中之作の旧家に残る昭和20年の茶室と書斎

松本家住宅は、福島県いわき市中之作にある旧家の屋敷で、昭和20年(1945年)に建てられた茶室と離れの2棟が、平成10年(1998年)12月11日に登録有形文化財となった。

文化庁の解説によれば、松本家は天保6年(1835年)から酒造業を営んできた家である。登録されたのは主屋ではなく、屋敷地の北東に建つ茶室と、その西側に接続する離れの2棟で、どちらも木造平屋建、瓦葺の小ぶりな建物である。

いわき市の登録有形文化財(建造物)は8件あり、松本家住宅の2棟は市内で最も早く登録されたものにあたる(令和元年(2019年)9月10日現在の市の一覧による)。

和の茶室棟と洋室の書斎棟

松本家住宅の2棟は、隣り合っていながら性格がまったく違う。茶室は切妻造で、書院構えを備えた8畳大の座敷に、1間半の床、炉を切った6畳大の茶室、3畳大の水屋が続く。南の妻には「一太郎庵」と書いた額が掲げられている。

離れは寄棟造で、中心は10畳大の洋室である。周りを縁と廊下が取り巻き、書棚と出窓は建てた当初から備わっていた。文化庁の解説はこれを書斎として造られた建物としている。

茶の湯のための和室と、本を並べる洋室。酒造家の暮らしのうち、客をもてなす場と主がこもる場が、1棟ずつ形になって並んでいると見ることができる。

手がけた大工と登録の評価

離れについて、文化庁の解説は東京・八王子の大工棟梁、大塚桃太郎が手がけたと記している。いわきから遠く離れた土地の棟梁の名が、建物とともに伝わっている。

2棟の登録番号は07-0026(茶室)と07-0027(離れ)で、登録基準はいずれも「造形の規範となっているもの」である。文化庁は茶室を、簡素なたたずまいながら上質な造りで、茶室を持つ離れの好例と評価し、離れについては旧家の生活文化の一端を知るうえで貴重な遺構としている。

見学について

松本家住宅は個人が所有する住まいで、一般向けの公開の案内は見当たらない(2026年10月時点)。茶室と離れはいずれも屋敷地の内側にあり、敷地や建物の中には入れない前提で考えたい。

2棟が公道からどこまで見えるかは、公表資料では確認できなかった。近くを訪れる場合も、住んでいる方の暮らしの場であることを踏まえ、門前で立ち止まり続けたり敷地を覗き込んだりするのは控えたい。撮影も公道からに限りたい。

アクセス

松本家住宅の所在地は、JR常磐線の泉駅から東へ直線でおよそ8キロメートル、中之作の集落のなかにある(駅と所在地の座標からの概算)。駅から歩ける距離ではないので、車かタクシーを使うことになる。来訪者向けの駐車場の案内は見当たらない。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):松本家住宅茶室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000941
国指定文化財等データベース(文化庁):松本家住宅離れ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000942
文化遺産オンライン:松本家住宅茶室
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/138211
文化遺産オンライン:松本家住宅離れ
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/166252
いわき市:いわき市の文化財
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000004791/index.html
いわき市:いわき市の国登録有形文化財(令和元年9月10日現在)
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000004791/files/tourokubunkazai.pdf

最終更新日: 2026.10.07

基本情報

名称松本家住宅
所在地福島県いわき市中之作字榎戸31-1
所有者個人
指定登録有形文化財 2件
座標36.96137, 140.94663