寺の書院に付いた小さな洋館
陽願寺洋館は、福井県越前市本町の陽願寺で御殿の南面から西へ続く木造の洋風建築で、昭和9年(1934年)頃に建てられ、令和2年(2020年)8月17日に国の登録有形文化財に登録された。木造平屋建、瓦葺、建築面積は45平方メートル。寄棟造の屋根を、洋瓦に見せるためレンガ色の桟瓦で葺いている。
門主を迎える和風の書院が続く列の先に、洋間が2室だけ加わっている。寺の調査書は、第14世の急逝後に住職となった第15世が昭和9年に結婚するのに合わせて建てられたと考える。第14世は本願寺の留学生として明治15年(1882年)から8年6か月パリで学んだ人物で、その経歴が洋館を建てる背景になったとも考えられるという。
規模は寺の調査書で桁行10.2メートル、梁間は廊下を含めて6.12メートル。外壁は大壁で、腰を洗い出しの目地切り、上部を粗い「ぶっつけ壁」とし、軒まで左官で塗り上げている。
登録の理由:落ち着いた意匠の応接空間
陽願寺洋館の登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説によると、中央の応接室は南面を台形平面のベイウインドウとし、庭への扉口を設ける。西は書斎で、両室とも漆喰塗の天井に中心飾りを付ける。北に片廊下を通し、御殿との間は便所とする。解説は全体を、落ち着いた意匠の応接空間と評価する。
寺の調査書は、応接室が隅を切った八角形のベランダ状の張り出しを部屋に取り込んでいること、天井の照明器具が当初のものと思われること、寺に建築造営の書類が残り経過をたどれることを挙げ、昭和初期の洋館として保存状態がよく貴重だとする。書院の座敷から縁伝いに歩いてくると、床が畳から板に、天井が竿縁から漆喰に変わり、昭和の住職の応接の場に入ったことが分かる。
見どころ:ベイウインドウと天井の中心飾り
応接室は板床で、広さは8畳ほど。南の庭に向かって台形に張り出したベイウインドウから光が入り、扉口から直接庭に出られる造りになっている。外から見ると、白い壁面から窓の部分だけが多角形に突き出していて、和風の書院群の中で唯一の洋風の立面をつくる。
見上げると、漆喰塗の鏡天井の周囲にモールディングを廻し、中央の円形の座から照明を吊り下げている。書斎も同じ仕上げで、中央に照明器具を下げる。廊下の窓は突き出し開き窓で、締め金具が残る。こうした建具金物まで当初の姿をとどめている点が、この小さな洋館の見どころである。
陽願寺洋館の見学方法
陽願寺洋館の内部は、4月から12月の土曜・日曜・祝日に行われる寺の有料拝観で、御殿から続く順路の中で見られる。予約制の特別拝観の順路にも含まれている。
外観は御殿庭園の側から見るのがよい。ベイウインドウの張り出しとレンガ色の屋根は、御殿の広縁から西を向くと視野に入る。
Q&A
- 陽願寺洋館はいつ、なぜ建てられましたか。
- 昭和9年(1934年)頃の建築です。寺の調査書は、第15世住職の結婚に合わせて建てられたと考え、パリに留学した第14世の経歴が背景にあった可能性も指摘しています。
- 陽願寺洋館にはどんな部屋がありますか。
- 中央の応接室と西の書斎の2室で、北に片廊下を通します。応接室は南面を台形平面のベイウインドウとしています。
- 陽願寺洋館の天井の見どころは何ですか。
- 両室とも漆喰塗の天井の中央に円形の飾りを付け、照明を吊り下げています。応接室の照明器具は当初のものと思われます。
- 陽願寺洋館の中は見学できますか。
- 4月から12月の土曜・日曜・祝日の有料拝観で、御殿から続く順路の中で見学できます。
- 陽願寺洋館の屋根はなぜレンガ色なのですか。
- 寄棟造の屋根を洋瓦葺きに見せるため、レンガ色の桟瓦で葺いていると寺の調査書は説明しています。
基本情報
| 名称 | 陽願寺洋館 |
|---|---|
| 所在地 | 福井県越前市本町154 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和2年(2020年)8月17日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積45平方メートル |
| 所有者 | 陽願寺 |
| 公開状況 | 内部は通常拝観(有料・土日祝のみ)で公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 陽願寺洋館
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013376
- 陽願寺 公式サイト 境内伽藍について
- https://youganji.com/grounds/
- 陽願寺 公式サイト 拝観について
- https://youganji.com/worship/
最終更新日: 2026.09.26