箇所・放映予定を記した企画書を提出する必要がある。当日は係員が立ち会い、三脚の足には養生を求められ、建物内の火気は禁止されている。
行き方は難しくない。えちぜん鉄道三国芦原線の三国駅から徒歩7分。芦原温泉駅からは京福バスの三国駅行きで三国駅前下車、約25分、車やタクシーなら約20分。車の場合は北陸自動車道の金津インターチェンジから約25分である。建物は三國湊きたまえ通りに面しており、周囲に残る町家を含めて一続きの散策になる。
住所についてひとつ注意を。登録原簿は南本町3-217-2という地番で記載し、施設側は南本町3-3-26を公表している。同じ建物を指している。
Q&A
- 旧森田銀行本店は見学できますか?入館料はいくらですか?
- 見学できます。入館料は無料です。開館は9時から17時、夜間催事がある日は22時閉館。休館日は月曜日(祝日は開館)と12月29日から1月3日です。問い合わせは一般社団法人三國會所(0776-82-0299)。
- 旧森田銀行本店の建築年は大正8年ですか、大正9年ですか?
- どちらの年も信頼できる資料に出てきます。文化庁の登録原簿は大正8年(1919年)、坂井市と三國會所は落成を大正9年(1920年)としています。前者が躯体の完成年、後者が営業開始の年を指すとみられます。
- 旧森田銀行本店を設計したのは誰ですか?
- 技師の山田七五郎です。横浜市開港記念会館や長崎県庁舎も手がけました。大工棟梁は三国の四折豊が務めています。
- 旧森田銀行本店の内部で写真撮影はできますか?
- 外観の撮影は自由です。内部については、報道や番組の撮影は三國會所への事前の申し出と企画書の提出が必要で、当日は係員が立ち会います。三脚には養生が求められ、建物内の火気は禁止です。
- 旧森田銀行本店へのアクセスを教えてください。
- えちぜん鉄道三国芦原線の三国駅から徒歩7分です。芦原温泉駅からは京福バス三国駅行きで三国駅前下車、約25分。車なら北陸自動車道の金津インターチェンジから約25分です。
基本情報
| 名称 | 旧森田銀行本店(きゅうもりたぎんこうほんてん) |
|---|---|
| 所在地 | 福井県坂井市三国町南本町3-217-2(施設表示は南本町3-3-26) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号18-0004 登録基準「造形の規範となっているもの」 |
| 指定年 | 平成9年(1997年)12月12日登録/告示は平成10年1月8日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積163平方メートル/登録原簿は大正8年(1919年)、地元資料は大正9年(1920年)落成 |
| 所有者 | 坂井市(指定管理者:一般社団法人三國會所) |
| 公開状況 | 公開。9時から17時(夜間催事日は22時閉館)、月曜休館(祝日は開館)、12月29日から1月3日休館、入館無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース — 旧森田銀行本店
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000406
- 文化遺産オンライン — 旧森田銀行本店
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/176626
- 旧森田銀行本店 公式サイト(一般社団法人三國會所) — 施設紹介
- https://mikunikaisyo.org/morita/facilities
- 旧森田銀行本店 公式サイト — 交通アクセス・撮影について
- https://mikunikaisyo.org/morita/access
- さかい旅ナビ(坂井市公式観光ガイド) — 旧森田銀行本店
- https://kanko-sakai.com/spot/k030/
最終更新日: 2026.08.24