旧九州芸術工科大学工業音響棟 ― 環境画像棟と向かい合うもう一つの6階建

旧九州芸術工科大学工業音響棟は、福岡県福岡市南区塩原の九州大学大橋キャンパスに昭和45年(1970年)に建てられた鉄筋コンクリート造6階建の校舎で、令和7年(2025年)3月13日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「きゅうきゅうしゅうげいじゅつこうかだいがくこうぎょうおんきょうとう」。現在は九州大学芸術工学部の1号館と呼ばれている。

建築面積は813平方メートルで、登録された5棟のなかでもっとも広い。通称フライパン広場の南側に建ち、北の広場へ正面を向けて、広場を挟んで環境画像棟と正対する。設計は香山壽夫と九州芸術工科大学の環境設計学科による。

旧九州芸術工科大学工業音響棟が登録された理由

登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説は、旧九州芸術工科大学工業音響棟を単独ではなく、向かいの環境画像棟との組で評価している。2棟は同じ意匠で向き合い、そのあいだに開けた広場とともに、堂々とした広場の景観をつくっているという。

工業音響棟そのものの造形としては、上の階を段々に後退させて外観に変化をつけている点が挙げられている。6階建のボリュームが広場へ覆いかぶさらず、上へ行くほど引いていくので、広場に立つ人には建物の高さがそれほど迫ってこない。広場とは2階の高さで接続し、広場から直接2階へ出入りできる。

芸術工学部の英語サイトは、大きな空地を挟んで対称の2棟を向かい合わせる構成を、香山がルイス・カーンのソーク研究所に着想を得たものと紹介している。その2棟の片方が、この旧九州芸術工科大学工業音響棟である。

旧九州芸術工科大学工業音響棟の名前と見どころ

九州芸術工科大学は、環境設計・工業設計・画像設計・音響設計の4学科で開学した。北の棟が「環境画像」、南の棟が「工業音響」と、向かい合う2棟の名前には4学科の頭の語が2つずつ振り分けられている。棟ごとにどの学科がどう使ったかは確認できた資料に書かれていないが、名前の組み合わせからも2棟が一対として計画されたことがうかがえる。

旧九州芸術工科大学工業音響棟を正面から見るには、広場の北側、環境画像棟の前に立って南を向く。文化庁のデータベースが代表写真に選んでいるのも、この北面を正面から写した一枚である。上層のセットバックを確かめたら、次は広場の中央に立って南北の2棟を見比べたい。環境画像棟の正面は南を向いて日を受け、工業音響棟の正面は北を向くので、晴れた日には同じ意匠の2棟が明と暗の対照を見せる。

2階には展示ギャラリーがあり、これも文化庁の写真の一枚に収められている。建物は昭和45年(1970年)の建築で、令和3年(2021年)に改修を受けた。

旧九州芸術工科大学工業音響棟の見学

旧九州芸術工科大学工業音響棟は授業と研究に使われている現役の校舎で、内部に入れるのは学生と教職員に限られる。芸術工学部の英語サイトによれば、教室棟のコンクリートの造形とバルコニーは屋外から眺めることができる。

内部の展示ギャラリーを見られるのは、芸術工学部が年に1回開く施設公開のときである。令和6年(2024年)から令和8年(2026年)までは6月に開かれた。キャンパスへの行き方は旧九州芸術工科大学のページにまとめてある。

Q&A

Q旧九州芸術工科大学工業音響棟はどのような建物ですか?
A福岡市南区の九州大学大橋キャンパスに昭和45年(1970年)に建てられた鉄筋コンクリート造6階建の校舎で、建築面積は813平方メートルです。令和7年(2025年)3月13日に登録有形文化財に登録されました。現在は芸術工学部1号館です。
Q旧九州芸術工科大学工業音響棟と環境画像棟はどのような関係ですか?
A中庭状の広場を挟んで正対する2棟で、同じ意匠で向かい合い、一体となって広場の景観をつくっています。文化庁はこの組み合わせを評価しています。
Q旧九州芸術工科大学工業音響棟の外観の特徴は何ですか?
A上の階を段々に後退させた変化のある外観です。躯体はコンクリートの打放し仕上げで、2階の高さで広場に接続しています。
Q旧九州芸術工科大学工業音響棟はどこから見るとよいですか?
A広場の北側、環境画像棟の前から南を向くと正面の北面が見渡せます。広場の中央からは向かいの環境画像棟と見比べられます。
Q旧九州芸術工科大学工業音響棟の中に入れますか?
A通常は学生と教職員に限られ、入れません。外観は屋外から見られます。年に1回の芸術工学部の施設公開が内部を見る機会です。

基本情報

名称旧九州芸術工科大学工業音響棟(九州大学芸術工学部1号館)
所在地福岡県福岡市南区塩原4丁目9-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 40-0232
指定年令和7年(2025年)3月13日登録
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造6階建、建築面積813平方メートル
所有者国立大学法人九州大学
公開状況内部非公開(外観は屋外から見学可、施設公開日あり)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧九州芸術工科大学工業音響棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015392
文化遺産オンライン「旧九州芸術工科大学工業音響棟」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/607746
文化庁 国指定文化財等データベース「旧九州芸術工科大学環境画像棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015391
九州大学芸術工学部「概要」(沿革)
https://www.design.kyushu-u.ac.jp/about/
九州大学芸術工学部「大橋キャンパス建築物一覧」(PDF)
https://www.design.kyushu-u.ac.jp/_cms_dir/wp-content/uploads/2024/11/5c990403912cc6f8ce5491ef65c1fe5b.pdf
九州大学芸術工学部 Geiko Global「Ohashi Campus Design」
https://www.gg.design.kyushu-u.ac.jp/en/prospective_students/ohashi-campus-design
九州大学芸術工学部「施設公開」
https://www.design.kyushu-u.ac.jp/open-campus/

最終更新日: 2026.09.30