高い石積の上に立つ禅宗様の鐘楼

陽願寺鐘楼は、福井県越前市本町の陽願寺で山門を入った参道の南側に立つ入母屋造の鐘楼で、明治23年(1890年)に建てられ、令和2年(2020年)8月17日に国の登録有形文化財に登録された。木造、瓦葺で、面積は13平方メートル。境内の東辺中央に開く山門の南隣にあたり、参道を歩き始めてすぐ左手に見える。

まず目につくのは基壇の高さである。反りのある切石積の基壇は、寺の調査書によれば高さ2.1メートル。人の背丈を超える石垣の上に、4本の円柱で支えた鐘楼が載る。基壇へは南側の10段の石段から上がる。

年代の根拠は基壇の石に刻まれている。本堂側の面の中央に「明治二三年七月二六日 正信」の刻銘があり、石を積んだときに刻まれたとみられる。明治32年(1899年)刊の『若越宝鑑』所載の境内図にも鐘楼が描かれていることから、寺の調査書は明治23年から明治30年(1897年)頃の建築とみている。文化庁のデータベースは明治23年とする。

登録の理由:禅宗様を基調とした手の込んだ造形

陽願寺鐘楼の登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説は、礎盤の上に円柱を立てること、虹梁形の内法貫の木鼻を獅子とすること、頭貫と台輪を彫刻で飾ること、組物を出組の詰組とし、軒を二軒の扇垂木とすることを挙げ、禅宗様を基調とした手の込んだ造形と評価する。

礎盤、詰組、扇垂木は、いずれも禅宗様の代表的な語彙である。浄土真宗の寺の鐘楼がこの様式でまとめられているのは、宗派の様式というより、江戸末から明治にかけての社寺大工が得意とした装飾の流行を映したものと読める。寺の調査書も、虹梁の袖切の渦と若葉の彫りが太く、江戸末期から明治期に特有の込み入った文様になっていると指摘する。

寺の調査書は、連枝の寺である別格寺院にふさわしい大型本堂の正面に位置するため高い基壇に建てられたとし、大きく反り上がった禅宗様の姿と緻密な彫刻によって明治初期の鐘楼建築として評価できるとしている。

見どころ:獅子と龍の木鼻、反り上がる軒

基壇の下から見上げると、柱の上部に彫刻が集中しているのが分かる。内法の虹梁の両端には獅子の丸彫りの木鼻が付き、さらに上の出組の木鼻は龍の丸彫りになっている。獅子と龍が上下二段で四隅を固める構成である。

軒は二軒で、垂木を扇状に広げた扇垂木とし、隅に向かって大きく反り上がる。寺の調査書は、茅負と布裏甲の強い反りが外観を特徴づけていると述べる。屋根は入母屋造の桟瓦葺で、棟の向きは本堂と平行、妻は南北を向く。大棟と隅棟の端は獅子口の瓦で納める。

柱間は各面とも11尺6寸、約3.5メートル。4本の柱だけで立つ開放的な建物なので、四方どこからでも組物と彫刻が見える。本堂の方向から逆光で見ると、反り上がった軒の輪郭がくっきりと浮かぶ。

陽願寺鐘楼の見学方法

陽願寺鐘楼は境内の屋外にあり、外観は参拝時に自由に見られる。有料の拝観に申し込む必要はない。

基壇の上に上がれるか、鐘をつけるかについて寺の案内はないため、基壇の下から見学するのが無難である。彫刻を細かく見るなら、光が柱の上部まで回る午前中の東からの光がよい。基壇の本堂側の面の中央に刻まれた明治23年の銘も、足元で探してみたい。

Q&A

Q陽願寺鐘楼はいつ建てられましたか。
A文化庁のデータベースは明治23年(1890年)としています。基壇の石に「明治二三年七月二六日」の刻銘があり、寺の調査書は明治23年から明治30年(1897年)頃の建築とみています。
Q陽願寺鐘楼はどんな様式ですか。
A禅宗様を基調とし、礎盤の上に円柱を立て、組物を出組の詰組、軒を二軒の扇垂木とします。屋根は入母屋造です。
Q陽願寺鐘楼の彫刻の見どころはどこですか。
A内法の虹梁の両端の獅子の木鼻と、その上の出組の龍の木鼻です。頭貫と台輪にも彫刻が施されています。
Q陽願寺鐘楼の基壇はどのくらいの高さですか。
A寺の調査書によれば高さ2.1メートルの切石積で、南側の10段の石段から上がります。
Q陽願寺鐘楼は拝観料なしで見られますか。
Aはい。境内の屋外にあり、参拝時に外観を自由に見られます。基壇に上がれるかどうかの案内はないため、下から見学するのが無難です。

基本情報

名称陽願寺鐘楼
所在地福井県越前市本町154
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和2年(2020年)8月17日登録
員数1棟
寸法木造、瓦葺、面積13平方メートル
所有者陽願寺
公開状況境内の屋外にあり外観は自由に見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 陽願寺鐘楼
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013380
陽願寺 公式サイト 境内伽藍について
https://youganji.com/grounds/
陽願寺 公式サイト 拝観について
https://youganji.com/worship/

最終更新日: 2026.09.26