貞照寺とは

貞照寺(ていしょうじ)は、岐阜県各務原市鵜沼宝積寺町にある真言宗智山派の寺院で、女優の川上貞奴が昭和8年(1933年)に創建し、本堂や門など境内の7棟が平成18年(2006年)に国の登録有形文化財に登録された。

山号は成田山で、正式には成田山貞照寺と称する。千葉県成田市の大本山成田山新勝寺の末寺にあたり、本尊は不動明王。東海地方の不動尊をめぐる東海三十六不動尊霊場では、第三十番の札所になっている。

「貞」の字を「じょう」と読み違えやすいが、文化庁のデータベースのふりがなも寺の案内も「ていしょうじ」で一致している。寺号の頭の一字は、開創者である貞奴の名の頭の一字と同じである。

貞照寺の由緒と川上貞奴

貞照寺を開いた川上貞奴は、明治4年(1871年)7月18日に東京の日本橋で生まれた。旧名は小山貞。寺の案内によると、幼いころから日本舞踊に親しみ、「オッペケペー節」で評判をとった書生芝居の川上音二郎と結婚する。夫の一座とアメリカ、ヨーロッパを巡業し、ジャポニスムに沸く欧米で「マダム貞奴」と呼ばれる人気を得た。

女性の役を男性が演じるのが慣例だった時代に、貞奴は女優として舞台に立ち、帰国後は帝国女優養成所を設けて森律子らを育てた。音二郎が早くに亡くなると、7年の追善興行ののちに引退し、旧知の福澤桃介が手がけた木曽川の電源開発を支える側に回った。

貞奴は生涯、成田山新勝寺の本尊不動明王を篤く信仰していた。その信仰の集大成として私財を投じて建てたのが貞照寺で、昭和8年(1933年)10月28日に落慶法要が営まれた。寺は、木曽川河畔の景勝地と不動明王とのあいだに深い縁を感じたことを、この地を選んだ理由に挙げている。

伽藍の設計と施工には、尾張藩の工匠の家柄に連なる11代伊藤平左衛門が携わった。本堂は新勝寺の旧本堂(現在の釈迦堂)にならって建てられている。貞奴は参詣のための別邸「萬松園」を門前に構え、境内の奥には貞奴の霊廟が置かれた。

貞奴は「川上」の姓と、流れるように過ぎた自らの生涯を重ねて、自身を「流水に紅葉」にたとえていた。寺によれば、この意匠が境内の各所に取り入れられている。

貞照寺の登録有形文化財

貞照寺の建物は、平成18年(2006年)8月3日に8棟そろって国の登録有形文化財となった。登録番号は21-0094から21-0101までの連番で、官報での告示は同じ年の8月24日付である。現存する7棟の構造と規模は、文化庁の記録で次のとおり。

  • 本堂:木造平屋建、銅板葺、建築面積251平方メートル
  • 門:木造、銅板葺、面積29平方メートル
  • 浄水舎:木造、瓦葺、面積5.0平方メートル
  • 宝物庫:鉄筋コンクリート造平屋建、銅板葺、建築面積125平方メートル。現在の貞奴縁起館
  • 稲荷堂:木造平屋建、銅板葺、建築面積11平方メートル
  • 庫裏:木造平屋建、瓦葺、建築面積218平方メートル
  • 書院:木造平屋建、瓦葺、建築面積50平方メートル

残る1棟の鐘楼は、令和6年(2024年)2月27日の火災で焼失した。文化庁が公表している「焼失等による登録抹消」の一覧には、貞照寺鐘楼が令和6年(2024年)12月3日付で抹消されたと記されている。いま貞照寺にある登録有形文化財は、上の7棟である。

登録の基準は棟ごとに違う。本堂・門・浄水舎は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、宝物庫・稲荷堂・庫裏・書院は「造形の規範となっているもの」に当たるとされた。7棟はすべて昭和8年(1933年)の建築で、開創時の建物がまとまって残っていることが、貞照寺の境内を歩く面白さにつながっている。

各棟の構造や見どころは、それぞれのページで詳しく扱っている。

貞照寺の境内配置と歩く順序

貞照寺の境内は東に正面を向ける。文化庁の解説は門を境内東の正面にふさわしい構えと評し、各務原市は寺のすぐ東側をJR高山線が通ると紹介している。

文化庁データベースの地図に示された位置から測ると、各棟の配置はおおよそ次のようになる。

  • 浄水舎:門の南東、約20メートル
  • 本堂:門の西、約70メートル。門から正面に見通せる
  • 宝物庫(貞奴縁起館):本堂の南、約40メートル。北に正面を向ける
  • 稲荷堂:宝物庫の西隣。ほぼ東向き
  • 庫裏:本堂の北東、約50メートル。池の東側
  • 書院:庫裏の北側に接続する

