建物より古い年代が記録された門

草野歴史資料館(旧草野銀行本店)門は、福岡県久留米市草野町草野411-1にある明治41年(1908年)の石造の門で、平成11年(1999年)6月7日に国の登録有形文化財(建造物)となった。

資料館を訪ねた人の多くは、この門を独立した文化財と意識しないまま通り抜けていく。屋根と受付を備えた木造の本館が目に入る以上、石と鉄でできた囲いは付属物として扱われやすい。ところが国の登録では、本館とは別の登録番号、別の登録回、そして別の登録基準が与えられている。

年代については、はっきり書いておくべき点がある。文化庁の国指定文化財等データベースは、この門の年代を明治41年(1908年)とする一方、囲われている銀行本館の年代は明治44年(1911年)としている。久留米市の資料では本館の着工が明治43年(1910年)7月。記載をそのまま読めば、囲いのほうが本体より二年以上早く整えられたことになる。敷地を先行して造成した例がないわけではないものの、公開されている資料に説明はない。明治41年という年代は、文化庁の登録記載として引用するのが適切である。

「歴史的景観に寄与」という基準

登録有形文化財の登録基準は三つあり、どれが適用されたかを見ると、審査で何が評価されたのかがわかる。本館に与えられたのは「造形の規範となっているもの」。門に与えられたのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。前者は物そのものへの評価で、後者はその物が周囲の場所に対して果たしている働きへの評価にあたる。同じ敷地の二件が別の基準で登録された理由はここにある。

門の登録番号は40-0009、第17回登録。本館の第16回登録から約4か月遅れての登録となった。登録年月日は平成11年6月7日、官報告示は同年7月19日。員数は1基、種別は産業3次・その他工作物、所有者は久留米市。構造及び形式等は「石造,幅員2.9m,左右柵基壇18.7m附属」と簡潔に記録されている。

この数値が示すのは、角を折れる囲いである。銀行の敷地は二方向を街路に接しており、囲いは前面街路と側面街路の両方に沿って前庭を鈎型に囲む。正面中央に正門を構え、側面に通用門を設ける。全長にわたって高欄風につくられた石造の土台が据えられ、その上に鉄柵が立つ。

町並みの側から読むと、意味がはっきりする。低い木造の店舗が軒を連ねる宿駅の通りに、建物を前庭の奥へ引き込んで柵で仕切るという発想はもともとなかった。銀行は下見板張りの壁とともにその作法を持ち込み、通りに公共的な構えを一区画分だけ加えた。その働きは現在も続いており、登録基準が捉えようとしたものとほぼ重なる。

鉄柵の文様を近くで見る

入る前に、いったん歩道に立って眺めたい。そこからだと二方向の柵が角で出会う形が見え、鈎型の平面が理解できる。門の内側に入ってしまうと、この形はもう読めない。

鉄に打ち出された文様は唐草である。巻きひげの伸びる連続文様で、日本の工芸が大陸から取り入れ、漆器にも風呂敷にも広く用いてきた意匠である。明治の銀行の鉄柵に載ると、これが独特の効果を生む。文様は明らかに日本のもので、それを担う物体は洋式の鉄柵であり、どちらも譲っていない。久留米市はこのデザインを、外から入ってくるものを理解し自分たちの流儀で扱えるという地方の町の自負の表れと説明している。同じ読みは背後の木造本館にもあてはまるが、鉄柵は通行人の目の高さでそれを示す点が違う。

材の来歴については正確に記しておきたい。文化庁は、門扉と鉄柵が資料館開館(昭和59年=1984年)にあたって復元されたものであると記載している。つまり来訪者が手を触れる金属は、明治期からそのまま伝わった部材ではなく、旧状に沿った復元である。より古い証拠を保っているのは石造の土台と、囲い全体の構成のほうにあたる。景観への寄与を基準とする登録は、この事情と矛盾しない。評価の対象が個々の部材の古さではなく、囲い全体が街路に対して持つ効果だからである。

門が部屋ではなく境界であることから、実用的な結論が出てくる。公道に面しているため、外側からの見学と撮影は時間を問わず可能で、資料館の休館日にも支障がない。休館日は月曜日(祝日を除く)、祝日の翌日(土・日・祝日を除く)、12月28日から1月4日、および展示替え期間である。歩道に立つ分には費用もかからない。門を抜けて前庭と館内まで見るなら開館時間内、10時から17時(入館は16時30分まで)に訪ねる。入館料は公式サイトの記載では無料だが、旅行情報サイトには大人100円という古い記載も残る。電話は0942-47-4410。館内の撮影は屋外より制限が厳しく、不可とする来館者の記録があるため受付で確認したい。