歩く順は、門の脇の浄水舎を見てから正面の本堂へ進み、南に下って貞奴縁起館と稲荷堂を訪ね、最後に北東へ回って庫裏と書院の外観を眺める流れが無理がない。貞奴の霊廟は境内の奥にある。

貞照寺の拝観案内

貞照寺の開堂時間は午前9時から午後3時までで、休みはない。寺の案内で拝観料が必要とされているのは、宝物庫を使った貞奴縁起館で、貞奴が舞台で着た衣装や演劇の台本、家具調度品などが並ぶ。料金は公式サイトに載っていないため、電話(058-384-0202)で確かめておくと確実だ。境内には無料の駐車場がある。

写真撮影の可否について、寺や観光協会の案内に特別な記載は見当たらない。堂内や展示を撮りたいときは、先に寺の人に尋ねておきたい。

御祈祷と御供養の受付も午前9時から午後3時まで。諸芸上達の祈願で知られ、各務原市も、芸事の成就を願う演劇関係者が貞奴にあやかって参詣に訪れると紹介している。

貞照寺への交通

最寄り駅は、名鉄各務原線の新鵜沼駅とJR高山線の鵜沼駅である。名鉄名古屋駅から新鵜沼駅までは快特・特急で約30分、快急・急行で約35分。JR岐阜駅から鵜沼駅までは約25分かかる。

駅から貞照寺まではタクシーで約10分。歩く場合の所要は、各務原市の案内が約30分、各務原市観光協会の案内が約1時間と開きがあるので、時間に余裕を持って出かけたい。

路線バスでは、各務原市ふれあいバスの鵜沼線に「貞照寺前」の停留所がある。新鵜沼駅とJR鵜沼駅を通る路線なので、出かける前に時刻表を確認しておくとよい。

車で向かう場合の所在地は、岐阜県各務原市鵜沼宝積寺町5-189。駐車場は無料で使える。

貞照寺の年中行事

貞照寺の1年は、1月の元朝大護摩供と初詣、初不動で始まる。2月には節分まつりと厄除祈願会、出世稲荷祭があり、7月には川上貞奴女史生誕記念大護摩供、10月には開創記念大護摩供と七五三まいりが営まれ、12月には貞奴忌を迎える。写経会は毎月第4日曜日の午前に開かれている。

開創者の誕生と寺の開創を記念する護摩を、それぞれ年に一度ずつ修めているところに、この寺と貞奴との結びつきの強さが見える。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺本堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005607
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005611
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺浄水舎」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005614
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺宝物庫」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005612
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺稲荷堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005613
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺庫裏」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005608
文化庁 国指定文化財等データベース「貞照寺書院」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005609
文化遺産オンライン「貞照寺本堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/152215
文化庁「焼失等による登録抹消」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/shoshitsu.html
文化庁「登録有形文化財(建造物)の抹消件数」(PDF)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/massho/pdf/94255401_02.pdf
各務原市「登録有形文化財」
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/kankobunka/bunkazai/1005182.html
成田山貞照寺 公式サイト
https://naritasan-teishoji.com/
成田山貞照寺「川上貞奴女史の歩み」
https://naritasan-teishoji.com/ayumi.html
各務原市「文化財・萬松園と貞照寺の親子見学会」
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/event/1005356/1010019/1005390/1015734/1013693.html
各務原市「ウオーキングコース」
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/shisei/shisaku/1008189/1008193.html
各務原市「成田山貞照寺の風景」
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/shisei/koho/cameraman/1006770/1024401/1024531.html
各務原市「ふれあいバス」
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/life/kotsu/1001741/index.html
岐阜バス「各務原ふれあいバス 停留所一覧」(PDF)
https://www.gifubus.co.jp/images/qr/pdf/kakamigahara.pdf
各務原市観光協会 かかみがはらさんぽ「貞照寺」
https://kakamigahara-kankou.jp/tourism/260
岐阜県観光連盟 岐阜の旅ガイド「貞照寺」
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_5713.html

最終更新日: 2026.09.17

基本情報

名称貞照寺
所在地岐阜県各務原市鵜沼宝積寺町5-189
所有者成田山貞照寺
指定登録有形文化財 7件
座標35.40737, 136.95952