アクセスは、JR久大本線の筑後草野駅から徒歩約10分、西鉄久留米駅からは西鉄バス25番・25-1番の「草野上町」下車、徒歩2分。車は九州自動車道久留米ICから国道210号経由。周辺の草野・紅桃林(ことばやし)地区は昭和62年(1987年)から久留米市の伝統的町並み保存地区にあたるので、宿駅の名残である枡形の道筋、県指定の鹿毛家住宅、徒歩圏にある別件の登録有形文化財である山辺道文化館とあわせて歩くとよい。なお本件は資料館本体と同じ名称で登録されているため検索結果で混同されやすいが、両者は別々の登録記録を持つ。全国には本件と関係のない「草野」を冠した地名や施設も存在する。

Q&A

Q草野歴史資料館(旧草野銀行本店)門として登録されているのは具体的に何ですか。
A福岡県久留米市草野町草野411-1にある、前庭を囲う石造の門と附属する柵です。文化庁の記録では石造、幅員2.9メートル、左右の柵基壇18.7メートルが附属し、員数は1基、所有者は久留米市。資料館本館とは別の文化財として登録されています。
Q草野歴史資料館門は、なぜ本館と違う登録基準なのですか。
A本館は平成11年2月17日に「造形の規範となっているもの」で登録され、門は同年6月7日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で登録番号40-0009(第17回登録)として登録されました。前者は物そのものの評価、後者は囲いが街路に対して果たす働きの評価にあたります。
Q草野歴史資料館門の鉄柵は明治時代のものがそのまま残っているのですか。
A全部がそうではありません。文化庁は、門扉と鉄柵が資料館開館の昭和59年(1984年)にあたって復元されたものと記載しています。より古い情報を保つのは石造の土台と囲い全体の構成で、登録の評価も部材の古さではなく全体の効果に置かれています。
Q草野歴史資料館門は休館日でも見学できますか。
Aできます。公道に面しているため、外側からの見学と撮影は時間を問わず可能で、月曜日などの休館日でも支障ありません。門を抜けて前庭や館内を見る場合は開館時間内(10時〜17時、入館16時30分まで)に訪ねてください。入館料は公式サイト記載で無料、確認は0942-47-4410へ。
Q草野歴史資料館門の年代が明治41年で、本館の明治44年より古いのはなぜですか。
A文化庁データベースがそれぞれの登録記録にその二つの年を記載しており、久留米市の資料は本館の着工を明治43年7月としています。記載どおりなら囲いのほうが二年以上早いことになりますが、その差を説明する公開資料は見あたりません。明治41年は文化庁の登録記載として引用するのが適切です。

基本情報

名称草野歴史資料館(旧草野銀行本店)門/くさのれきししりょうかん(きゅうくさのぎんこうほんてん)もん
所在地〒839-0835 福岡県久留米市草野町草野411-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」/登録番号40-0009(第17回登録)/種別 産業3次・その他工作物
指定年平成11年(1999年)6月7日登録、同年7月19日告示
員数1基
寸法石造、幅員2.9メートル、左右柵基壇18.7メートル附属。年代は明治41年(1908年)と記録
所有者久留米市
公開状況公道から常時無料で外観見学が可能。前庭および館内は資料館の開館時間内(10時〜17時、入館16時30分まで)。休館は月曜日(祝日を除く)、祝日の翌日(土・日・祝日を除く)、12月28日〜1月4日、展示替え期間。入館料は公式サイト記載で無料。電話0942-47-4410

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):草野歴史資料館(旧草野銀行本店)門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001149
文化遺産オンライン:草野歴史資料館(旧草野銀行本店)門
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144667
国指定文化財等データベース(文化庁):草野歴史資料館(旧草野銀行本店)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001083
草野歴史資料館 公式ホームページ
https://welcome-kurume.com/kusano/
久留米市:久留米市伝統的町並み保存制度
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1080kankou/2015bunkazai/3045matinamihozon/2024-0410-1152-289.html

最終更新日: 2026.08.25